七日目
「いざ」
「ゆかん!!」
活きのいい神さまの合いの手だった。
二人は自転車に一人ずつ乗って、目的地に向かっていた。目的地とはそう、市のスポーツセンターだった場所だった。
三日目にプールに行こうとして挫折したものの、諦めなかった神さまは昌行に問い合わせを願った。昌行は実は結構恐る恐るに問い合わせをして、結果、なんとか願いは聞き届けられたのだった。
ただしプールを使うのはこれで最後だと念を押されて、神さまはそれに了承した。そういうわけで、多大なる人の協力を経て、なんとか市のスポーツセンターは仮初に運営を再始動した。
たった二人のためだけに。
「わーい、プールじゃプールじゃ~!」
万歳をしてよろこぶ姿はしかし、飛び跳ねるわけでもなく、走り回るわけでもなかった。さすがにそれは危険だと体が教えてくれるのだろう。
「昌行も早く浸かろうぞ。冷たくて気持ちいいぞ~」
自分たち以外誰も使っていないプールの光景に、少し圧倒されていた。その隙に神さまは勢いよくプールに入って、こっちへおいでと手招いている。
「危ないですから飛び込むような入り方はさけてください!」
いきなり自分たち以外の声が降ってきておどろいた。声の方向を見ると水着姿のお兄さんが背の高い椅子に座ってこちらを監視していた。
「そうじゃったかの? 飛び込んだつもりはなかったんじゃがすまんかったの~。のう、お兄さんも一緒に遊ばんか? 楽しいぞ~」
ちょっとずつ足をつけていってるそばから神さまがお兄さんをナンパしていてビビる。えっ俺と遊ぶんじゃなかったの?
「残念ですけど、規則ですから」
「そうか~、お兄さんも遊べる時間があるといいのう」
端のほうに寄った神さまはいったん潜って、別のレーンに移動した。それから頭を進行方向に向けながらぷかぷかと浮いて、ゆるくバタ足をしたりしなかったりした。
あ、これはしばらく別々に泳ぐ感じだな。
それを察知した昌行は、スタンダードにクロールで泳ぐことにした。五十メートルくらいが限界だが、久々に泳ぐのは結構楽しかった。
端までたどり着いて顔を上げたら、水しぶきが邪魔だったのか、神さまがもう少し隣のレーンに移っていた。ちょっと傷ついた。
途中、お昼ご飯に持ってきたお弁当を別の場所で食べたり、プール上がりに自販機が使いたくなって使えないことにショックを受けたりしたが、それは楽しい一日だった。