少年キアリノ冒険者を目指すⅠ
「お~い!、そこの坊主!そろそろ港が見えるぞ~!」
「ホントかいオッちゃん!」
穏やかな海を船が進んでいる。そこに乗っていた少年「キアリノ」は、船長に待ちきれないとばかりにそう問いかけた。
「そんなくだらないことで嘘なんかつくかよ!ほれ、もう見えてんだろ!」
「ホントだ!いやぁ~立派なところだねぇ~」
それなりに鍛えて見える体つきをしているこのキアリノという少年、年齢は16歳、太陽の光を浴びて輝く金髪が眩しいまぁまぁ整った顔をしている。
16歳でありながら少年のような心を持っており、いまいち大人になり切れない難しい年ごろの彼は、小さいころ読んでいた本にあった勇者とか賢者とかそういったものに憧れていた。
その夢を捨てられたんかった彼は冒険者を目指したいと思うようになった。
しかし、彼の両親は反対しました。
「そんな危険な事を許せるわけないだろ」「そうよ、いくら平和な世界になったといっても、命を落とす冒険者だっているのよ」
「俺だって、そんな生半可な覚悟で言ってるわけじゃないよ!ここら辺はあまり被害がないけど、モンスターがいないってわけじゃないだろ!
旅をして、いろんな経験をして、強くなって、俺はこの村を守りたいんだよ!」
そんなこんなあって両親をやっと説得した彼は、住んでいたポンニチ島を後にして、冒険者の認定をしている大きな町にやってきたというわけである。
「ついに来たぞセントラルアイランド!ここから俺の冒険者としての人生が始まるんだ!」
「ほぉ、坊主 冒険者になるのか?」
「あぁそうさ といっても、もし試験に落ちたら素直に帰るって条件だけどね」
そう、それがキアリノの両親がだした条件であった。
この冒険者という職業はそれなりに人気と恩恵がある。なにせ命が掛かっているのだから国からそれなりの援助がある。
モンスターを倒したのならそれなりの報酬が与えられるし、様々なものが融通される。
しかし、いくら腕っぷしが強いとか、頭が良いとかでもその地位を悪用する人が出てきているのも事実である。
故に、冒険者に相応しいかを試験する機関が存在する。それが冒険者認定機関、通称「ギルド」である。
ギルドは冒険者に相応しいかを試験し、その試験に合格しない限りどんな有能な人でも、冒険者としては認められない。
またこの試験は非常に難しいらしく、合格率は非常に低いらしい。
それを聞いていたキアリノの両親はキアリノに試験を受けることを許したのである。
「ガハハ!そうかそうか、最近は冒険者になりたいって奴は減ってきてたんだがな」
「ええっ!?、減ってきてるの!?」
「そりゃあ命懸けだからな、いくらそれなりの褒賞があるって言ったって死んだら元も子もねぇからな」
「そうだったのか・・・ちょっとショックだなぁ」
「まぁ、俺は応援してるぜ! ほらあそこに見えるのがギルドだ 無事に冒険者になれるといいな!」
「ありがとよ、オッちゃん! じゃあ行ってくるぜ」
船を降りてそれなりに久しぶりの大地を踏んでキアリノは背を伸ばした。船は嫌いではないがやはり地面の上に立っていたいと思うものだ
ギルドの正面まで来てキアリノは建物を見上げた、教会に似ているような、市役所に似ているような変わった建物である。
その建物の看板には冒険者を表すエンブレムが掲げられている。ここから、キアリノの試験は始まるのである。
キアリノはゆっくりと息を吸って吐いた、そして意を決してギルドの建物の扉を開いた。
「さぁ、イ・ク・ゼ!!」