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部活動勧誘

読み方

「」普通の会話

()心の声

『』キーワード

<>呪文


 ミリアがユリアを撃退し、食事も一通り満喫した後で、上級生たちに囲まれた。

「あの?何か?」

 ミリアが質問をすると質問攻めにあった。

「アルト様との結婚はいつなんですの?」「部活動は何をするつもりなんです?」「占いってやっぱり有料なのですか?」


 色んな質問に当たり障りの無い答えを返していると、銀髪赤目、肩口までのストレートヘア、吊り上がった目つきの美少女がミリアの目の前に立った。服は赤いドレスを着ていた。ただし、胸は絶壁だった。


「僕は新聞部部長アリエル・フォルセティだ。君を新聞部に勧誘に来た。ぜひ、記事を書いて欲しい」

 『私』の記憶には居ないキャラクターだったが、ゲーム内での週の初め光曜日に新聞が発行され、その記事にミリアが週間の運勢占いを掲載していることは知っていた。


 しかも、その新聞には各攻略対象と主人公であるマリアが起こしたイベントが記事となって掲載されるのだ。『私』はマリアの動向を探るためにも新聞部に入ることにした。


「いいよ。でも、私、占いしか出来ないから、記事はそちらで書いてね」

「ああ、それで構わない。これで、我が『フォーチュン新聞』の発行部数が増すことは確実となった!早速、来週の運勢占いを頼む!」

「いいけど、ここで?」

「いや、我が部室にてお願いする」

 そう言って、アリエルはミリアの手を取って、パーティー会場から連れ出した。


 そして、学院の三階にある新聞部の部室に案内された。そこには今まで掲載してきたであろう新聞が乱雑に積まれていた。インクと紙の独特の匂いがミリアの鼻孔をくすぐった。他の部員は居なかった。

「さあ、占ってくれ!」

 アリエルは、部室に入るなり、そう言ってきた。

「いいけど、メモの用意は?」

「必要ない。僕は聞いたことを忘れない」

「そう、なら、始めるわね」

 

 ミリアは懐にしまっていたタロットカードを取り出した。裏面は黒で、綺麗な幾何学模様が描かれていた。表面には、神秘的な美しい絵が描かれていた。そのカードにミリアは目を瞑って魔力を送る。ミリアの体から黒い魔力が立ち上る。


 するとカードはミリアの手から浮き上がり、球形を描いてシャッフルした後で、ミリアを中心に一列の円形になり、回転を始めた。


 ミリアが来週の運勢を占った。それは精霊占いという、この世界で昔から信じられている占いだった。自分が得意とする属性ごとに運命が用意されていて、一週間ごとに上手く行く事と上手く行かない事柄が決まるのだ。


 ミリアの目の前に2枚のカードが円の中から飛び出してきた。ミリアは機械的な抑揚のない声で、占いの結果を告げた。

「光属性、プラス。8番、力、体を使った訓練が上手く行く。

 光属性、マイナス。15番、悪魔、邪な企ては全て失敗する」


 ミリアが結果を言い終えると、2枚のカードは円の中に戻り別のカードが2枚ミリアの目の前に飛んでくる。

「火属性、プラス。20番、審判、一度失敗したことが成功する。正しい行いは報われる。

 火属性、マイナス。5番、法王、年長者の助言はあてにならない」


 ミリアは、水属性、土属性、風属性の結果を告げて、最後にミリア自身の属性である闇属性の結果を告げた。

「闇属性、プラス。1番、魔術師、魔法の訓練で成果を上げる。

 闇属性、マイナス。2番、女教皇、思い込みで失敗する」


ミリアが結果を告げ終えるとタロットカードは空中に舞い上がってミリアの右手に集まっていった。そして、ミリアの体から黒い魔力が消える。


「いや~。すごいね。鳥肌が立ったよ。さすがは、イリア・ゼファールの娘さんだ」

「いいえ、これでも、母には遠く及ばないわ」

「ふ~ん。君は母上を尊敬しているんだね」

「当然です」

 ミリアは、そっけなく答えた。

「新聞の記事は来週の光曜日には掲載したいから、2日後の水曜日には原稿を確定したい。推敲に来てくれるかな?」

「条件がある」

「なんだい?」

「他の記事も読ませてもらっても?」

「君は我が新聞の読者だったのかい?」

「いいえ、ただ、暇つぶしに読みたいと思っただけ」

「そうかい。でも、良いよ。君の占いを掲載できるのならお安い御用さ」




 ゲーム内では占いの結果が、特定のステータスの成長率がアップしたり、攻略対象やライバルたちとの親密度をあげたり、迷宮攻略時の取得アイテムの結果を左右する事を『私』は知っていた。


ミリアの占いの結果が、アルティメットエンドに向かうための鍵だった。ゲームの場合は、気に入らない結果になったらリセットすれば良かった。だが、今はリセットボタンが無い。


 出てきた結果に沿って、行動を決めるしかないのだ。その上で、最高の結果を出すしかなかった。一番恐れるのは、10番のカード、運命だった。プラスの時の作用は大歓迎だった。全ての行動が上手く行き、経験値も親密度もレアアイテムも思いのままだった。


 しかし、マイナスの効果は、訓練が全て失敗しケガをする。攻略対象やライバルとの親密度は何をしようとも下がり、レアアイテムは全く出なくなる。


 その運命のカードがマイナスに出たら、即リセットするべき最悪のカードだった。今回は出なかった。もし、出たとしてもリセットは出来ない。闇属性に出たのなら引きこもれば問題ない。


 だが、光属性に出た場合、マリアが闇落ちエンドに向かってしまうのだ。その場合、『私』に出来ることは何もなかった。


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