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オーダー5:転校生は人気声優

外も少しずつ暑くなっていき、季節も春から夏へ変わろうとしていました。そんな中、今日の水彦は、いつになく元気いっぱいでした。何故なら今日、水彦が大好きなじゃっかん高校1年生の人気声優の女の子・田中マユ子(通称マユタン)がこの鈴夏高校1年B組に転校してくるからです。マユ子は、5歳の時に声優デビューし、少女役はもちろん、少年役や大人の女性、マスコットキャラの声も演じることができる、まさにスーパー若手声優なのです。しかも水彦が大好きなフォックスヘブンズのモモカちゃんの声も彼女が演じているのです。


水彦「もうすぐこの教室にマユタンが入ってくるのか〜。楽しみだな〜♪」


水彦は大好きなマユ子を頭の中で思い浮かべながら、彼女が入ってくるのを楽しみにしています。

するとチャイムが鳴り響き、上杉先生が教室に入ってきました。


上杉先生「知っている人もいると思いますが、今日から転校してきた新しい友達を紹介します。入ってきて!」


上杉先生の呼び声と共に、ついにマユ子が1年B組の教室に入ってきました。マユ子は、ちょっと緊張しながら自己紹介しました。


マユ子「み、みなさんおはようございます。マユタンこと、田中マユ子です。よろしくお願いします。」


水彦「マユタン、キターーーーー!!」


マユタンの登場に、水彦を含む一部のアニメファンの生徒達は興奮していました。そして昼休み、水彦はワクワクしながら思い切ってマユ子に話しかけようとしました。


水彦「マユターーーーーン!!」


水彦は両手を剣のように鋭くたて、マラソン選手のような走り方で、席に座っているマユ子に勢いよく近づき、話しかけました。


水彦「初めましてマユタン!僕、大倉水彦っていうんだ!フォックスヘブンズはもちろん、マユタンが出演しているアニメは全部見てるし大ファンなんだ!それからそれから!」


マユ子「あの…えっと…。」


水彦は両目を宝石のようにキラキラと輝かせながら、テンポ良く、グイグイとマユ子に話しかけました。

でも対するマユ子は水彦のあまりの強引さに困っていました。


マユ子「その…ごめんなさい!」


困ったマユ子は、慌てて教室から逃げ出してしまいました。


水彦「うそーん…。」


大好きなマユ子が自分の前から逃げてしまい、水彦はショックを受けてしまいました。

放課後、カフェチャーミーキャットにて…


水彦「ちくしょ〜〜〜〜!!僕はただ、マユタンと仲良くしたかっただけなのに〜〜〜〜〜!!」


カウンター席に座っている水彦は、マユ子に嫌われてしまい、目から悔し涙を流していました。

カフェには、こねこちゃん、春人、シズカはもちろん、アカネもいて、水彦のことを心配をしていました。


アカネ「いきなりあんなに喋りすぎるからいけないんだろ。」


シズカ「嬉しいのは分かるけど、さすがに落ち着いた方が良かったと思うよ。」


こねこちゃん「水彦くん、これ食べて元気出して。」


落ち込む水彦にこねこちゃんは、プリンを差し出しました。水彦は落ち込みながらプリンを食べました。

キラキラプルプルで、カラメルがとろけるプリンを食べた水彦は、その美味しさのおかげで、少しだけ元気を取り戻しました。春人も水彦にこうアドバイスしました。


春人「仲良くなるためにはまず、相手の気持ちを考えながら接した方が良いと思うよ。自分の気持ちばかりをどんどん押し付けるのは、なるべく気をつけた方が良いからね。」


そして夜、

春人にアドバイスをもらったものの、水彦は今度こそマユ子と仲良くなれるかどうか不安になりながら夜の帰り道を歩いていました。


水彦「相手の気持ちをながら接する、か…。うまく制御できるかなぁ…?」


悩みながら家へと向かう水彦。

すると彼は、マユ子が鈴夏高校とは別の学ランを着ている犬のブルドッグの不良に絡まれているところを偶然目撃したのです。電信柱に隠れながら水彦はその様子を見ていました。


