17.妖精の森へ
誤字報告ありがとうございます。早速訂正致しました。
そして大変お待たせしました。
区切り時がわからず大変ボリューミーな17話でございます。
草原の中を西へと真っ直ぐに伸びる街道をひたすら進む。
遠出には中途半端な時間なので、この道を歩いて移動しているのは私のみ、たまに馬車とすれ違うが、だいたい幌がかかっており、人輸送用馬車なのか物資輸送用馬車なのか判別がつかない。
そういえば、噴水広場にあった街の簡易地図を見る限り、多分あの街では作られていないスパイスの類い、そして何より付近に海はない筈なのに生の魚介類なんかが普通に売られていたのだが、この世界の物流どうなってるんだろう。
街道に出てから、馬車しか見てないのだが。
一方、左右に広がる草原では初心者装備やそのちょっと上位らしき装備を纏った来訪者達が、一抱え程の茶色い毛玉……推定角兎を追い回していたり、明るい緑色の毛並みをした俊敏な大型犬みたいなの……推定草狐に飛び掛かられて阿鼻叫喚していたり、凄く楽しそう。
そして、ついさっき私の懐で目覚めて初対面となった毛玉二人も、私の肩やら背中やらでころころじゃれあって楽しそう。
モフとマフは性格?がずいぶん違うので、ちょっと相性的にどうかと思っていたのだが、従者1号が従者2号をあっさり受け入れて面倒みはじめた(ニュアンス)ので、特に問題もなく。流石は大天使、可愛……懐が深い。
称号【慈悲の化身】の効果か、敵対的魔物との遭遇もなく。
うららかな日差しの中、景色を楽しみつつ石畳の街道をてくてく歩いて小一時間。
街道は草原から森の中へと続き、私は肩で小動物を遊ばせたまま森の中へ。
草原の青い匂いとはまた違った森林特有の少し湿った緑と土の匂い、どこかで鳴く鳥?の声、石畳の上で乾いた落葉を私の沓が踏む音。
野外活動に嵌まった学生時代、さんざん分け入った広葉樹の森と変わらぬその空気に、これマイナスイオン再現していてもおかしくないなと思う私。VRスゲー。
久しぶりの森林浴を楽しみつつ森を貫く街道を歩く事30分程、はしゃぎ疲れたのか私の肩でひと塊になっていた毛玉達が、もふもふまふまふと思念を飛ばしてきた。
もふもふ!
あるじ、ここ!
まふまふ。
ここから、あんない、する。
神殿併設診療所で採取提出依頼を確認した際、いくつかの素材の在処を知っているので案内するとマフから提案があり、ありがたくお願いする事にしたのだ。
そんな訳で私は現在街道を外れ、白銀毛玉の先導のもと、道なき道というか、人が辛うじて通れる木々の隙間や、藪の切れ目等を踏み越えて森の中を進んでいます。
恩寵の沓の地形効果無効か、そんなに歩きづらいということもなくさくさく進んで行き、街道を外れてから十分ほど経った頃だろうか。
ふと見上げた先、二本の木がちょうどアーチみたいな生え方をしているな、と思いつつその下をくぐった瞬間、はっきりと空気が変わった。
甘い花や果実の香り混じりの、みずみずしい新緑の香り。
立ち木の種類や肌に触れる空気の感触すら先程とは違う。
まるでアーチをくぐった途端、空間が切り替わった様な。
拭えぬ違和感に困惑しつつも、マフに先導されるまま、舗装こそされていないが先程までの獣道とは明らかに違う、整備された小径を往くと、密集して生えていた木々が徐々に減ってゆき、柔らかな下生えが目立ち始める。
そうして辿り着いたのは、森の中にぽっかりと開けた空間。
規模はだいたい小学校のグラウンド程だろうか、かなり広い。
ふむ……?
