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ひとりぼっちの修学旅行  作者: よしあき煎餅
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01。漂流しています

連載と短編を間違えて投稿してしまいましたので再投稿します。


 そこは真っ暗闇、とは言わないが、月明かりしかない暗い海。


 聞こえてくるのは波の音だけ。


 こんなところに好き好んで漂いたいと思う変り者はそうそういないだろう。何かしら理由があれば絶対にとは言えないが。


 そして、彼は数少ないそんな状況にいるひとりだった。



 忌々しい白波が楽しそうに浮き沈みを繰り返して迫ってくる。


「うあっ」


ハァア、ハ、ハァア


「な、なんとか……溺れずに…すみそう、かな…ハァ」


 ひとときのの安心を得られ、ひとりごちる。


 やっとの思いで捕まえた浮環に通していた腕を離し、輪の内側に頭から体を通して身体を預けた。


「はぁ、死ぬかと思ったぁ」



 見渡す限り真っ暗闇で僕の他には誰もいない…たぶん……いやいるはずがない。

聞こえるのは降り続く雨の音と白波がぶつかり合う音だけ。


 月明かりのもと僕はひとりで海に浮かんでいる。


 海水浴を楽しんでいるわけでもなければ、夜のスキューバツアーなど洒落たイベントでもない。


 楽しいことなど、ない。

一切ない。ただただ恐怖と緊張だけのアトラクションのようだった。


「ぶぇっ…」


 また白波が不躾にに僕の顔めがけて体当たりをしてくる。


「なんだよ、これっ」


 不躾な波が顔に貼り付けていった物を引き剥がす。それは、引き裂かれたすきのようになった布地だった。

手元のそれを恨めしそうに睨み付けて投げ捨てると、波が押し流していった。


 辺りはまだ白波がそこかしこで遊び回っている。


「チッキショー。なんでこんなことになってんのよぉぉぉ!」


 暗闇に向けて力いっぱい叫んでみても虚しいだけだった。


 疲れきった頭と身体からは気力も抜け落ちて、暫くは浮環に寄り添っているだけになりそうだ。


 つまり、このまま漂流するしかないのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] なってんのよぉぉぉ!って男の言い方にしたら珍しいね。
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