奇想天外
ここはどこ――
「たとえばそう、ゲームの中で」
そんな言葉が上か下かどこか分からないところから掛けられる。
ここはどこなのか、何なのか、全くわからない状況下で一人、暗闇の中に立たされている気がする。
「やあ、いらっしゃいお客さん」
すると突然、前方に巨大ながらす面が僕の前に現れた。
もにたぁとは違って、端の方を見てみると像にぶれが見えているから多分がらすだ。そうすると、声の主はそのがらすの奥、つまり僕の前にこちらに背を向けて立っている青年と考えるのが妥当かな。
考えていると、声は再び語り始めた。
「魔法陣を目にすることがあったり、異界へと繋がるゲートから閃光が飛び出てくることがあるだろう。種類によっては【儀式】を司る獣なり人なりがキミのサポートをしてくれるかもしれない」
青年が指を鳴らすと、巨大な魔法陣?の四隅に置かれている希少そうな石から中心に向かって朱色のれぇざぁが放射された。中央で相殺しあうと、その光線は向きを変え、今度は縦にどこまでも伸びていく。
先端が天井に触れるか触れないかのところで再び青年がぱちんと指を鳴らすと、収縮しながら一度球状にまとまった後、拡大しながら成形されていき――気づけば魔法陣の上空には真紅の光を帯びた六芒星が浮かび上がっていた。
「この召喚陣は、ちょいとばかり特殊でね」
青年の口調は如何にも説明慣れている感じだ。今も青年の饒舌が途絶えることはない。
体格からして15歳くらいの男性だろうか。白色の厚手の綿布を身に纏い、腰には黒色の帯を巻き付けている。格好がそうなのでどうしても違和感がある。
そういえば、柔道と呼ばれる伝統的な競技が僕の国にはあって、必修科目として授業を受けさせられたこともあった。そのとき、あんなような色合いの少し重めの専用着に着替えて、裸足で投げたり落としたり胸倉掴まれたり足ひっかけられたりしたような気もする。
意識を前に戻してみると、ガラス張りの上にはいつの間にか文字列が並んでいた。その文字列は現在進行形で入力されているみたいで、斜めのアングルから見える青年の口の動きと連動しているように見てとれる。
指を上の方にすっとすわいぷすると、ずらーっと予想通り文字列が出てきたので慌てて元に戻すことにした。
「うん、どうやら君は思った以上に壊れていないみたいだ。どうだい、いっちょ試してみる気はないかい? 何をって顔してるけど――あ、こちらからももちろん見えているからね、質問の答えは自分で考えるといいさ。たぶん、今のキミならその答えが、私の考えるその答えと合致するはずだからね」
青年は僕に対してそう問いかけてきた。
どうすればいいのだろう。
何をするにも、何もかも曖昧で分からない。
そもそも、質問を投げかけてくるなんて思わなかった。それでもすぐ答えないと失礼かもしれない。
けれど、もしも僕がここで笑顔で黙りこくったら、どんな反応をするのか見てみたい。
だから、よくわからないから、そのことをいいことにして、黙って画面をすわいぷするんだ――――。
僕には分からない。