第四話 異世界転移中
間が空きました。ほかの作者様を読んでみて、短いものを高頻度で掲載されている方が多かったのでその方針に切り替えようと思っている次第です
「ということがあったという噂じゃ」
「最強の能力をですね。魂が予測不能な行動をした時に得られる能力…。憧れる」
「それがお前なんじゃないかと思うんじゃよ」
「秘められし力…。俺は潜在能力を覚醒させることができるのか?」
「まあ、そんな感じじゃよ」
「やるしかない。やってみるぜ俺!」
「具体的な想像はそう容易いことではない。違う場合の方が多いし…」
「俺はやるぜ!だって…」
「だって…?」
「人生の中で俺は、最強の主人公を演じたいからだよ!!」
いつこんなテンプレセリフを知ったのか、ヒビキはキャラが激変したようにイケメンなセリフを吐いた…吐いてみたかった。花畑の中いきなり立ち上がりガッツポーズ。大賢者はさすがにこの姿と勢いに引き気味だった。
「考えてみたら異世界転移なんてかっこいい響きじゃねぇか!」
「わたしはお前に賭けてみよう。失敗してもどうせ周りから白眼視されるだけだ。やってみろ。久々に心から期待できることがあって少し楽しいからな。できなかったらお前はここに来ることはもうないだろう。だってここはお前の期待した場所ではないからな。あそこと同じように…」
「えっ?どゆこと?何言ってんの?おい!な、なんだこの感じ」
周りが暗くなる。大賢者の姿も花畑の様子もだんだん見えなくなる。
ピアノが単音でなる。
あれはドの音だろうか?あまり楽器に触れないヒビキにとって調音はいささか難しかったようだった。
いつの間にか真っ暗な世界に立ったまま取り残されていた。
「俺、死んだのかな?」
疑問とは尽きない物である。
「悪かったなアルビーネ。男の裸体など人生の中で数少ない体験だろうが初めてが私だなんてな…ふっ」
「謝るところ違うと思います。あと誤解を招くような言い方はやめてください。男性の裸体に興味はありません。安心してください」
「ふふふ。まあ、変なところに連れてきてしまってすまない。私には謝って元いた刑務所に戻すことぐらいしかできないが…許してくれ」
「あなたに怒ってはいませんよ。あとあの肩書…研究会会長どうのこうのっていうのは本当なんですか?」
「ああ。本当さ。ただそれしか言えない。超機密事項なんでな……。まあ名前くらいなら…私の名前は、カシワギ シロウだ」
「カシワギ…シロウ?ヒビキみたいな感じの名前ですね。親近感あって親しみやすい名前です。よろしくお願いします」
「よろしくな。でも会うことはないだろうが…。ではお前を返そう」
「お願いします」
「転移~。えーと刑務所?まあそこらへん」
「え?刑務所ってなんですか!」
言うや否や、あの強風が体を包み、視界が歪む。
轟
「いてっ。最悪。ここあそこじゃねーか!!」
再び刑務所送りにされたメルは嘆いた。ご丁寧にすべてきれいに建物が直っていたので、脱獄しようなど通用せぬ考え方だった。
と、その時だった。
「あー寝みー。なんだ何処ここ?」
聞き覚えのある気が抜けた声。
「あ、刑務所か!そうだそうだ図書館で違反したかなんかで捕まったんだ!」
該当者は一人。
「ヒ、ヒビキいるんですかー!」
「その声はメルか!超久しぶりな感じだ!」
「よかった!無事なんですね!死んで昇天したかと思いましたよ」
「ははは!そんな…わけ…」
「どうしたんですか?」
「なあメル。もう一回やってみないか?」
「馬鹿ですかあなたは!それやったからここにいるんでしょうが!」
「いや、違うんだ。俺今さっき…」
ヒビキはこれまであったことを事細やかに説明した。できるだけわかりやすく、できるだけ「ヒビキはヒーローです」感をだして。
メルは意味不明なところを数ヵ所残しながらも、シロウが言っていた、「牢屋にお前以外いなかったぞ」という言葉に納得した。
「あなたの話をかなり要約すると、六道を自由に旅行できるってこと。その根拠は噂である魂の話が自分っぽいってこと」
はっきりしない根拠ではあるがヒビキの真剣な眼差しをうかがうと、言っていることがすべて真実味を帯びていた。何故か彼が該当者な気がする。
「やり方もわからないのに?」
すると、ヒビキが不敵な笑みを浮かべる。
「お戯れを。貴殿はすでに刑務所どころか別世界にいるではありませんか」
激しい鉄同士のぶつかり合う音。鬼の形相をした者達があげる雄たけび、飛ぶ血しぶき。倒れてもなお戦い続ける肉塊。赤い空には黒い雲。荒野での出来事らしい。
「てめーなんてところに連れてきてんだ!!!!」
「あ?え、な、何ここ!!!」
「こっちが聞きてーよ。なんだここ!!」
メルは冷静を欠いた。もう何が何だかわからない状態。
「ひでー有様だここはどこなんだ」
ヒビキがそんなことを呟いた時、
「おいお前ら!サボってんな!死人の武器を使え!!」
筋肉隆々で、薄い布一枚を羽織った巨漢が物凄く低い声でヒビキたちを怒鳴りつけた。その男はそのまま雄たけびをあげて敵の集団に突撃する。
「メル。とりあえず逃げよう。あそこに洞穴があるからあそこに」
メルは気絶してぐったりしていた。
「ったく普段は強がりやがって!」
メルを担いで戦域の奥にある洞穴めがけて走る。
「こんな世界想像してねーぞ!!」
集団に突撃した時、鈍い音がした。
後書きにストーリーの復習みたいなものを書いている方もいるみたいですね
次回もお楽しみに