3.アバター作成を丸投げする
キャラクリ回。
主人公はなにもしないけど…。
〔管理者〕さんは私の全てお任せ発言に一瞬きょとんと瞳を瞬いてから、嬉しげに微笑んだ。
『承知いたしました、わたくしにお任せ下さい。あなた様にご満足いただけるよう、わたくしの全力をもってアバターの作成をさせていただきます』
「宜しくお願いします」
それにしても美人のきょとん顔可愛いな!これがギャップ萌えというやつか!などと考えながら、私は頭を下げる。
『では、アバター作成を始めます』
にっこり微笑む美人さん。うん、眼福。
『『アナザーワールド』では、およそヒトの夢想しうる事柄は何でも出来ると思っていただいて構いません。前人未到のダンジョンを踏破して英雄になるもよし、行商から始めて世界一の商人へと成り上がるもよし、生産者として唯一無二のアイテムを生み出すもよしです』
後で聞いた話だが、彼女の言葉は誇張でも何でもなく、無数にあるスキルと呼ばれる技能を組み合わせて使用するセンスと、そのスキルを獲得するリソースさえ確保できるのならば、文字通り“何でも”出来そうだ。
例えば、「某放射能怪獣になって破壊光線を吐きたい」と思ったとして――私は思わんが――流石に本当にゴ◯ラになるのはこのゲームが某特撮会社とコラボでもしない限り版権的に許されんが、似たような事なら出来る。出来てしまう。
スキル〈変身:ドラゴン〉、スキル〈巨体〉、スキル〈スキル倍加〉、スキル〈ドラゴンブレス:光〉。極めて高レベルのこれらスキルを組み合わせたら、アラ不思議。あなたも今日からドラゴンさんになれちゃいます。
ドラ◯ラムだこれ、と思った私は悪くない。
ちなみに、このスキル構成、上手くスキル出現条件を満たしても、取得スキルポイントその他リソース不足により、よっぽどの事がない限りユーザー…じゃなかったプレイヤーこと来訪者には取得不可能だそう。
…住人に、ドラゴ◯ム可能な方がいらっしゃるんですね?
うん、決めた。住人への対応は丁寧に。むやみに敵対しない。この方針でいきます。
そんなわけで、『アナザーワールド』というゲーム世界は、自由度が非常に高いが、個人で取得出来るリソースは限られているため、アバタークリエイトにはプレイの方向性を反映させるのが一般的。
え?〔管理者〕さんのお手伝いがなかったら私はどうしてたのかって?適当に選択項目の一番上のを選びましたがなにか?
つくづく、サポートしていただいて良かったと思う今日この頃。
『あなた様は、この『アナザーワールド』で、何をなさりたいですか?』
「旅行です」
『……』
「……」
あっさり終わる質疑応答…。
『あの、それだけですか…?』
「はい」
美人の困り顔可愛いが、私は旅がしたい。他は特に思い付かん。確かに剣と魔法のファンタジーな世界をリアルに体験出来るこのゲーム、戦闘無双したい人も、商売無双したい人も、生産無双したい人もいるだろう。
だが私は、そういうがつがつしたのはごめん被る。
のんびりまったり異世界旅行。初めて見る景色を堪能し、知らない文化と交流し、美味いものを食べる。私がやりたい事はこれにつきる。
だがまあ、このまま無言も何なので、戦闘をする気はないが身を守る手段は欲しいとか、出来れば道連れも欲しいとか、旅先で稼ぐ手段があれば尚いいとか、困っている人がいたら助けになれればいうことないとか、追加で要望は伝えておきました。美人の困り顔可愛いけど、やっぱり申し訳ない気分になるので!
さて、さっきの要望でスペック他初期取得スキル、職業は決まったらしい。
『担当者にアバターのグラフィック作成を依頼します』と〔管理者〕さんがどこからか取り出した白い封筒を、どこからともなく現れた羽の生えた真っ白な毛玉?みたいなもの複数がどこかへと運んで行った。なんだあれ。後でもふらせてもらおう。
だが出来上がるとは言ってない。