13話 カフェでデート
ハプニングはあったものの、デートは継続することに。
バッティングセンターを後にした俺達は、予定通りカフェに移動した。
チェーン店ではなくて、個人が経営しているところだ。
その分、内装にこだわっていたりメニューに力を入れているらしい。
最近は、この店でのんびりだべることが流行っているとかなんとか。
「うーん、うーん」
雫はメニューを見て悩んでいた。
ちなみに、もう五分くらいこの調子だ。
「別に急かすつもりはないが……そんなに悩むものなのか?」
「無論だ。季節の果物たっぷりパンケーキ……濃厚とろとろチョコレートパフェ……ぐぬぬ、なんて悩ましい。この我をここまで惑わせるとは、やるな」
「いっそのこと、両方頼んだらどうだ?」
「我を肥えさせるつもりか!?」
女子にとっては切実な問題らしく、マジギレされそうになった。
このまま放っておいたら、三十分は悩んでいそうだ。
そんなことになれば、店を追い出されてしまうかもしれない。
「あー……俺と雫で頼んで、それを分け合うか?」
「おおっ、ナイスアイディアであるぞ! 褒めてつかわす」
「はいはい。あー、すいません。注文いいですか?」
店員を呼んで、パンケーキとパフェ。
それとアイスティーを二つ、注文した。
「ふんふふ~ん、ふんふふ~ん」
鼻歌を歌い、雫はご機嫌だ。
パンケーキとパフェ、両方を食べられることがよほどうれしいらしい。
女子はスイーツが関わると人が変わると聞くし……
まあ、そんなものなのだろうと納得しておいた。
「おまたせいたしました」
「おぉー!」
十分ほどしたところで、パンケーキとパフェが運ばれてきた。
雫は子供のように目をキラキラと輝かせていたが、その気持ちはわかる。
ふんわりとした感じの厚みのあるパンケーキが二枚。
たっぷりとクリームが載せられていて、さらにその上から、いちご、キウイフルーツ、りんご、オレンジ、メロン……などなど。
たくさんのフルーツがこれでもかというくらいに飾られていた。
パフェは、ケーキとチョコソースと生クリームが幾重の層を形成していた。
その上にチョコアイスやスティックチョコ、トリュフなどなど。
色々なチョコレート製品がトッピングされていて、最後にチョコレートソースがかけられている。
濃厚の名にふさわしい商品だろう。
「けっこううまそうだな。それじゃあ、さっそく……」
「待て!」
「なんだよ? なんで止める?」
「こういう映えるものは、まずは撮らないといけない。それが基本だ!」
雫は真剣な顔をして携帯を取り出して、パシャパシャと撮影を開始した。
一分ほど撮影したところで満足したらしく、フォークとナイフを手にして、パンケーキと向き合う。
「では……いっただきまーす!」
わくわくとした様子で言いつつ、パンケーキを一口。
「んんんぅ~♪」
とろけるような極上のスマイルを浮かべた。
「幸せだよぉ……」
「うまいか?」
「うん、すごくおいしい……」
パンケーキのおいしさにやられている様子で、中二病モードは消えて、ちょっとぼけーっとすらしていた。
ここまで雫を虜にしてしまうなんて。
俺も少し楽しみになってきた。
「へぇ」
こちらもパフェを一口。
チョコレートの芳醇な香りと、ビターな甘みが口の中に広がる。
こんな飾りで濃厚と書かれている商品だから、とんでもなく甘いと身構えていたが、そんなことはない。
ほどよい甘さでしつこくない。
男の俺でも、パクパクと食べられそうだ。
「パフェ、おいしい?」
「ああ、うまいぞ。けっこういけるな」
「じー……」
ものすごく物欲しそうな目をされた。
「わかっている。分け合う、っていう約束だからな。ほら」
スプーンでパフェをすくい、雫の口元に運んでやる。
「ふぇ……!?」
「どうしたんだ、食べないのか?」
「え? いや、あの……結城が食べさせてくれるの?」
「この方が早いだろ」
「でも、あの、その……」
雫はもじもじとしていて、すごく恥ずかしそうだ。
はて?
あーん、くらいは慣れたものかと思っていたが、まだそうでもないのだろうか?
それとも、人目があるから、それを気にしているのだろうか?
「恥ずかしいのか?」
「そ、それは……うん」
「これくらい慣れないとダメだろ。取材なんだし、今後もこういうことをする機会は増えるかもしれないんだから」
「そ、そうかもだけどぉ……でも、その……」
赤い顔でぽつりと言う。
「か……間接キス……だもん」
あ。
「それは、その……やっぱり、恥ずかしいよぉ、ひゃううう」
そういえば、そういうことになるのか。
まったく意識していなかったから、気にせずやってしまった。
雫はこちらのスプーンをちらりと見た。
それから、自分の唇を指先でそっと撫でる。
そういう仕草は止めてほしい。
俺も意識してしまうだろ。
「……」
「……」
なんとなく気まずい空気に。
「……ひ、一口だけなら」
「大丈夫なのか?」
「う、うん……しゅ、取材のためだから。ほ、他に意味なんてないし……ないんだからね!?」
「わかった。それじゃあ……ほら」
「あ、あーん……」
ぱくりと、雫は俺が差し出したスプーンを咥えた。
舐め取るようにして、こくりと喉を鳴らす。
「……どうだ?」
「おいしい、けど……」
「けど?」
「……やっぱり、ドキドキしすぎてよくわからないかも」
てへ、と笑う雫は、幼馴染という贔屓目を抜きにしてもかわいらしかった。
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