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明日どうする会議

お皿に乗った魚が全体的に伊勢海老みたいだ。

哲学みたいだけどそうとしか言えない。形はまあまあ魚なんだけどごつごつした硬い殻がついてて赤いし、味がまるっきりエビ。えんぴつみたいに太いヒゲついてるし……


「まとめるわね。

フレトラーさんの言う使徒っていうのは女神ヴィーナスが遣わした者で、これは聖杯をアンタルミーニの教会に届けるのを目的としてる。

フレトラーさんは神託を得た教会から派遣されてる。

そして神託どおりに表れたのがセンジくん」


「うむ」


「で、センジくんは夢のなかで女神と話し合って乗り物に乗ってアンタルミーニにいくことを了承。その際にサイコロを振ってすすむと決めた、と……」


「はい」


「センジくんはこの世界は見覚えがなくて、これまでのことを夢だと思ってるのね?」


「はい……」

「夢ではありません。使徒様は貴き命をうけてこのニルフォーンに顕現されたのです」

「なるほどねぇ」



ここニルフォーンっていうんですね、初めて知れました。ひとつ情報が増えてよかったなー。


なんだか逃避したくなって丸パンに焼き魚をのせて食べる。


「実際ワイルドウルフがやってきて移動できたし、サイコロの出た目だけの村を通ったわ」

「目は5だったか、神具のとおりだ」


「聖杯を届ける目的は聞いてるのないのよね……なんのためなのかしら」

「アンタルミーニに着き、司祭様に聖杯をお渡しすればおのずとわかるのだろう。女神のすることに間違いはない」


「明日もサイコロをまた振るのね?」

「ああ、そうして進めとの思し召しだからな。一日になんど振れるのかはわからんが、明日はカーノアクルア国へ入りできるだけ西へ進みたいところだ」



すごい。

テキパキ状況をまとめるディアナさんフレトラーさんもすごいし、疎外感もすごい。


かといって会話に参加できるほどの知識がない。これは……やばいのでは?


みぞおち辺りがキュウーとしぼむ感じ。焦燥感っていうのかな、会社でエリートの参加率が高かった会議に入っちゃったときと似てる。


「そうね、今日は一回しか振ってないから……センジくん、サイコロって何回振ってもいいの?」


「ぇあ! っはい! おそらく規制はないですっ あと今回についての資料ございますでしょうかっ」

「え、ええ。……これでいい?」


へへ、急に話しかけられたから上司にいうみたいに応えちゃったぜ。ぽかんとした顔でディアナさんがみてくる。ちょっと恥ずかしい……。


ディアナさんが出してくれたのはA4サイズの布に描かれた地図。手書きなのでほのぼのした雰囲気がある。


「テコオ国の南方の地図だけど、カーノアクルア国も少しかいてあるわ」

「ここが現在おりますグァマーツァです」


地図の真ん中より左の黒丸をフレトラーさんが指し示してくれる。


異国文字のうえには例のピンク色の日本語が浮かび「グァマーツァのまち」と書かれてた。このピンク……女神の煙と同じ色だ。


さらに左端にはすこし大きい黒丸「ヨズコハマーンのまち」があり、ふたつの間には赤い線が引かれてる。


「こちらは国境です。明日はここを越えヨズコハマーンの先まで行くのが理想かと」


ふむふむ。そんなに遠そうじゃない。


「ワイルドウルフに乗れば今日と同じくらいでいけそうだ」


あいつらは速いしかっこいい頼りになる。なにより癒される。ペットの許可証みたいのってどこでもらえるのかな。


「そのことだけど、」


もう飼う気で首輪の色とかエサを考えてるおれに、真剣な目でディアナさんが話しかけてきた。声をひそめて内緒話するみたいに顔をテーブル中央によせた。


「あのワイルドウルフたち、森へ逃げていくときには額の紋章が消えてたわ」

「へあっ?」

「我々を送り届けるという役目を終えましたからな、森へ帰ったのです」

「やっぱり。街について契約が解かれたのね」


ディアナさん、なんで納得できるんです!?


「じじじ従魔ってずっと従魔じゃないの!?」

「従魔とは、人 と 魔 との間で結ばれる契約ですので条件が達成されれば基本的に解放となるのです」

「じゃあ明日はワイルドウルフいないの……?」

「はい、そうなりますね」


うおおおおおマジかよ。


「どうしたらもう一回契約できるんですか?」

「再度ワイルドウルフと従魔契約するしかないですね」

「契約ってどうやるんです?」

「使徒様はご存じないので?」


しらない。


「うーむ……」


腕を組んでうなるフレトラーさん。


「センジくんてテイマーじゃなかったの?」

「違うとおもいます。野良猫には距離を取られるタイプですし、実家の犬しか仲良くしてくれなかったし……職業でテイマーはゲームや物語世界にしかいなかったです」

「そ、そう……前半はともかく、テイマー職のないところだったのね」


実家の犬を思い出してちょっとホームシックになってしまう。

ディアナさんが慰めるように腕をさすってくれる。


「うーむ……そうなると、ワイルドウルフは神具の力によって契約できたのでしょう。明日、試してみてはいかがでしょうか」

「そうね、明日あの子たちを探してみましょう? 騎乗して行くのが女神との条件だったようだし、テイムできるはずよ」


めっちゃ慰められてる。いい大人なのにこれは恥ずかしいぜ……


「は、はい、ありがとうございます! 試してみないとですね!」


情けなさと羞恥に顔真っ赤にながらも笑うとディアナさんが果実ジュースを奢ってくれた。

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