16話 ラーメン
さらに数日後。
「むう……」
放課後。
雫が難しい顔をして、なにか考え事をしていた。
この前のように、徹夜をしてぼーっとしている、というわけではなさそうだ。
なにしろ、あの後、徹夜していることがおばさんにバレて、こっぴどく絞られたみたいだからな。
この短期間で同じ過ちは侵さないだろう。
となれば、なんだろう?
執筆の上で、新しい悩みでも出てきたのだろうか?
「結城」
陸に声をかけられた。
「今日はヒマかな?」
「どうだろうな……厄介事が持ち込まれなければヒマだと思うぞ」
「あはは。その厄介事っていうのは、有栖川さん絡み?」
「そうなるな」
「厄介事って言う割に、そこまで嫌そうな顔はしていないね」
「諦めの境地に達しているんだよ」
とはいえ、雫と一緒にいる時間が楽しくないというわけじゃない。
色々なトラブルに巻き込まれるものの……
なんだかんだで楽しく過ごしている。
長い付き合いだから、色々と慣れたのかもしれないな。
「どうしたんだ?」
「ラーメンに興味はない?」
「新規開拓か。新しい店が?」
「うん」
陸はものすごくうれしそうな笑顔を見せた。
細い体をしているものの、陸の趣味は食べることだったりする。
毎日、色々なものを食べ歩いているらしい。
新しい店を探して、自分の足で開拓していくことが楽しみなのだとか。
「ラーメンか……いいぜ、付き合うよ」
「やった。ありがとう、結城」
「ちなみに、何ラーメン?」
「味噌がメインらしいよ」
「いいね」
味噌ラーメンは好きだ。
濃厚で奥深い味はたまらないし、味噌の風味豊かなところも最高だ。
「って……ちょっと待ってもらっていいか?」
あの状態の雫を放置するのは、少しためらわれた。
あのままだと、夜までこうして考え込んでいそうだ。
「うん、大丈夫。その店、5時からだから、どのみち寄り道をしないといけないんだよね」
「サンキュー」
礼を言い、雫のところへ。
ぽんぽんと肩を叩く。
「おい、雫。もう放課後だぞ」
「……」
「考え込むのは家にしろ。帰る支度をするんだ」
「……」
何度呼びかけても反応がない。
「あいたぁっ!?」
イラッと来て、スパーンと頭をはたく。
ようやくこちらに気がついて、涙目になった雫が頭を押さえつつ言う。
「なにするの? なにするの? DV?」
「何度声をかけても気づかないから、こうする以外になかったんだよ」
「うぅ……結城が意地悪だよぉ」
「それよりも、もう放課後だ。あれこれ考え事をするのは家に帰ってからにしろ」
「むう……まあよい。では、我が秘奥の魔城へ帰還するとするか! さあ、着いてこい、我が半身、アナザーブレイドナイトよ!」
ナイトがついていれば、もはやなんでもいいのかもしれない。
「言っておくが、俺は別行動だぞ」
「なんと!? え、なんで? なんでなんで?」
「陸と一緒にラーメン食べに行くんだよ」
「……ラーメン……」
じゅるり、とよだれを垂らしそうな顔に。
今の雫の顔を見たら、コイツに恋している男子は泣くかもしれない。
「我も行くぞ!」
「あー……」
「僕はかまわないよ」
陸の方を見ると、笑顔で了承された。
騒がしくなることは目に見えているのだが……
懐の深いヤツだ。
「じゃあ、行くか」
鞄を手に、学校を後にする。
それから適当に時間を潰した後、陸のオススメのラーメン店へ。
店内はそれほど広くなくて、カウンター席だけだ。
それでも開店直後ということもあり、客は少人数。
俺達は並んで座ることができた。
それぞれ食券を渡す。
俺は、味噌ラーメン、煮玉子トッピング。
陸は、味噌ラーメン。
雫は、特製味噌ラーメン大盛り、にんにくトッピング。
女子の雫が一番ガツガツした注文なのは、いかがなものか。
なんてことを思わないでもないが、今更の話だな。
コイツはそういうヤツだ。
「はい。注文、おまちどうさま。煮玉子トッピング、並、特製大盛りにんにくですね」
「「「おぉー」」」
ラーメンができあがり、俺達は揃って声をあげた。
味噌の匂いがすごくいい。
ついつい腹が鳴ってしまいそうだ。
キュルルル。
「「え?」」
「あう……」
隣を見ると、恥ずかしそうに腹を押さえる雫の姿が。
「……すごくおいしそうだから、つい」
「「ははっ」」
俺と陸は揃って笑う。
それからさっそく割り箸を手に取り、ラーメンを思う存分に堪能するのだった。
味は言うことなし。
雫は目をキラキラと輝かせて、スープまで全部飲み干していた。
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