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9.初めてのレベルアップを経験する

今回も長め。

そしてずっと書きたかった装備とスキルの解説回。


さて、神殿前に到着したわけだが、いきなり乗り込んでも関係者に会えなければ意味がない。先ほど初ログインをした私が先行するより、ここは慣れている方に対応してもらった方が良いだろう。

という事で、噴水広場(正式名だった)からずっと私の左腕袖口部分を掴んで付いて来るはぐれさん、を微笑ましげに眺める衛兵さん達に仕事をしていただこうと思います!(丸投げ予定)

「要浄罪者を護送してきた場合の対処法を、私は知らない。申し訳ないがお願いしても?」

あれだ、ずっと付いて来ていた彼等には、はぐれさんはともかく私の声は聞こえていただろうし、もう今さら取り繕っても無駄と素の口調のままお願いする。

けして幼い兄弟を眺めてほっこりしている的眼差しに腹が立って、もう敬語とか使ってやるかと思ったわけではない。

「了解しました。自分が担当の神官様を呼んで参りますので、少々お待ち下さい!」

と敬礼した、護送の衛兵さん三人の中で一番若いと思われる人懐っこい笑顔の青年が、神殿入口脇にさりげなく設置された窓口的な所へ走って…行こうとして、年長の衛兵さんに走るなと怒られている。衛兵さん達は欧州系の顔立ちで、私にはちょっと容姿から歳を推測しにくいのだが、もしかして十代?

そのわんこ系青年衛兵さん(注:ヒューマン)が隊長さん(よく見ると装備の装飾が他二人と違い、かなり豪華な為推定)に拳骨を食らっている間に、さらっと手続き?を済ませ、担当の方と思われる神官さん――神官でいいのか?何か衛兵さんに劣らない体格なんだが――を伴ってこちらに戻って来る衛兵さんも、よく見れば二十歳過ぎと思われる。若いのにそつがないな。貴様さてはエリートか!

そして、説教(物理)を終え、「騒がせて申し訳ない」と私とはぐれさん(こちら)大柄神官(担当者)さんに頭を下げる隊長さん(わんこ系衛兵さんが「申し訳ありません隊長!」と悲鳴をあげていた為確定)。謝罪は受け取ったので、悶絶するわんこ系衛兵さんの頭を容赦なくぐいぐい押さえるのはやめてあげて下さい。さっきの拳骨(説教)、籠手の金属部分がきれいに頭頂部に入っていた。うん、内出血(たんこぶ)待ったなし。

なんとも個性的な彼等だが、要浄罪者(はぐれさん)を担当神官さんに引き渡し終えたので、巡回に戻ると言う。

「…あり、がとう…」

銀色の頭を下げるはぐれさん。でも多分その言葉、声ちっさ過ぎて聞こえていないと思う。

仕方なく通訳する私。やめろ、微笑ましそうにこっちを見るな!

特にわんこ系青年、涙目でほっこりするとか器用な真似をしてないで、貴様はおとなしく悶絶してろ。

「お世話になりました。この街の治安を守るあなた方に、〔創世神〕の祝福があらんことを」

なんだかんだお世話に――主にはぐれさんが――なった彼等に感謝を込め、〔管理者〕さんに教わった通り、聖印を切って祝福の言葉(定番のセリフ)を口にする私。発動する【使徒スキル】〈神聖魔法〉〔運命の祝福(ブレス)〕。

何でだ?!

〈神眼〉といい、〔運命の祝福(ブレス)〕といい、私のスキルはあれか、全部自動発動型なのか?


