四日目
「神さまってさ、なんでのじゃ口調なの?」
昼飯が終わって、食卓でなんとなくだらだらしてる時間だった。
今までそういうものなのかな、とスルーしてきたけど、実はちょっと気になっていることを口にしてみる。のじゃ口調は、どっかの地方の方言が元だと聞いたことがあるが、別に藤咲町にそんな方言があるわけではないのだ。
神さまはというと、スマホゲームで遊んでる最中だった。ペンギンがたくさん出てくるゲームがあるらしい。
昌行もなんとなくスマホをいじっていた。初日にSNSの類を封印したとはいえ、ゲームのほうまでは封印できなかったのだ。
「だってこの口調は『威厳がある』んじゃろう? うち、神さまじゃからな」
スマホの画面から目を離さずに語るその姿には、威厳のかけらもない。椅子に対して横向きに座り込んでぽちぽちとスマホを操作する姿は普通の少女そのものである。
「はあ……」
威厳云々に対して突っ込みを入れることもできず、曖昧に相槌を打つ。
スマホゲームのイベントのストーリーを進めていて、ちょうどジュエルがたまってきた。ふと思いついて、神さまに話しかける。
「ねえ神さま、指貸して」
「指? なんじゃ?」
疑問気な神さまの前にスマホの画面を見せる。画面には一回ガチャる、と十回ガチャる、のボタンが示されていた。
「どっちを押せばいいんじゃ?」
「十回のほう」
察しが早かった神さまは行動も早かった。躊躇なく画面に指を押し付けて、結果が出るのを待つ。
次々にキャラクターが出てくる演出が巡り、あるキャラクターが降りてくる演出のときだけ昌行が「おっ」と反応した。
「当たりかの?」
「いや、欲しいキャラじゃなかったけど、新しいキャラがきたからいいかなって感じ」
あまり盛り上がりもないままガチャは終わって、神さまは「昌行は意外と淡泊じゃの」とつぶやいた。
「いや、欲しいキャラが来たらもうちょっと反応するよ。ていうか神さまなのに神引きしないんだな」
「うち、そういう感じの神さまじゃないみたいなんじゃ」
じゃあどういう感じの神さまなのか。
そう思ったけど、神さまがあまり神さまらしくないことは今に始まった話じゃないので、しいて聞くことはやめることにした。