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悪役令嬢に転生してしまった。だから、私を裏切る婚約者の事を絶対に信じません!  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)


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お茶会2

読み方

「」普通の会話

()心の声、システムメッセージ

『』キーワード

<>呪文


 マリアは、湯浴みと着替えが終わるとジェーンの案内で中庭に通された。そこには春の花々が咲き誇り、完全に手入れされた庭木が道を作り、ちょっとした迷宮のような作りになっていた。

 その庭の真ん中に東屋があり、円卓と10個の椅子が置いてあった。円卓の上には色とりどりのお菓子と紅茶が入っているテーポット、それにテーカップが置かれていた。


 円卓の席に9人が座っていた。時計回りにミリア、アルト、アンネ、ジーク、クルル、エース、フレイア、ロイ、ヒイロの順で座っていた。空いている席はミリアの左隣だけだった。ミリアは授業の時と違い、ドレスを着ていた。


「マリアさん。こっちにいらして」


 ミリアは立ち上がってマリアを手招きした。マリアはミリアの隣まで歩いた。


「やっぱり、マリアさんには白がお似合いですわね」

「こんな、高価なドレスをお貸しくださり、本当にありがとうございます」

 マリアは恐縮して礼を言った。


「良いのよ。私の我がままで呼んだのだから、気にしないで」

 ミリアはマリアと仲良くなるために、出来る限りの事をするつもりでいた。

「さあ、座って」

「はい」

 マリアはミリアに言われるがままミリアの隣に座った。

(私、座っても良かったの?なんか、みんな貴族っぽいし、場違いなんじゃ……)

 マリアは心臓が飛び出るかと思うほど自分の鼓動が速くなっている事を自覚していた。


「ミリアお義姉さま、そちらの方は?」

 水色の流れる川のような髪、水色の目、透き通る肌、端正な顔立ちの美少女が、川のせせらぎの様な優しい声でミリアに問いかけた。


「私の友達よ。みんな、仲良くしてね」


「初めまして、マリアさん。わたくしはアンネ・ゲシュタルト。この国の第一王女よ。よろしくね」

 アンネは、作られた笑顔でマリアに挨拶した。

(なに、あの笑顔、感情が読み取れない)

 マリアはアンネに得体のしれない恐怖を感じた。

「どうぞ、よろしくお願いいたします。アンネ様」


「私は、フレイア・ビスマルク。ミリアの親友よ。よろしくね。マリア」

 フレイアは満面の笑みでマリアに挨拶した。

「よろしくお願いします。フレイア様」

 マリアは、少し硬くなりながらも挨拶を返した。

「フレイアで良いよ。これから友達になるんだし」

「そんな、恐れ多いです」

「じゃあ、命令ね。フレイアと呼びなさい。私はこの国の宰相の娘なんだから、逆らったら許さないわよ?」

 フレイアは、ミリアに提案した方法をためらいなく実践した。

「え?あ?」

(ミリア様の親友なだけあって、同じように強引なのか……)

「はい、分かりました。フレイア」

「分かればよろしい」

 フレイアは上機嫌に笑った。

(フレイア様は高圧的に命令しているのに嫌みが無い。不思議な方ね)

 マリアは、フレイアに好印象を抱いた。

(先を越された。名前の呼び捨てってある程度仲良くなってからするもんじゃないの?フレイアって男に対しては奥手なくせに、女に対しては人たらしなのよね……。まあ、だからこそ私の親友なんだけどね)

 ミリアは、フレイアの行動力に対して心の中で文句を言った。そして、フレイアに便乗することにした。


「あ、フレイア、ずるい。マリア。私の事も呼び捨てにしてくださいね」

「えぇ?ミリア様もですか……」

「ミ・リ・ア」

「分かりました。ミリア」


「ふふ、マリアさん大人気ですわね」

 アンネは三人のやり取りを見て笑っていた。


「じゃあ、次はクルルが挨拶するね。クルル・ゼファールです。お姉ちゃんの妹だよ。よろしくね」

 クルルは愛くるしく挨拶した。

「よろしくお願いします。クルル様」

 マリアはクルルに対して安心感を覚えた。

「クルルも呼び捨てでいいよ~。お姉ちゃんのお友達でしょう?」

「分かりました。クルル」

「ありがとう。マリアお姉ちゃん」

(ふふ、まるで妹みたい)

