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1.ゲームを始める

のんびり更新していければいいなと思います。

素人の思いつきを形にした…形になってるといいな!的作品のため、温かく見守っていただけると幸いです。

作者のメンタルおぼろ豆腐並みに脆いため、感想は受付けておりません。

宜しくお願い致します。


「ありがとうございました」

頭を下げると、彼等は恐縮した様子で「とんでもない、こちらこそ本当にありがとうございました」と口にしながら去って行った。

律儀な方々である。

確かに、私はある意味彼等の恩人と言えなくもないのだが、それにしても至れり尽くせりだ。

機材の設置から設定まで、全て行ってくれたので、私のする事は専用のリクライニングシートに座り、ヘッドセット――バイザーと言ったか――を被って、スイッチを入れるだけ。

これなら、少しだけ、あくまで少しだけだが、機械類に疎い私にも問題なく起動出来る。

よし、じゃあ早速起動。

パソコンが立ち上がる音に似た起動音と同時に、掛けていたリクライニングシートの背もたれが少しずつ倒れ、バイザーを通して見えていた私の部屋の天井がホワイトアウトしてゆく。

白く染まった視界の隅に、カウントダウンが表示され…三分か。

長いのか短いのか、私にはわからんが、ログインを待つ間に少し回想なぞしてみる。


私がこうして『アナザーワールドオンライン』と云うフルダイブ式のバーチャルリアリティオンラインゲーム、ええとVRMMOだったか?を始める事になったその発端は、偶然残業があった帰りに、何時もは通らない裏道を通り、そこで見つけた小火を消した事だ。

町のお巡りさんなぞやっていると、小火騒ぎそのものは繁華街等では頻繁にあるとは言わないが無いとも言えない、まあ珍しいかな、と言えなくもない出来事である。

珍しかったのは、出火元がオフィス街の、いわゆる摩天楼地区であり、灯油やらガソリンやらスプレー缶やらが大量投入されており、素人考えではあるが、ガチで火事を起こそうとした形跡が見受けられた点だろうか。

消すのめっちゃ大変だった。消火器が複数近くに設置されてて良かった。

脊椎反射的に消火しながら消防と警察に通報した私スゲーと、後になって思う。どうやったのかさっぱり思い出せん。

消火器片手で吹き付けながらもう片手でスマホ使ったとしか思えんが、再現しろと言われても無理。

で、明らかに付け火されてたその摩天楼が、日本の誇るゲーム会社の本社ビルであり、そこでまさにその時開発中だったゲームが、VRMMO『アナザーワールドオンライン』だったと云うわけだ。

素人が発作的に行った火付けなので、私が消さなくとも近代日本摩天楼の防火設備でどうにかなったとは思うが、もし運悪くビル火災になっていたとしたら、このゲームは少なくとも今、ここには無かった、ついでに自分達の命も無かったかも、と開発チームの方々には大層感謝され、設置設定込みでゲーム設備一式をいただいて、今に至る。

…開発の方々の、自分の命の方がついでとか言っちゃう狂…このゲーム開発にかける熱意には、ドン引…驚嘆するばかりだ。

あ、放火犯は小火消火直後にあっさり捕まっています。

ライバル会社、と言うにはあまりにも零細かつ無名なゲーム開発会社の企画担当兼プログラマーだった。

あまりの環境の悪さに入社直後に辞めていく新人。

ある日ぱたりと出社しなくなる同僚。

今すぐに売れるゲームを開発しろと怒鳴り散らし、しかし何度企画を提出しても予算オーバーだと却下するばかりの上司。

そして、休日?休暇?なにそれ美味しいの?栄養補給ならデスクで仕事しながらカロリーバー齧ればいいし、人間四~五日寝なくても死なないよ!限界来たらデスクの下ででも仮眠取れば?帰宅とかしてる暇ねーから!的究極ブラック思想に洗脳され、ガッツリ病んで、死んだ魚みたいな目をした男だった(裁判所で見た)。

他のゲームが発売されなければウチのゲーム売れるよね、あ、テスター募集してる会社がある、発売間近だな!よしビルに火付けよう!という発想だったらしい。

ブラック企業怖い。良かった私公僕で。

お巡りさん殉職のニュースとか見て震え上がったりするが、過労死含め全体死亡率は高くない。

消火時煙やら揮発油やら吸い込んだ関係で喉と気管が荒れたり、小さな火傷が幾つか出来たり、熱と煙にさらされた眼が炎症起こしたりの治療費も労災で賄えた。

しばらく取ってなかったまとまった休みも取れた…っていうか、心配したおやっさん(※上司)に取らされたんで、存分にゲーム出来るぞう!…一応傷病休暇だから、遠出も出来んし、それくらいしかする事がない、とも言う。

一ヶ月も休みがあるなら、本当はどこか旅にでも出かけたかったんだが、まあ仕方ない。

と、つらつら考えている間に、視界の隅でカウントダウンが終了。

意識だけ吸い込まれる様な、落ちる様な、不思議な感覚に思わず目を閉じた、次の瞬間。

私は、まさに『異世界』と呼ぶに相応しい、『アナザーワールドオンライン』というゲームの、“入口”に降り立っていた。

消火器使いながら通報。本当にどうやったんだ主人公…。

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