運命の祝福(ブレス)〕:運命を司る〔創世神〕の祝福を対象へ付与する。

幸運値微増、回避率小上昇。他神の祝福と重複可。持続時間はスキルレベルに依存。

対象が術者と敵対しない限り、神の奇跡(運命改変)により、一度だけ致命傷を回避出来る。


魔法の説明欄はこんな感じ。私の〈神聖魔法〉スキルレベルは1なので、効果時間短すぎてないも同然なのだが、かなりMPを消費するらしく少々だるい、と思っていたら、脳内に響くファンファーレと共に回復。

どうやらレベルが上がったらしいが、今の私に悠長にステータス画面を確認する心の余裕はない。


淡い虹色の光の羽がふわふわと天から舞い降りて弾け、柔らかな光の粒となって驚きに目を丸くしている衛兵さん達の体に吸い込まれる。

モフが喜んで光の羽と戯れている。


もふもふ、パタパタ。

きれい!


うん、魔法エフェクトきれいだな。

だけど私、ちょっと現実逃避してもいいかな?

いくら攻撃魔法でないとはいえ、こんな突然使って良いものでもないと思うんだ。

大柄神官(浄罪担当者)さん私の方見て驚愕!って顔してるし。

街行く人々も神殿に参拝しに来た人々も皆こっち見てるし。

神殿の奥から、何だか豪華な神官服を着た一団が現れたし。

これ多分怒られるやつだ。



こんにちは、何だかやたら丁重に神殿の奥に連れ込まれたシロです。

現在、華美ではないものの、センス良く上品な調度品でまとめられた、応接室とおぼしき部屋でお茶とお菓子をいただいています。

紅茶っぽい、花の香りがするお茶は渋みがほぼなく、仄かな甘さとすっきりした後味が美味しいが、そこはかとなく漂う高級感にちょっと気が引ける。

逆に、リンゴっぽい果物が乗った一口サイズのタルト的焼き菓子は、甘さ控えめで上品ではあるものの、手作り感漂う素朴な味。

うん、美味しい。

隣に座るはぐれさんも気に入った様で、もぐもぐと頬張っている。

巻き込んですまぬすまぬ。

ちなみに、モフは運ばれてきた直後のお茶とお菓子の上をくるくるとひとしきり飛び回ったあげく、満足したのか私の膝に戻って来た。


もふもふ。

きれい!


うん、きれい…か?

確かに機能的だが優美な形といい、柔らかく輝く様な光沢といい、私の目の前のティーセットやカトラリーには、派手さはないが独特の美しさがある。お値段絶対知りたくない。

あれだな、モフは違いのわかる系御使いだったんだな。

昔のコーヒーのCMを思い出しつつ、モフの真っ白な毛並みを撫でる私。相変わらず素晴らしいもふもふ具合。

そのモフを最後の焼き菓子片手にじっと見つめるはぐれさん。

餌付けしたいんですね?

しかし申し訳ないが、モフが焼き菓子(それ)を食べる事は出来ない。

真っ白な毛並みの中に一対の羽根と小さな手足、つぶらな目は確認出来たが、口は見当たらなかった。

モフをいただいた時に、餌は何をやったらいいか〔管理者〕さんに伺ったら、契約者(わたし)活気(オーラ)、だそうな。

余剰生命力とか余剰魔力とかそんなものを生き物は常に放出しているそうで、それを活気(オーラ)と言うらしい。

当然生命力や魔力が強い生き物からはそれだけ強い活気(オーラ)が放出されており、野生生物なんかはそれを感じ取って逃げたり、抑え込んで隠れたりしているらしいが、私には感じ取れんのでいまいちピンと来ない。なんでも、一部強者は身に纏った活気(オーラ)が可視化するほど濃厚だとか。漫画か!