不良ブルドッグ「ねぇねぇ君〜、声優のマユタンでしょ〜?オレとデートしようぜ〜♪」


マユ子「や、やめてください!」


不良ブルドッグはみにくい顔をしながら、マユ子を強引に連れて行こうとしました。それを嫌がるマユ子。

一方、電信柱からその光景を見ていた水彦は…


水彦の心「どうしよう!助けなきゃ!でも僕なんかがあんなヤツと戦って勝てるのか?マユタンを助けることができるのか?くそっ、どうすればいいんだ…!?」


水彦は迷っていました。アニメや特撮、声優に詳しいだけしか取り柄のない自分が、あの不良ブルドッグにケンカで勝ち、愛しのマユ子を救うことができるのかと…。

すると苦悩する水彦は、フォックスヘブンズのリーダーのツネ子ちゃんの名セリフを思い出しました。


回想

ツネ子ちゃん「敵に勝つことも大事だけど、自分のできるところまでやりきることの方が、もっと大切だと思うよ!」


水彦の心の声「そうだ…!大切なのは、自分のできることをやりきることだった!やってやる…!僕は…戦う!!」


水彦「マユターーーーーン!!」


迷いを振り払い、覚悟を決めた水彦は、再び両手を剣のように鋭くたて、マラソン選手のように勢いよく走り、マユ子を助けるために不良ブルドッグの前に立ち塞がりました。


水彦「やめろ!これ以上マユタンを困らせるな!」


マユ子「水彦くん!?」


水彦が助けに来たことに驚くマユ子。


不良ブルドッグ「ああん?なんだテメー?ぶっ飛ばされたくなきゃさっさと帰りやがれ!」


不良ブルドッグに脅される水彦。でも水彦は一歩も引かず、こう言い返しました。


水彦「殴るなら殴れよ!マユタンの代わりに傷つくなら本望だ!」


不良ブルドッグ「けっ!生意気なヤツだぜ!ならお望みどおりにしてやるよ!」


水彦に襲い掛かる不良ブルドッグ。対する水彦も不良ブルドッグ相手に勇敢に立ち向かっていきました。

一方、こねこちゃんとシズカは、ケーキやコーヒーなどの材料を調達するため、商店街に向かっていました。

ですがその途中、2人は水彦が不良ブルドッグにボコボコにされているところを目撃してしまったのです。


こねこちゃん「あっ!水彦くんだ!」


シズカ「きっとマユ子ちゃんを助けるために戦っているんだ!」


不良ブルドッグのパンチがどんどん炸裂し、水彦は手も足も出ませんでした。


水彦「はぁ…はぁ…はぁ…。」


不良ブルドッグ「これでトドメだー!」


不良ブルドッグのトドメのパンチが水彦に炸裂しようとしたその時でした。


マユ子「やめてください!あなたの言うことなら聞きます!ですからこれ以上水彦くんをいじめないでください!」


マユ子は水彦を助けるために、不良ブルドッグの言うこと嫌々聞くことにしました。


不良ブルドッグ「意外と素直じゃねぇか!そんじゃさっそくデートにでも行こうぜ〜♪」


不良ブルドッグはボコボコにした水彦を後にし、ルンルン気分でマユ子と一緒にデートに行こうとしました。

でもその時でした。


水彦「こんなヤツの言うこと聞いちゃダメだ!」


水彦はボロボロになりながらも、マユ子を行かせないように説得しました。


不良ブルドッグ「なんだテメー!?ザコのくせに生意気なんだよ!」


水彦を見下す不良ブルドッグ。すると水彦は、こう言い返しました。


水彦「ザコか…。確かに僕はザコだよ。特撮ヒーローみたいに強くもないし、イケメン男子みたいにかっこよくもない…。でもそんな僕にだって、守りたいものがある!マユタンは僕らアニメファンに笑顔と希望を与えてくれた!そんなマユタンに恩返しするためにも!これ以上、マユタンを悲しませないためにも!僕は何度でも、お前に立ち向かわなきゃいけないんだ!!」