事前情報では、この西の森はあまり大きくなく、始まりの街↔西の森深部の日帰りが出来るのだが、その割に素材が豊富(神殿併設診療所素材買取窓口情報)で、そこそこ歯ごたえのある敵対的魔物もよく湧く良い狩り場(はぐれさん情報)、とのこと。
だが、規模が小さい故に休憩スポット等が少なく拓けた場所は殆どない、と聞いたのだが……。
不思議に思いつつ、森林広場(仮)へ一歩踏み出した私だが、いかんせん薄暗い森の明度に慣れた目に降り注ぐ午後の陽射しは眩しく、咄嗟に目をすがめ……、
その狭まった視界の端を、ふっと流れるなにか。
思わず足を止め、目で追ったそれは、ぼんやりと発光しながらふわりと宙を移動している。
青白くさえ見える温度を感じさせない光、蛍のそれに近いが、蛍だとすれば大きすぎる…様な気が。
立ち止まった私に気付いたのか、付近を浮遊していた小規模な蛍? の一団……五匹くらいか……が、ふわふわと近寄って来た。
同時に、私の猫耳が笑いさざめく様な思念を捉える。
『ニンゲン?』
『迷イ込ンダノ?』
『イタズラシチャウ?』
『ネエ、コッチ見テナイ?』
『ニンゲンニハ、ボクラノ姿ハ見エナイハズダヨ?』
その思念の云う通り、ぼんやり光るその姿を捉えているのは猫耳、相変わらず『耳』標記なのに視覚にも効果が及ぶ[猫妖精の耳]。
これが一粒で二度美味しい的なアレか、等とどうでも良いことを考えつつも、私の眼は浮遊する彼等に釘付け。
数は5。男女混合、年頃は十代前半程に見えるが、身体の大きさは手のひらに乗るくらい。
その造作は、大抵の日本人が『妖精』と聞いて咄嗟に思い浮かべる、いわゆる“フェアリー”、要するに永遠の少年の相棒タイプ。よく視るとぼんやり発光しているのは彼等の背から伸びる蝶や蜻蛉の羽、というか鱗粉か?
あれが妖精の粉というやつなら、永遠の少年がワニ嫌いの海賊船長と戦いを繰り広げる名作アニメ映画の如く、人の身に振り掛ければ飛べる様になるのだろうか。
身一つで空を飛ぶという、ある意味人類の夢に年甲斐もなくワクワクする私。後で少し分けてもらえるよう交渉しよう。
話が逸れたが、彼等は非常にカラフルな髪や目、そして背中から生えた蝶や蜻蛉の羽により、生き物というより精巧な人形に見える。動いとるが。
そんなテンプレート妖精達がよく視ればそこここに遊び、発光するきのこや草花が散見され、新緑の葉をつけた木々に混じってカラフルな葉の木が生えていたり、ちょっとした小屋サイズの白いマルチーズ……神眼結果妖精犬が、神眼結果泉の乙女遊ぶ泉の傍らにそびえる、柔らかに輝く金の実を付けた林檎の巨木…神眼結果楽園果樹の木陰で昼寝をしていたり。
……なんというメルヘン空間!
白銀毛玉に案内され、辿り着いたのは妖精の森でした。
『ニンゲン違うよ! 王さまだよ!』
『おーさま! おーさま!』
『…猫妖精の、王様。だから、イタズラしちゃ、だめ』
好奇心旺盛なのか、最初に寄ってきた5人組の他にもぞくぞくと集まってくる神眼結果小羽妖精種達に取り囲まれ、ファンタジーとメルヘンは似て非なるものだと実感しつつ立ち尽くしていた私の足元へ、転がる様にかけ寄ってきたのは神眼結果猫妖精の三人組。
私と同族の筈だが、見た目、まんま仔猫三匹。
勢い余って私の足に突進してきたスコティッシュフォールドっぽい三毛、でんぐり返って目を瞬かせている、まだ生後間もない感じのアメショー、私の沓に前肢を掛け、じっと見上げてくる一番年長っぽいロシアンブルー。
王って何だ!私はそんなめんどくさ……責任ある立場に即位した覚えはないし、その気もない! ……という突っ込みはひとまず置いておき。
とりあえず、仔猫お持ち帰りしていいですか?
