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えきまえに集合!

びっくりした。


帰ろうと思って振り返ったら森だった。

鬱蒼としたザ・森!って感じの森。ちょっと理解できない。


おれ、海で流されたの? こんなロケーション沖縄でしか見たことないんだけど、沖縄まで流されたの? 神奈川から?


「街も店もない……」


おれが訪れた海はたしかに無人だったがこんな自然を売りにした海岸ではない。道も広くて車も通ってたし、海の家だって季節がら閉まってたけど存在したし、ホテルもあるから夏はすごく賑わうんだ。


駐車場も自動販売機も、電柱もみえない。



「どうなってんの」


すごい流された説が濃厚だけど、頭にちらっとよぎる可能性がある。ネットでみかける都市伝説系ホラーで、終電乗ってたら死者の国みたいのに来たとか、エレベーター降りたら霊界だったとか……


「こえええええ!」



ああいうのってどうやって現実に戻ったんだっけ?

現地のやさしい人にアドバイスもらうんだっけ?


うわ、じゃあ人探さないと……


無人島じゃないといいな。あっ無人島かもと思ったら恐怖心倍増しちゃった……


海岸線をおそるおそる歩いてたはずが、いつの間にか走り出してた。こわい、こわすぎる。

足を止めたら死ぬんじゃないかと思えて、それがさらに恐怖を煽ってくる。セルフで怖さレベルをあげてる? しってる! でも一回思いついちゃうと頭から離れないんだよ! こわわわわわ!




無我夢中で走ってたら少し先に街らしきものが見えた。

ふつうの事務系サラリーマン3年目のおれの足は軟弱で、すぐに走ってるつもりが歩くより遅い速度になっていた。正直たすかった。浜辺ダッシュつらい。


へひへひ言いながら、やっとの思いでそこへ着く。




木造の住宅というか小屋?と住人らしき色黒の人が数人。

外国人っぽいなあ。


「あら、どうしたのおにいさん。モンスターにでも襲われた?」


モンスター◯◯ターみたいなコスプレした女性が話しかけてきた。イベント会場なのかな。胸の圧がすごい。


「あっあっいえ、あの、」


ちょっとコミュ障っぽいとこでちゃったぜ。


「うん?」

「あ、あの、ちょっと道に迷って、いやまず、ここどこですか?」

「ここはハンマーマーツォ村よ」


くいっと女性が親指でさした先にはDIY感がある木の看板。

見たことない記号の羅列が彫ってあって、読める気配などないんだけど


「ハンマーマーツォ村のえき……」


記号にかぶるように半透明のピンクの日本語が浮き出ている。というか文字が浮いてる。プロジェクションマッピングとかいうやつかな?


「すごい技術ですね、イベントですか?」

「? ごめんなさい、わたし、村の人間じゃないの。依頼があって寄っただけだからわからないわ」

「?」

「?」


お互い首を傾げる。

しばし見つめあい、女性がふと眉根を寄せた。


「あなた……大丈夫? もしかして頭打ってたりしてない?」

「え、や、どうでしょうか、ちょっと溺れたので」

「やだ! そうなの……かわいそう。自分のことはわかる?」

「あっはい、おれ、ぼくは」


「使徒様」


ガッと後ろから肩を掴まれた。


「へあ!?」

「お探ししました使徒様。無事にお会いできてよかった。私は今回お仕えいたしますフレトラーです」


すごく真面目そうで、むっきむきの男性がいた。

そしておれに向かって一礼。ひええ。


「ど、どうも……」


反射的におれも一礼。


「連れのかた? よかったわね、その人僧侶でしょう」

「えっ知らない人です」


そばにいてくれたコスプレ女性が目を見開く。そしてまた眉を寄せておれの真横に立った。 おおおおおおっぱ、おっぱひ……おむねがおれの二の腕に触れそうでふれない距離に!


「彼、頭打ってるみたいなのよ。あなたは事情をしってるの?」

「そちらは女神の使徒様だ。我ら教会は神託をうけ、私がお迎えにあがった」

「そうなの?」


こちらに向かって確認をとってくれる女性。不安そうな、不審そうな、おれを心配してくれてる顔だ。


「ちょっとよくわからないんですが、これを届けろって女の子に言われました」


御猪口をポケットから取り出してみせると、フレトラーは笑顔でうむうむ頷き、女性はさらに眉を寄せた。


「まさに、まさに」

「木のカップにしか見えないけど?」

「聖魔法がかかっているからな。しかし使徒様、無闇に晒しては無用な輩を呼び寄せるかもしれません。普段はおしまいください」


あ、はい。

ぎゅっとポケットにいれる。


「では、さっそく出立いたしましょう。神具はお使いになりましたか?」


え、なんすか?

なんか話が進んでるけど出立ってどこに行くんです?


「待って。わたしも行くわ。なんだか心配だもの」

「心配などない」

「ね、わたしも一緒でいいわよねっ?」

「ハイ!」


ぎゅっとオンナノヒトが腕にくっついてきた。オンナノヒトのムネが、ムネがくっついてる……!

あひゃあ!

尻も! 尻にもつんつん感触がある!

なんだ! オンナノヒトはナニを尻に押しつけてくれてるんだ!



「ワウ!」



大きめな犬がおれの尻を嗅いでた。

しゅうごう~!

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