マユ子「水彦くん…私のために…。」


自分の弱さを認めつつ、何度も傷ついても、大好きな人への愛情と恩返しのために立ち上がる水彦の勇敢な姿を見て、マユ子は涙を流し、彼に惚れました。


不良ブルドッグ「偉そうなこと言いやがって!今度こそトドメだ〜!!」


怒った不良ブルドッグは、こんしんのパンチで今度こそ水彦にトドメをさそうとしました。

ですがその時、間一髪でなんとアカネが駆けつけ、右手で不良ブルドッグのパンチを受け止めたのです。

実はこねこちゃんとシズカが水彦を助けるために、アカネを呼んできたのです。


水彦「アカネちゃん…!それにシズカちゃんとこねこちゃんも。」


こねこちゃん「良かった間に合って。」


シズカ「水彦くん、マユ子ちゃん、大丈夫?」


アカネ「水彦、アンタにしちゃ良くがんばったじゃん。アンタの勇気、こっからはあたしが引き継がせてもらうよ!」


水彦「アカネちゃん…ごめん…。」


マユ子のために何度でも立ち向かうとする水彦の勇気に感心したアカネは、水彦に代わって不良ブルドッグにバトルを申し込みました。


アカネ「さ〜て、選手交代だ!今度はあたしが相手してやるよ、 ブサイク犬男!」


不良ブルドッグ「ナメやがって!オレは女でも容赦しねぇぞ!」


不良ブルドッグは女の子であるアカネにも容赦なく、顔面に何発もパンチをくらわせました。

ところがアカネは全然平気な顔をしており、涙や鼻血も出てませんでした。


アカネ「その程度でフルパワーですかー?」


不良ブルドッグ「な、何だこいつ!?」


余裕な表情をしているアカネを前に、さすがの不良ブルドッグも驚きを隠せませんでした。


アカネ「図に乗るな…!」


余裕な表情から目つきを鋭くし、アカネの強力パンチが不良ブルドッグの顔面に炸裂し、不良ブルドッグはぶっ飛ばされ、そのまま後ろの壁に衝突しました。


不良ブルドッグ「どわ〜〜〜!!」


アカネ「今のでだいたい70パーくらいかな?100パーのパンチくらいたくなきゃ、二度と水彦とマユ子にちょっかい出さないと約束しろ!」


アカネは、これ以上攻撃しない代わりに、水彦とマユ子を傷つけないよう言いました。


不良ブルドッグ「な、なんだこの女!?バケモンだ〜〜〜〜〜!!」


でもアカネのあまりの強さに不良ブルドッグは恐れをなして、慌てて逃げていきました。


アカネ「ちょ待てよ!まぁでもあんだけ怯えてたら大丈夫かな」


かくして、アカネが駆けつけたことにより、水彦とマユ子は助かったのでした。


こねこちゃん「アカネちゃんかっこいい〜!」


シズカ「アカネちゃん、ケンカは強いからね。」


アカネの強さに、こねこちゃんは大喜び。

ちなみにアカネがケンカがめちゃくちゃ強いことは、シズカと水彦はあらかじめ知っていたようです。


マユ子「水彦くん、大丈夫ですか?私なんかのためにすみません。」


水彦「僕なら大丈夫。それに謝るのは僕の方さ。今朝はいきなり喋りすぎちゃってごめんね。」


マユ子「いえ、気にしてませんよ。」


水彦「それにしても君を助けに行ったのに全然に役に立てなかった…。僕ってかっこ悪いよね…?」


水彦は不良ブルドッグに手も足も出ず、マユ子にかっこ悪いところを見せたことを悔やんでいました。

でも一方のマユ子はこう言いました。


マユ子「水彦くんはかっこ悪くなんかありません!水彦くんは、私のために一生懸命がんばってくれました!水彦くんは…かっこいいです!」


水彦の心の声「ぼ…僕が…かっこいい…?」


なんと愛しのマユ子に「かっこいい」とほめられた水彦。それはまさしく、彼にとって奇跡といってもおかしくありませんでした。すると水彦は…


水彦「レッツ、ヘブゥゥゥゥゥンズ!!」


と叫び、水彦は体を大の字にし、嬉しさのあまり安らかな顔をしながら気絶してしまいました。


マユ子「水彦くん、しっかりしてください!」


アカネ「あーあ。最後の最後でしくじりやがったな。」


こねこちゃん「でも仲直りできて良かったね!」


シズカ「そうだね!」


そして数日後、カフェチャーミーキャットにて