半ば脊椎反射でしゃがみこみ、仔猫特有の柔らさを持つ毛並みを撫でくり回しつつ、半ば真剣にお持ち帰りを考える私。
え?私にはもう毛玉が二人もいるだろうって?
確かに毛玉達は世界一可愛いが、毛玉達には毛玉達の、仔猫には仔猫の良さがある。
比べられる様なものではないのだ…等と己自身に言い訳しつつ、欲望のままに三人まとめてもふる私。
三毛と鯖とブルーグレーの仔猫三匹……じゃない、幼い猫妖精三人は、にーにーみゃーみゃーと歓声をあげながら私のなすがままにもふり倒され、現在私の腕の中でくるくる喉を鳴らしつつ、くったりしている。
脱力した短い前後足が可愛……いや、そうでなく。
すまん、同族の仔。また加減を忘れた。
どうも『アナザーワールド』での私は、だいぶ欲望に忠実らしい。
あれです、リアルでもふもふを飼ったらダメ飼い主になる未来しか見えないので断腸の思いで自重しているし、近所を散歩中のもふもふをもふるのは兄から禁止令くらっているし。
この『アナザーワールド』で私のもふもふに対する情熱が暴走するのも仕方ないと思います。…仕方なくない?
『ワア、猫妖精ヤラレタ!』
『大変! ニンゲンニ捕マッチャッタ!』
『ドウスル? ヤッツケル?』
『ヤッチャウ? ヤッチャウノ?』
『イヤ、猫妖精達『王様』ッテ言ッテタヨ? ニンゲン違ウンジャナイノ?』
私が仔猫の毛並みを堪能している間に、周囲の小羽妖精種達の雰囲気が不穏に。
というか、よく視たら最初に寄ってきた5人組は、背から伸びる羽が他の小羽妖精種達より一回り大きいっぽい。明確に思念を発しているのも、この5人だけだ。特殊個体?いやどちらかというとリーダー的存在だろうか。
名前:なし 種族:小羽妖精族長赤(桃色,黄,緑,青) レベル:52(51~54)
【称号】《妖精女王の加護》
【種族スキル】[妖精眼]〈隠形〉〈統率〉
説明:小羽妖精族の上位種。レベル50で条件を満たした場合に種族進化可能。
乱入してきた毛玉達と恍惚の表情で転がる仔猫達を手加減しながらもふりつつ、何事か話し合ってるっぽい5人組――よく視たら小羽妖精族長だった――をしばらく眺めていたら、視界に捉えた瞬間当たり前の様に自動発動し、対象の頭上に種族名を標示していた神眼に追加情報が。レベル、称号、スキルと説明か……。
どうやら注視すると情報追加されるらしい。
うん、今日も安定の自動発動。任意発動スキルとは一体。
…それにしても、君らレベル高いな?!
