表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとりぼっちの修学旅行  作者: よしあき煎餅
4/41

04。手が滑りました


「おわっと…」


 予想していなかった揺れに体が傾ぐ(かしぐ)。足に力を込めて踏ん張り、柱に手を伸ばす。


スカッ


 しかし、伸ばした手は空を切っただけ。


「あっ…」


 期待していた手応えを獲られずに、海人はデッキ縁の手摺に脇腹あたりをぶつけて止まった。


「イテッ…あっぶな…まったくもう」


 手摺の向こう側をチラッと覗いて安堵のため息をつく。と同時に突然の波に恨み節をぶつける。こんな状況で外にでている自分が悪いのだが……


「あっ…あれ…浮環がない」


 先程、信頼度が乱高下した寡黙なヒーロが手元から消えていた。辺りを見渡してもデッキに姿は見当たらない。


「えっ、嘘でしょ…まさかねっ」


 手摺に手をかけ海の方へ体を乗り出す。明かりのない暗闇のなかに漂っているだろうヒーロを捜索する。近くには見当たらない。

 不慮の事故とはいえ、まさか自分が捜索の対象になろうとは思ってもいないだろうが。


「あぁ…嫌だもう…なにしてんのよぉ」


 自分に対して悪態をつき、頭を抱えた。


「どこかにうまいこと引っ掛かってたりしないかなぁ」


 そんな逃避の思考を巡らせつつ捜索を続ける。


 だがしかし、海に浮かぶ彼を見つけても救助するすべが僕にはない。

 ながい棒状のもので引っ掛け手繰り寄せるものか。小舟を降ろして拾いに行くものか。

 いずれの方法を取るにしても先生や船員さんたちに頼るしかない。


 そんな考えが纏まってくると、途端にこの事態に対する言い訳が頭のなかに浮かんでくる。

 まったくもって嫌な性格だ。

ダメダメと頭を左右に振って考えをただしていく。


 一先ずは船内に戻り先生に相談しよう。


 扉の方へとむきなおろうとしたそのとき、またそいつはやって来た。


ザッパーン


 先程よりも大きな揺れ。転覆するのではと思わせるほど船体が傾いた用に感じた。


 両足の踏ん張りも効かずに背中から手摺へ叩きつけられる。

それでも勢いは止まらず僕の体は手摺の向こう側へ放り出された。


「うわあああああぁぁぁ」


 誰もいなくなった展望デッキに悲痛な叫びが響いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