ネズミ
いつまでもマシュマロを食べていたい妖精であったが、それよりも優先すべきは例のプリンであった。
しかし、このゲームの攻略条件が分からないので、とりあえずは村で情報収集をすることにした。
ところが……
「あの、このゲームはどうしたらクリアになるのですか?」
「ひ、ヒイッ」
村人はみな怯えて話を聞いてくれず、しかも子供が暴言を吐きながらマシュマロを投げつけて来た。
「ば、化け物めっ!」
妖精はそのマシュマロを口でキャッチした。
「ひ、ヒイッ」
「いや、そこ、驚くとこじゃないですから。 でも、仕方ないです。 もっと別な街で情報収集しないと…… あと、この力はむやみに人に見せない方が良いですね」
妖精は村から出て、辺りを見渡した。
周りは草原地帯で、遥か向こうに山、森、そして高い塔が見える。
「あの塔を目指すことにしますか。 あそこなら、街がありそうです」
妖精は塔を目指し、歩き始めた。
この世界のマップはかなり広大で、どこまでも進んでいけるオープンワールドであった。
通常のプレイならのんびりと自然を感じながら歩くところだが、妖精には時間がない。
「……私にしかできない移動法ですが」
妖精は自分の服を掴み、腕の力を使って自分自信を投げ飛ばした。
ビュウン! と物凄いスピードで空を飛ぶ。
「これは快適ですね! この移動法、「瞬☆歩☆」 と名付けましょう」
あっという間に塔の前に到着した。
ふわり、と地面に降り立つと、そこは予想した通り、街であった。
この高い塔は電波塔で、テレビやラジオを配信するためのものらしい。
街はかなり栄えており、様々な人が道を歩いている。
「にぎやかですね。 情報収集と言えば、酒場。 私はお酒が飲めないので、代わりにファミレスで情報を集めましょう」
妖精の目的は、情報よりもどちらかといえばパフェであった。
ファミレスのパフェはおいしい。
妖精は適当なファミレスに入っていった。
「お客様、一名ですね。 こちらの席へ」
カウンターに座ると、イチゴてんこ盛りパフェを注文した。
「この待っている時間が至福です。 興奮してパフェのグラスを握りつぶさないようにしないと」
しばらく待っていると、パフェが運ばれてきた。
ゴクリ、と生唾を飲む。
「では、いっただっき……」
「オイオイオーイ! 何だこの店は! ハンバーグの中からネズミが出てきやがったぞ!」
妖精は眉をひそめた。
今からパフェにありつこうという時に、そんな気色の悪い話を聞いてしまったからだ。
しかし、騒ぎは大きくなった。
「い、いてえっ! こいつっ、やりやがったな!」
ネズミに嚙みつかれたらしい。
更に、悲鳴が聞こえる。
「キャアアアーーーーーーッ」
もはや、お祭り騒ぎである。
パフェどころではない。
妖精はパフェに意識を集中していたが、とうとう我慢できずに、クレームをつけに行こうとした。
「うるさいですよっ! って、こ、これは!?」
なんと、ファミレスの人間はみな巨大なネズミへと姿を変えていた。
これはただ事ではない、そう思った妖精は、せめて一口だけパフェを食べて逃げよう、そう思った。
しかし、数匹のネズミがこちらに駆け出してくる。
「くっ」
イチゴを食べるのが先か、ネズミの攻撃を食らうのが先か、その時、剣が閃いた。
「ギャアーッ!」
「逃げるんだ!」
そこには、剣を抜いた若い兵士がいた。