そんなわけでモフは食べないので、焼き菓子(それ)はぐれさんが(じぶんで)食べるといいと伝えると、素直にもぐもぐするはぐれさん、だが…うん、めっちゃ残念そう。表情ほとんど動かんのに、何故こんなに感情表現豊かなのか。

そっと自分の皿に残った菓子をはぐれさんの皿に移す私。

銀の目が瞬きひとつ。私が頷くと、嬉しそうに手を伸ばすはぐれさん。良かった良かった。

しかし、私達は何故ここに居るのだろうか。

最初は私が街中で魔法を使った(やらかした)からかと思ったのだが、それなら一緒にいた大柄神官(浄罪担当者)さんに怒られて、要浄罪者(はぐれさん)と一緒に奉仕活動コース、な気がする。

私は再び紅茶(仮)を口に運びながら、肩から胸元へ流れ落ちる()()()()()をちらりと見やり、ステータス画面を開くと、装備した(かぶった)仮面の詳細を確認する。


アイテム名:幸運猫の仮面

種別:装備品/顔装備(装備中)

レア度:測定不能(神器)

効果:幸運値微増、防御力微増、スキル〈夜目〉使用可、認識阻害

〔創世神〕が作成し自らの使徒に与えた、額から鼻先までを覆う猫を模したシンプルな白い仮面。目の部分に穴は空いていないが、装備者の視界を妨げない。装備者の意思でのみ着脱可能。〈神眼〉さえも欺く強力な認識阻害により、装備者の髪色とステータスを擬装する。また、この仮面含め装備者の装備品は鑑定不能となる。

シロ専用装備。


ついでにステータスも確認。


ステータス(擬装後)

名前:シロ=アルカンシエル 種族:ヒューマン レベル:2

メイン職:神官〔創世神〕 サブ職:旅人

HP:12/12 MP:30/30 EP:36/36

腕力:1 体力:3 敏捷:5

器用:4 知力:15 精神:7 幸運:12

【従者】モフ(御使い)

【称号】《慈悲の化身》

【職業スキル】魔法系〈回復魔法:レベル1〉〈聖属性魔法:レベル1〉 特殊系[収納上手:レベル1]

【スキル】補助系[魔力消費軽減:レベル1]〈歌唱:レベル1〉〈楽器演奏:レベル1〉


うん、問題ないな。

種族もヒューマンと表示されているし、余計な称号やらスキルも項目ごと消えている。あとバグってた幸運値(注:バグではない)。どれもきちんと擬装出来ている。

ひとつだけ表示(のこ)した称号、《慈悲の化身》は、レアな称号だが神官系職業なら獲得していてもおかしくない、と〔管理者〕さんにお墨付きをいただいたうえで表示している。

効果はこちら。


《慈悲の化身》:他者をけして傷付けないと誓い、自らの信奉する神にその誓いがみとめられた者に与えられる称号。

効果:攻撃スキル取得不可、他者への攻撃を行った場合、そのダメージがゼロになる。基礎好感度上昇、ノンアクティブの魔物に襲われない、敵対者に対する隠密性能大上昇。意識外からの攻撃に対しスキル〈〔創世神〕の絶対防御(ゴッズイージス)〉自動展開。


要は攻撃力は一切なくなるが、その分襲われる可能性も激減するし、不意討ちからは確実に守ってもらえる、という戦闘はしたくないが危険地帯(おそと)には行きたい私の為にある様な称号だ。

何故この称号だけ公開しているのかというと、まあ、勧誘避けの為だな。

仲間にするなら、いくら回復職とはいえ、最後のとどめを刺せる、くらいの攻撃力は必須だろう。知り合いでもなければ、戦闘力ゼロはさすがに誘わない。

もっというなら、ベータテスト終了時の主流は神官戦士。

右手に鈍器(メイス)左手に(シールド)、神の名の元に!グシャア!みたいな。どこのカルトかと。

仲間と一緒に強敵に立ち向かう!的なプレイも楽しいんだろうな、とは思うが、今はいい。私は今、猛烈に自由気ままに旅がしたい。まずはこの広い神殿を見学だ!


…そんなわけなので、早く誰か来てくれませんか?

主人公は勘違いしていますが、【使徒スキル】による祝福は破格。

ステータス上昇は時間で切れても、運命改変は発動するまで効果永続。

住人にとってはリアルに残機増やせる魔法。

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