外見十代前半なのに族長だったレベル50オーバーの5人組の内訳は、真っ赤な短髪に赤基調の動きやすそうな……端的にいうとジャージっぽい上下を着た単純……快活そうな見た目13~14歳位の少年(小羽妖精族長赤)、
桃色の長い巻き毛に同色グラデーションの可愛らしいワンピースを着た小羽妖精種には珍しい垂れ目の天然……おっとり優しそうな見た目14~15歳位の少女(桃色)、
黄色と緑の髪を無造作ショートボブにしたそっくりな二人は多分双子、しかし正に妖精! なレモン色のティン○ーベルスタイルミニドレスとホットパンツの黄色い髪の子はボーイッシュな少女(黄)、若草色のシャツとハーフパンツにピー○ーパン的羽付帽子の緑髪の子はユニセックスな少年と思われる(緑)。二人とも好奇心旺盛! が全身から滲み出ているトラブルメイ……活動的な見た目12~13歳。
最後は鮮やかなコバルトブルーの短髪に、アイスブルーの切れ長の瞳がクールな印象の見た目14~15歳位の少年。着ているのは水色基調の詰襟のロングジャケットとスラックス、分かりやすくいうと長ランだがなかなかお洒落。さっきから一人だけ冷静な言動をしているし、苦労しょ…頭脳派っぽい(青)。
しかし、赤桃色黄緑青の5人組て、戦隊ものか。『フェアリー戦隊メルヘンジャー』とかどうだろう。どうでも良いが、何故戦隊ものは『○○ジャー』というんだろうか?レンジャー部隊とかが元なのか。
等とつらつら考えつつ、彼等の言う“いたずら”――『アナザーワールド』ではどうかわからんが、イングランドあたりに伝わる『妖精のいたずら』は結構洒落にならなかったりするので――を実行される前に誤解を解こうと、私は口を開く。
「驚かせてすまん。
私はシロ、肩の毛玉二人は私の従者のモフとマフ。
こんな姿だがこの子達の言うとおり私は猫妖精だ」
毛玉達を肩に乗せ、一塊になった同族達を抱いて立ち上がり、私は頭を下げる。
あまりの絵本的様相に思考が停止していたが、妖精の領域に踏み込んで来たのは私の方、驚かせてしまってすまぬすまぬ。
本来好奇心旺盛で物怖じしない小羽妖精種が、ニンゲン……私が擬態している種族はじめ幾つかのヒト種を警戒するのは、そうするだけの歴史的理由があるからだ。
『アナザーワールド』には体長15~30センチ程のヒト型でカラフルな肌色、昆虫の様な羽を持つ魔物、『ピクシー』が存在する。
小羽妖精にとってピクシーという魔物は、ヒューマンにとってのゴブリンやオーガに当たる存在で、『体長、体の形状は似ていても全く別の生物』であり、同一視する事は非常に失礼に当たる。
ちなみにどれほど失礼かというと、リアルで人間に『あなたはチンパンジーと区別がつかないな(真顔)』というのと同じ位だそうだ。〔管理者〕さん情報。
なお、エルフやダークエルフにとっての邪精人や堕精霊、ドワーフにとってのスプリガン、獣人にとってのライカンスロープ……人狼や人虎等だな、が、それとのこと。
あと、知能の高い神獣をただの獣や魔物扱いする事も同様。
あれです、古龍(ヒト種より遥かに知能も誇りも高く、下級の神より力ある存在、らしい)を劣竜(魔物)やトカゲ扱いしたら消炭にされても仕方ない、的な。
同じ読みだが、神獣は『龍』、魔物は『竜』なので、これも間違えてはいけない。ややこしい、何故同じ読みにしたし。
話が逸れたが、小羽妖精種は過去の一時期、魔物であるピクシーと混同され、ヒューマン他幾つかのヒト種に狩られていた歴史がある。
誤解が解けた段階で当時のヒューマンのトップから妖精族の代表へ謝罪と賠償はあったらしいが、そもそも意思疎通可能な相手を対話もせず、失礼極まりない勘違いで虐殺するとか……。
攻撃開始した段階で小羽妖精種側から絶対思念掛けられただろとか、そもそも魔物だからって即狩る対象にするってヒトとしてどうなのとか、突っ込み処が多すぎる。蛮族か!
そんなわけで、ヒューマンは小羽妖精種に恨まれても仕方ない。むしろ警戒されるくらいで済んでいる事に、私は小羽妖精種心広いな! と驚嘆しています。
私が喋り掛けて来た事で、どうやら私に自分たちの姿が視えていると気付いたのか、集まっていたメルヘ……小羽妖精種達は警戒心あらわにさーっと散って行き、残ったのはレベル50オーバーの族長の5名。
私を胡散臭そうに見ているメルヘンレッド(仮)、不安そうにしているピンク(仮)、注意深く此方を観察しているブルー(仮)。
そして何だか不満そうにぶー垂れるイエロー(仮)とグリーン(仮)
……あれか、イタズラしたかったのか。どうも黄色と緑からは、テンプレ妖精的享楽思考を感じる。きさまら、それで族長務まるのか?
