少年キアリノ冒険者を目指すⅡ
「た~の~も~!」
冒険者達の活気づいた喧噪を期待してキアリノはギルドのドアを力いっぱいに開けた。
しかし、その期待は裏切られた、喧噪どころかほとんど物音さえしない、
がら~んと閑古鳥が鳴いているといってもおかしくはない。
そんな中、受付と思われるところには年齢不詳な女の人が居た。
「あ、あの~ 冒険者ギルドってここでいいんですよね?」
「んっ?そうだよここは一応冒険者ギルド兼宿酒場だよ」
「えっ!? あ、あの他の冒険者の人たちは?」
「いないよ、冒険者時代の人たちはもう現役引退の歳になってるし、今時の連中は命懸けでお金を稼ごうなんて根性持ってる人なんていないさ
まぁ、それでも残った連中も今は殆ど別の島に出稼ぎに行ってるよ、ここら辺はあんましモンスターがいるわけでもないし」
「そ、そんなぁ 俺の輝かしい冒険者デビューをする記念日が・・・」
「んっ 君、冒険者になりたいの?」
「そ、そりゃあもちろん! そのためにポンニチ島からわざわざやってきたのに」
「えっ!?、ポンニチ島って・・・たしかどの大陸からも中途半端な距離にある、地図で言うと隅っこに書かれてるあのポンニチ島のこと?」
「そ、そんな人の故郷を遥か辺境の人類未踏の地みたいに言わないでくださいよ!、緑と自然と動物たちがあふれる良いところなんですから!」
「い、いやゴメンゴメン、そ、そうだよね、そんな風に言ったらそう思われるよねご、ゴメン・・・ね」
「そんな笑いを堪えてる顔で言われても、説得力ないですよ! ま、まぁ確かに少々田舎だとは思いますけど・・・」
「悪かったよ、じゃあ君は冒険者試験を受けに来たってわけだね?」「そうですよ、冒険者になるのが俺の夢なんですから」「ふ~ん」
そういって、受付の女の人はキアリノの全身を一通り見回した、整った顔立ちの女性に見られるのはさすがにキアリノも照れる
「一応確認するけど、冒険者っていうのは常に危険と隣り合わせになるよ、最悪命だって落とすこともある、それでもキミは冒険者になりたいのかい?」
「あぁ、俺の住んでる村にだってモンスターは出るんだそれくらい覚悟してるさ」
「ホントにそれだけかい?君が冒険者になりたい理由は」「・・・今まで生まれてから16年間、自分の生まれた村と島の中心部くらいにしか行ったことがないんだ、
昔読んだ本にあったような心躍るような冒険をしてみたいってのもあるよ、これからの人生いろんな世界を見て回って、経験して自分の世界を広げ行きたいのさ!」
「ぬ~ん」受付の女の人はまっすぐにキアリノを見ている。その本心を確かめるように、
「まぁそれくらいでいいでしょうリカユ、あまり将来有望な冒険者候補を困らせるものではないですよ?」
「ジージョ支部長・・・」「えっ、支部長!」
光の届かないギルドの奥の方からその声は響いてきた、確かにこのリカユと呼ばれた女性は支部長と呼んだのである。
「は、初めましてギルド支部長! オレ、いや僕はポンニチ島から来ましたキアリノというもので・・・」
徐々に光が差してきたギルドの奥の方から現れたのは、屈強で鱗に覆われている体をしていて、その頭部と思われるところから獅子の牙を思わせるような立派な牙、
爬虫類特有のギョロっとした目をした体調2.5メートルはありそうな伝説上の竜のような見た目をしている人だった。
「・・・ハ、ハハハッ・・・」乾いた笑いと共にキアリノは信じられないものを見たショックで視界をブラックアウトさせるのであった。