第五点五話 己の運命さえも永遠に知ることができない、ある男達のヒトリゴト
最速なんじゃないですか!?
最近、本題からのそれに関係した中間を書くのにはまってしまいました
アルジ=アルフォード=マサムネ
俺の名だ。星読みの王子とシロウ師匠からは、アルジ。星読みの乙女の会員からは若旦那と呼ばれている。
住んでいる場所はベルクムント東地区、第四居住区域の端。ただ、俺は親の顔も、出身地も知らない。今覚えてる記憶の中で一番古いのは、何年か前に、果ての草原で裸で立っていたことだ。立ちっぱなしでいたとき、アルフォード・シロウ・カシワギに助けられた。
その後彼が、黒ローブの異端児として、ベルクムントにおさまらず、ヒューゲル国にまで知られているということを知った。
助けた代償は、会員が沢山いるのに、王位後継者がゼロの、星読みの乙女、王子になることだった。
そのお陰で、俺は次期星読みの乙女王子の若旦那となったのだ。
しかし、嫌というほどでもなかった。輪廻転生という不思議なことを信じている集団だったために、少しばかり興味が湧いたからだ。
六道の世界では、必ず新規魂は、人間道に強制的にいかされるらしい。そこで何年か過ごして死んだら、次は修羅道へ強制送還。とまあ、決められた順番に回っていくらしい。
だがしかし、六回死んだら、輪廻転生旅行は強制終了させられるらしい。
ここで矛盾。修羅道では死んでも生き返ります。これが輪廻七不思議と呼ばれる物のひとつ
「一つ、六回の転生において起こる、順序転生において発生する修羅道転生と他道転生の矛盾」
輪廻七不思議総集より
俺はこの、根拠がなくて説明できないけど、どこか信じられる感じがたまらなく好きだ。
この本をみたとき、俺は、初めて星読みの乙女をまともな団体だと思った。
ヒビキド タイチという男に会ったとき、俺は何か運命を感じた。
名前が、ベルクムントにはいなさそうな名前で俺の名前にニュアンスが似てるところとか。
それからというもの、彼とはよく酒を飲むようになった。
すごく神秘的なのに、現実しか見ず、それ以外を否定してきた者達の一見正論そうな言葉の集合体や一般論に押し潰されてきた、理論や噂を一晩中話したり…。
彼と、ここでできた最初の友達になった。
ある日、俺は酒の飲みすぎで倒れたことがあった。意識は朦朧とし、体の痙攣と頭を金槌て叩いたような、響く痛み。
何故かだんだん夢心地になって、俺は………
果ての草原に一人立っていた。
静謐な空間も嫌いではなかったが、柔らかい風に流されながら囁く、草の歌はとても心地よかった。
柄でもないが俺は以外と叙情的な人間だ。
果ての草原からベルクムントへの帰り道は知らない。シロウが来ないと帰れない。
その時俺は、ただひたすら、シロウの迎えを待っていた。
来るはずないのに……
何か来る予感がずっとしていた。
根拠のない説明に自分勝手な意見を切り貼りして、肉付けするのは俺の得意技だったが、シロウの迎えを待つことに関しては、何もしないでシロウの迎えに来る意志を信じていたかった。
もちろん、いつまで立っても来なかった。
草は同じ歌しか歌わないし、風は音もなく通りすぎていくから、待つことはとても苦痛だった。
いつしか、ここには関係ない人の名前すら呟くようになっていた。
俺は…待つことしかできなかった。
夢は長かった。果ての草原での思いでなんてたいしてないのに、まるでそこが自分にとって大切なところだと錯覚するようになった。
そして、「魔王の狩場」とも呼ばれる果ての草原に足を踏み入れた。
一週間後、俺はヒューゲル国の兵士に、死体として運ばれたらしい。
と、死体の辺りはヒューゲル国から帰国したシロウに聞いたのだが、さすがにシロウも驚いていたよ。
そして俺は一つ思い出した。
忘れていた俺の過去を。
俺は、一回死んだ。
あと、残機は五。
俺は、人間道に再び転生した。
順序など関係なく。
俺は抗った。
何にかって?
ルールにだよ。
俺もまた、自分を知らない
アルジが独り言をいっているのを聞いて、俺も思った。
子供の頃の記憶なんてない。親の顔も、出身地も。俺は気づいたとき、
果ての草原に立っていた。
裸で
最後のヒトリゴトは誰でしょうか!?