まあ、それはともかく。
これ明らかに信じて貰えてないな!
猫妖精の種族スキル[常時擬態]は確かに強力な偽装スキルだが、妖精種にまで効果が及ぶと不都合が生じるので、妖精種の種族スキル[妖精眼]には猫妖精で種族表示される筈なのだが。
どうやら[妖精眼]をもってしても私の種族偽装が見破れない様子。
思い切り不審者扱いされていますが、これ一体どうすれば……、あれ、そういえば私『幸運猫の仮面』外してないな!
今更気付いて、慌てて装備を解除する私。
〈装備変え〉スキルを発動すると、『幸運猫の仮面』はインベントリへ。そして根元からさーっと白虹色に変わる髪。
……なんというか、髪色の変わり方が古いアニメのそれにそっくり。
そして髪色隠蔽している事をすっかり忘れていて、その変化にちょっとびっくりしたのは秘密。
『……!猫妖精ダ!』
『使徒様デ…神子様?ワア、髪キレイ!目モキレイ!』
『フエ~、使徒様トカ初メテ見タ~!』
『神子様モ初メテ見タ~!』
『連レテル従者モ、〈御遣イ〉ト〈神使〉ダシ、間違イ無イネ』
隠していた称号その他諸々までだだ漏れな件。
うん、メルヘンジャー(仮)、[妖精眼]スキル持ちだもんな、仮面外したらそうなるよな…。
警戒心剥き出しの眼差しから一転、好奇心溢れる友好的な目で寄って来るメルヘンジャー(仮)達に、落ち着かない気分になる私。
うん、速やかに『幸運猫の仮面』装備しよう。
具体的に言うと、称号《虹の旅人》が見つかる前に!
というわけで、即座に〈装備変え〉を再使用、視界の隅で髪色がさっきの逆再生の様に白銀へ戻……いや、そういえば私の髪色、元々が白虹、偽装して白銀だった、では白銀に変わる、が正しいのか。
基本的に派手だったり光るものが好きらしい小羽妖精種の例に漏れないらしく、光をはらむ白虹の髪色を偽装した私を残念そう……黄緑双子はふてくされた様子で眺めるメルヘンジャー(仮)の様子を伺う限り、《虹の旅人》には気付いていない模様、そっと安堵する私。
だがしかし、世の中そんなに甘くはなく。
私の背後……泉の乙女の水辺と金色林檎の生る巨木側から、鈴を転がす様な声が。
「おや、これは残念じゃの」
驚いて振り向く私の視線の先、昼寝から覚めたらしい巨大マルチー……妖精犬を従えて立っていたのは、腰に届くほど長い豪奢な黄金の巻き毛に、薄暮の空の様な菫色の瞳の、目の覚める様な美少女。
「せっかく麗しいに、華の顏、隠してしまうのか?
勿体無いのう、せめて妾の領域におる間は、無粋な仮面など付けずに過ごさぬか? 《虹の旅人》陛下よ」
ぐふっ……! 妖精の森で《虹の旅人》バレという羞恥プレイ!