 マリアはクルルが自分の妹と似ているようだと感じて嬉しくなった。


「では、次は私の番だが、すでに授業で手合わせしているから挨拶は不要だね」

「はい、本日はよろしくお願いいたします。アルト殿下」

 マリアは恐縮しつつもアルトには緊張せずに挨拶が出来た。


「次は僕だね。ヒイロ・ゼファール。ゼファール家の次期当主だ。よろしく」

「マリアです。よろしくお願いいたします。次期当主という事はミリアの弟さんですか?」

「そういうことになるけど、血はつながってないよ。僕は養子なんだ」

「そうなんですね」

(複雑な家庭の事情があったら大変だし、これ以上聞くのはよそう)

 マリアは身の危険を感じて、話題を打ち切った。


「私はロイ・クルセイド。学園で一度会っているけど、ちゃんと挨拶するのはこれが初めてだね。よろしく」

「よろしくお願いいたします。ロイ様。先日はありがとうございました」

「いや、良いんだよ。ミリア様の頼みだったしね」

 そう言って、ロイはマリアに微笑みかけた。


「え?何?なんの話?」

(なんでロイと仲良さげなの?)


 フレイアは焦っていた。自分の知らないところでロイがマリアと何かあったのかと勘繰ったのだ。

「大した話ではないよ。入学式の日にワンピースの汚れを魔法で綺麗にしただけだよ」

「そうなんだ」

(ロイは優しい。マリア、ロイに惚れてたりしないよね?)

 フレイアはロイを見ているマリアを見た。

(マリアがロイに恋をしているようには見えないけど……)

 フレイアの心は不安で満たされていたが、声には出さなかった。


「俺はジーク・フリード!騎士団長の息子だ!俺は必ず親父の跡を継いで騎士団長になる!」

 短く切りそろえた赤い髪、赤い目、赤い礼服、全てが赤い少年が、勢いよく立ち上がり大声で挨拶した。

「ジーク。そんなに大声を出さなくても聞こえますわ。急に立ち上がったりするからマリアさんも驚いていらっしゃるわ」

 アンネが呆れたようにジークを見て注意した。

「ああ、すまん。挨拶は元気よくと父に教えられていたから、つい」

 ジークはアンネにたしなめられ素直に謝った。

「ふふ、よろしくお願いいたします。ジーク様」

(なるほど、ジェーンさんが言っていた可愛いってこういう意味か、バカっぽくて可愛い)

 マリアはジークの馬鹿っぽくて、でも素直な態度に弟を見ているような気分になり、微笑んで挨拶を返した。そんなマリアの様子を見てアンネは鋭い目をマリアに向けていた。

(わたくしのジークに色目を使った?もし、そうなら……)

(あれ?アンネ様の視線が痛い。私なにか間違った?ともかくジーク様とはあまりかかわらないようにしよう)


「最後は私ですね。エース・ミラージュと申します。魔法師団長の息子です。それと、クルルと婚約させて頂いております。以後、よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いいたします。エース様」

(エース様は真面目で知的な感じがする)


「アラン。居るのなら姿を現しなさい」

 ミリアの言葉に応じてアランが突然ミリアの後ろに姿を現した。

「何でしょうミリア様」

「マリア。紹介するわ。私の護衛をしているアラン・スミシーよ」

「よろしくお願いいたします。アラン様」

「よろしくお願いします。マリア様。それと、私に敬称は不要です。私はあなたと同じ平民です」

「なら、私にも敬称は不要ですよ。アラン」

「そうは参りません。マリア様はミリア様が招待したお客様です。私はゼファール家の使用人です。お客様を呼び捨てにするなどもってのほかです」

「そういうものなの?」

「そういうものですよ」

 そう言ってアランは笑顔を作った。

(嘘、アランが笑った?あの不愛想なアランが……)

 ミリアは衝撃を受けた。アランは今まで無表情でミリアに仕えていた。それがマリアを見て笑ったのだ。

「アラン。あなた笑えたの?」

「ミリア様。私はゼファール家の使用人です。必要とあらば愛想笑い位できますよ」

 ミリアと話す時にはすでにアランは真顔に戻っていた。

「そう、知らなかったわ」


(とりあえずアルティメットエンドに必要なメンバーの顔合わせはすんだわね。さて、本題に入りましょうか、ミリア)

(分かっているわ。姉さん)


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