水彦「昨日のフォックスヘブンズも最高だったよ!モモカちゃん大活躍だったね!」


マユ子「いえ、まだまだです。もっと努力しないといけません。」


水彦「さすがだね、マユタン!」


あの夜の出来事以来、水彦とマユ子は、すっかり仲良くなり、今日もカウンター席に座りながらフォックスヘブンズの話題で盛り上がっていました。

しかも春人のアドバイスが効いており、水彦は落ち着いて会話をしていました。その光景を見て、こねこちゃん、春人、シズカ、アカネも安心してました。

一方、同じくカフェで休憩していたハムスターさんと元太。元太は水彦とマユ子が楽しそうに話しいるところを見て、うらやましいと思っていました。


元太「うらやましいぜ。オレもあんな風にツネ子ちゃんの声優さんと仲良くなりたいぜ。」


するとハムスターさんはこう言いました。


ハムスターさん「奇跡でも起きん限り無理やろ。まぁせいぜい声優さんを生で見れるアニメイベントで我慢せい。」


元太「余計なこと言うなよなぁボス。」


と小声で聞こえないように文句を言う元太。

一方、こねこちゃんは、サービスで水彦とマユ子の2人にキツネのイラストが描かれているラテアートを差し出しました。本来ならフォックスヘブンズのメンバーの誰か1人を書くつもりだったのですが、さすがに難しかったようなので、キツネのイラストにしたそうです。

でもそのイラストの可愛さに、水彦とマユ子は大喜び。


マユ子「うわぁ♪可愛いキツネちゃんです〜!」


水彦「わざわざありがとうね、こねこちゃん。いただきます!」


ラテアートを飲む水彦とマユ子。イラストが可愛いだけでなく、クリーミー味も絶品でした。

すると水彦は、マユ子にこんなことを頼みました。


水彦「あのさぁマユタン、無理にとは言わないけど、

良かったらモモカちゃんのセリフを言ってくれるかい?」


アカネ「いやいや、そう簡単に引き受けてくれるわけ…」


マユ子「良いですよ!」


アカネ「ってやってくれるんかい!」


水彦「良いの!?やったラッキー!」


マユ子は水彦の要望を快く引き受けてくれました。

予想外のことにアカネはツッコみ、水彦は大喜びしました。そしてマユ子は自分が演じているモモカちゃんのセリフを言いました。


マユ子「優しさはみんなや世界を癒す!フォックスヘブンズ、ほんわかピンク担当!モモカ!」


水彦「出たぁぁぁぁ!!」


生でモモカちゃんのセリフを聞けたため、水彦は嬉しさのあまり、興奮しました。


シズカ「水彦くんとマユ子ちゃん、友達になれてホントに良かったですね、春人先輩。」


春人「そうだね。それに僕のアドバイスも役立っているみたいで安心したよ。」


仲の良い水彦とマユ子の姿を見て、シズカと春人は、そんな会話をしていました。するとそこへ、マユ子のマネージャーである女性が来店してきました。どうやらマユ子は、そろそろアフレコ現場に行く時間のようです。


マユ子「まぁ!もうそんな時間ですか!それでは水彦くん、みなさん!行ってきますね!」


水彦「がんばってね、マユタン!」


マユ子「はい!がんばります!」


水彦とマユ子は笑顔でグータッチをしました。

こうして、アニメオタクの水彦と人気声優のマユ子。

そう簡単に交わることのない2人の間に、確かな絆が生まれたのでした。




アニオタの水彦と人気声優のマユタンが友達になるまでのお話、いかがでしたか?自分で言うのもなんですが、声優ファンにとって理想的な回ではないかと思います。

さて次回はまたまた新キャラが登場!お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 水彦の勇気がすごい!! [一言] 好きなもののことになると、必死になってしまう水彦は、本当に私に似ていると思いました!
[良い点] 私は声優にはあまりくわしくなく、ジョジョの奇妙な冒険の、ディオ・ブランドー役の、子安武人さんくらいしか知らないのですけど、声優や特撮にも、ちょっとだけ興味がわく内容でした。 サブキャラだ…
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