なんかもう恥ずかしい通り越していたたまれない気分になる私。
あと、突っ込み処は多々あるが、なんだ華の顏て。
確かに私のアバター、デザイナーさん渾身の作だけあって美麗極まりないのは認めるし、アバターの容姿を褒められるのは、彼等彼女等の努力とこだわり(物理的話し合い含む)が実を結んだ結果と思えば私も嬉しい。
が、私の中で“華の顏”は美女を称える形容詞。
「賛辞はありがたく受け取るが……、
真に麗しい、“華の顏”という形容は、私などではなく、貴女にこそ相応しいと言わせてもらう」
月光の様な金髪に映える、大輪の白い花と中~小サイズの寒色系の花――――形からすると月下美人とクレマチスっぽい――――を連ねた豪奢な花冠。
華奢な肢体を包む光に透ける薄布を幾重にも重ねた、白から青紫へのグラデーションも美しい裾の長いドレスにも、そこここに同種の生花が咲き、彼女を艶やかに彩る。
まさに“絶世の”を冠するに相応しい、迫力美少女。
生花を纏う姿からすると花の妖精?
だが、この少女には、花の妖精の儚さより、月下美人やクレマチスすら従え、百花の上に君臨する女王の覇気が似合う気がする。
そんな彼女が耳に心地良い音楽的な声で精神を抉りに来……問い掛けて来たので、いやいや何言ってんのそれブーメランだからな(意訳)と返したところで、彼女の頭上に表示された簡易ステータスに漸く気付く私。
名前:ティターニア=セレネ=アレフガルド
種族:妖精女王 レベル:£₥₭₢
【称号】《妖精郷の守護者》《百華の女王》《月神の愛し子》
真実《百華の女王》称号持ち、しかもまさかの妖精女王陛下だった件。
うわあ……。レベルなんか見たことない文字で表示されているうえ、私の見間違いでなければ四桁なんだが…。
あれです、何処の世界にも逆らってはいけない相手っているんだな、と心に刻む私。ちなみに、リアルで逆らってはいけない相手は母と姉。
とにかく、妖精女王陛下のあまりにもあれなステータスを(私の意思に関わらず)神眼で視てしまった動揺に内心仰け反りつつも、表層だけは取り繕って私は深く腰を折る。
「お初にお目にかかる、妖精郷の女王にして妖精郷の守護者たる《百華の女王》陛下」
早口にならん様こころがけて口上を述べながら、女王陛下のご希望通り猫仮面を再解除。女王陛下相手……というか、誰が相手だろうと隠したかった恥ずかしい称号はどうせ即バレしてるしな!とやさぐれつつ。
内心の嵐を隠して大人の余裕を演出しているのは、もう単なる意地です。
「妖精種のはしくれとはいえ、一介の旅人でしかない私などが拝謁の栄誉を賜り、恐悦至極」
なお、動揺を抑えるのに意識の大半を割いているため、回答が端的かつぶっきらぼうに。
うん、『アナザーワールド』に来てからの私、こんなんばっかりだな!
今更取り繕っても遅いので、もうこういうキャラでいくけども!
あれだ、『アナザーワールド』における〔創世神〕と〔破壊神〕に気安く……ぶっちゃけタメ口きいてるので、もう色々手遅れだしな! ……と開き直る私。
「頭を上げてたもれ。
《虹の旅人》にして《猫妖精の王》たる貴殿は、妾と同格じゃ。
その貴殿が一介の旅人とは。ほほ、面白い冗談じゃの」
ころころと笑う妖精女王陛下。
いや私、冗談を言ったつもりは欠片もないのだが。
そしてなんだ《猫妖精の王》て!
私には全く心当たりがない…、
ピロン♪
そこに全く空気を読まない間抜けな電子音が。
……うん? なんだ通知か。私今忙しいんだが?
『称号取得:《猫妖精の王》
クリア条件【猫妖精複数名、及び妖精女王一名より認定】を達成した為、称号《猫妖精の王》が顕在化しました。
称号に付随するスキル等は個別にご確認ください。』
……………。
うん、実は同族の仔等に王様よばわりされた時に、こうなる予感はしてた。
頑張ってスルーしていたんですが、逃げ切れなかった様です。
私のステータス、また秘匿情報増えるのか……。うわあ……。
登場人物が過去最多。
人物描写って難しい…!




