レベル
「ちょっ、あんた、この屋根どうすんのよっ!? これじゃ、吹きざらしじゃない!」
屋根には巨大な穴が開き、太陽がまぶしい。
「これは、やっちまったやつですね」
「……てか、あなた猫なのに緑だし、喋れるし、何者? 宇宙人?」
確かに空から降ってきて、体が緑色をしていれば、エイリアンか? と疑われても仕方ない。
「色々複雑な事情があるので、何か紅茶でも飲みながら話しませんか?」
「……屋根はいつか修理してもらうわよ」
プンスカ怒りながら、下の居間に案内された。
テーブルの上に飛び乗ると、ヨシコの入れてくれたミルクティーを舌でチロチロ舐める。
「あづぁっ」
ガシャン、と皿を床に落とす。
「ばっ、あなた、猫舌なんだからっ…… あーあ、床がびしょびしょだし……」
気まずくなった妖精は、このタイミングで事情を説明し始めた。
「私は、実は昨夜、列車から抜け出してきた可愛らしいレディーその人なのです。 悪徳幽霊に隙を突かれて体を取られてしまいました。 偶然あなたの所に落ちてきてラッキーです。 体を取り戻すのに協力して下さい」
「私は全然ラッキーじゃないんだけど…… しかも一気にまくし立てられたから、話の2割くらいしか見えてこないけど。 まぁ、いいわ」
ヨシコは、テーブルに置いてあった小ぶりの杖をつまむと、ステータス、と唱えた。
すると、妖精の頭上に文字が浮かび上がる。
「ふぅん、レベル1か。 これは難儀ね。 体を取り戻すには、以前のあなたのレベルより高いレベルでなければ、取り返すことは出来ない。 あなたの人間だった時のレベルは?」
「レベルですか?」
妖精は、ネズミ、熊、ドラゴンを倒していたため、レベルがかなり上がっていた。
しかし、本人が確認しなかったため、どの程度なのかは分からない。
「う~ん、ちょっと分からないです」
「……仕方ないわね。 とにかく、やれることからやりましょうか」
ヨシコは立ち上がり、ソファーを掴むと、ズズズ、とずらした。
ソファーの裏には、隠れていたネズミがいた。
「チチッ!?」
「あれを倒してレベルを上げましょう」




