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妖精の腕力賢者  作者: oga
11/25

魔法使い

 幽霊をブラックホールに収めると、隠れていた1の数字が現れ、10の数字となった。


「最後尾の車両だったわけですか」


 タナカを探し、どんどん前の車両へと進んでいくと、突然乗客に声をかけられた。


「ウェイターさん、水、ありませんか? うぷっ」


 黒のローブを羽織った中年くらいの男である。

終電と間違えて乗り込んだらしい。


「こんな格好ですが、私はウェイターではありませんよ」


「……誰でも良いから、水持ってないか?」


 男は相当酔っぱらっているらしかったが、妖精には構っている暇は無かった。

無視して進もうとすると、男は気になることを言った。


「こんな列車に何の用があって乗り込んで来たのか知らんが、水をくれたら協力してやるよ。 俺は魔法使いだからな」


 本当にこんな男が魔法使いなのか?

妖精は一応、聞いてみた。


「それなら、このわら人形の中からタナカを探し当てることができますか?」


「……メモリーの魔法を使えばいい。 相手の記憶を読み取ることが出来る」


 男が立ち上がると、懐から短い杖を取り出した。

 

「脱出魔法を使うための魔力も残しとかなければならん。 使えるのは一発だけだな」


「……なら、ここで待っていて下さい」


 




 妖精がトイレの蛇口まで行き、手に水を集めて帰ろうとした時であった。

ゲシゲシとわら人形が足蹴にされている。


(イジメですかね……?)


 こんな時、タナカなら助けに入るかも知れない。


「……そうだ、少し待ってみますか!」


 しかし、助けに入るわら人形はおらず、足蹴にしていたわら人形が去ると、やられていたわら人形に別なわら人形が心配そうに駆け寄った。


「……まさか」


 助けに入って逆にやられたのか? 

妖精はそう思った。


 


 







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