四日目最終日
長い足とツンと伸びた鼻と耳、なびくくらいフワフワした白い毛。ワイバーンと同じくらいデカイけど、あれは間違いなくシロだ。
「シ、シロ、シ、うぐぅー……」
昨日から心配して胸が痛くなるくらいだったシロが目の前にいるのが、なんかわからないけど泣けてきた。
口にワイバーンの首くわえてるけど可愛い。もうシロが無事だったならなんでもいいよ。
「使徒様!」
フレトラーさんがおれの頭上にシールドを張ってくれる。
視界の端ではディアナさんがワイバーン一匹を相手取ってジャンプからの膝蹴りとかしてるけど、おれはシロから目が離せなかった。
ふわりと降りてきたシロはワイバーンをペッと口から離す。おれたちの前でぐったりしてるワイバーンを挟んで尻尾を振りたくってる。
「くれるのか?」
「アーーン」
おおー鳴き声が響くようになったなー。
「使徒様、神具をお使いになられては?」
「あっなるほど」
「アーーン」
サイコロを取り出してすぐそこにあるワイバーンに当てた。
特に変化なし。いちおう従魔になってんのだろうな。
「ありがとな、シロ」
「アーンアーーン」
ひと声鳴いて再び空へ。
「シロって飛べたんですねー」
「あの様子、あの魔力、シロはおそらく……ハァ!! オゥラァー!!」
上空にいた二匹のうち一匹が降りてきて太い尾を振り回したのを、絡め手でとり、フレトラーさんはそのままビタン!ってワイバーンを地面に叩きつけた。こわ! どっちもこわい!
でもサイコロ投げちゃう。二匹目ゲットだぜ。
あとフレトラーさんは“おそらく”の後もちゃんと言ってくれよ、シロどうなっちゃったんだよ。
上空ではシロとワイバーンがガアガア鳴き声上げあってる。威嚇しあってるっぽい。
「センジくん! この子も当てちゃって!」
どういう経緯か腹をだして仰向けに倒れてるワイバーンと、いい汗かいたふうのディアナさん。乱れた髪とかセクシーだけど、なんかもう純粋にドキドキできないよね。恐怖がまざっちゃうんだぜ。
「アオーーン!!」
残った一匹は地上の惨劇をみてかシロに押し負けてか、グアグアか弱く鳴いて逃げていった。
勝ち誇ってるシロがかわいい。
「フレトラーさん、シロはどうなったんですか?」
おれのとなりにおすわりして体をこすり付けてくるシロを撫でる。温さとかふわふわさとか、やっぱりシロだなー。
「シロは大精霊になったのです」
「え⁉」
「シロちゃん精霊だったの⁉」
そ、そう、たしかにまずそこも気になる!
「おそらくオーヴナーン村の時点で大精霊になる準備は整っていたのでしょう、魔力量はあそこのレベル帯では異常でしたから。そして言い難いのですが……」
フレトラーさんが気まずそうに言い澱む。な、なんだ、気になりすぎる、言ってくれ!
「オーヴナーンは水の気が多いのですが、シロは水と風の気が強いようなので、風の気が多いここ・オズタハクナワラへの移動するために使徒様に取りついたのかと」
「なっ! 移動のために取りつくって、」
「……はい、使徒様を利「めっちゃかしこいじゃーん!」
「シロちゃん頭いいわねー!」
わしわしわしわし!!
ディアナさんとおれですごい撫で回しちゃった。
「アーーン」
ペロペロ舐めてくるシロ。かわいいなぁ。
「ほんとにもう大丈夫なのか?」
「ええ、あれだけ負かしてやったんだもの、もうオズタハクナワラを襲うことはないと思うわ。三匹は連れてっちゃうし」
「そうか、ありがとな冒険者さんよ」
羊と避難してた牧場主さんに説明したところ、ワイバーンを連れて街の中の移動は住人に怯えられるってことで外回りを勧められた。
外壁にそってぐるりと街の入り口に着く。
でかいワイバーン三匹と白犬に警戒した門番にも説明するとお礼をいわれた。
従魔になったワイバーンは大人しくて良いモンスターにみえるから神具ってすごいな。
「それじゃ、サイコロ振りますねー」
ぽい! コロッコロッ………
「「「 6 」」」
おおー! 今までで最高の出目じゃないか!?
ワイバーンに羽織を巻いて手綱みたいにしてもらう。
よいしょ、と跨がると翼があるから長座姿勢みたいになったけど乗り心地はよさそう。低反発クッションみたい。
「よし、じゃあ行こうか」
「アーーン」
シロはひと声鳴いて空気に溶けるように消えた。
「シロ……」
「オズタハクナワラの大精霊となったのです、またこちらへ来れば会えるでしょう」
「そっか」
きのう嗅いだ花の香りがした。シロの新しい住処に咲いてるのかな。
「センジくん」
「はい、行きましょう!」
声をだすとワイバーンは垂直に羽ばたいて上空へ登っていった。




