来襲
現れたのは熊であった。
しかも、かなりの大きさである。
「逃げろまっちー! 俺が時間を稼ぐ」
しかし、体格の差は歴然である。
攻撃を食らったら一溜まりもないだろう。
今度こそ死ぬかも知れない、そうタナカが思った時、まっちーが叫んだ。
「時間をできるだけ稼いで下さい!」
妖精は急いで下のフロアに向かい、依頼主の元へと向かった。
「ん? どうした」
「テレビを見てる場合じゃないです! 熊が巣を狙って現れました。 もし、あの巣がミツバチのものでないと分かったら、熊は逆上して襲ってくるかも知れません」
依頼主は青ざめた。
「く、熊!?」
「でもご安心を。 勇者なので、報酬を上乗せすれば熊を退治します」
「……分かったよ。 倍額払おう。 ただし、絶対熊を追い返すんだぞ!」
確認を取り、すぐさま屋根裏へと戻る。
そこには、床に伏せているタナカの姿があった。
タナカは目をつぶって死んだ振りを決め込んでいる。
「クンクン」
熊が匂いを嗅ぐ。
(も、もう駄目だ!)
タナカが死を覚悟した瞬間、まっちーは蜂の巣を鷲づかみにし、投げた。
グシャリ、と熊の顔面に命中すると、中から大量の蜂が姿を現した。
蜂の攻撃を食らった熊は、慌てて来た穴から引き返した。
「もう大丈夫です」
「えっ? な、何が起きた? まさか、また俺の魔法で……」
「いえ、今回は私が巣を投げつけて追い払いました。 多分蜂の方も、私のことを仲間だと思って攻撃してこなかったんでしょう」
確かに、同じ羽を生やしたもの同士である。
こうして、スズメバチの駆除及び、熊退治は終了した。
10000Fを手に入れた2人は、報酬を山分けすることにした。
「8対2で、私が8ですね。 本来なら私の総取りですが」
「たった2かよ! くそ、何で魔法発動しなかったんだ……」
まっちーがプリンを買うために外に出ると、看板が倒されていた。
「倒したら元に戻して欲しいですね!」
少し怒りながら看板を立てると、妖精は驚いた。
看板に、バカ、ニセモノ、などという言葉がスプレーで書かれていたからだ。
「これはヒドイ! 誰がこんなことを!」
「俺だよ」
後ろを振り向くと、青い鎧を身につけた男がいた。