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アンダンテ  作者: くるみもち
6/10

休憩

「あなたっていつもそう! たまには美味しいの一言でも言ったらどうなの?!」


 なんか始まった……。




 ことの始まりは休憩の始まった5分くらい前だと思う。

 いつものように出されたものを隅でもくもくと食べていた。途中、なんか店長の視線を感じると思いつつもそのままにしていたら、唐突に店長の小芝居が始まった。

 その発想にも、展開にもついていけず、珍獣を見る気持ちってこんなんだろうなって思いながら見てた。


「ちょっと、無視はよくないよ。君からツッコミを無くしたら何が残るのさ」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ」

「面白い生き物」


 当然でしょ? みたいなノリで言ってくる。コイツ、ほんとこういうとこは本気で腹立つ。

 珍獣をみているつもりが、こちらも珍獣のように見られていたとは……それもそれでムカツクが。


「で、どうなの?」


 呆れた目で見てたら、真面目な顔で迫ってくる。


「何が」

「か、ん、そ、う」


 余計なことばっか考えてたら本題を忘れた。

 言葉をわざわざ区切って再度、料理の感想を求められる。

 逃げられないやつか。そう思って渋々伝える。


「……おいしい、けど?」

「けど?」


 あ、これめんどくさいやつだ。

 余計なこというと徹底追求されるなこれ。

 俺の気持ちはお構いなしに店長はさあ、答えろと圧力をかけてくる。


「おいしい」

「どこがどんな風に?」


 ほんとにめんどくさいやつだった。

 今俺なに食ってたっけ?

 すぐそこにあるが、店長から顔を背けるのも癪なので、とりあえず考えるふりでもしとくか。めんどくさい。


「めんどくさいって顔をするんじゃない」

「……どこがどんな風にってなんだよ。うまいからおいしいって言ってるだろ?」


 だんだんイライラしてきて、そんな言葉が口を出た。

 信じられないって顔をした直後、店長からわりと本気なチョップを頭にくらった。


「ってぇ~……何するんだ!」

「チョップを」

「そういうことじゃねーよ!」


 再びチョップを繰り出そうとする店長を言葉の勢いで制し、痛む頭を押さえる。

 店長は大きくため息を吐く。


「君はもう少し興味を持つべきだと思うなぁ」

「興味?」

「ダージリンとアールグレイ。どっちが好き?」


 紅茶の違いはわかるし飲める。だが改めて、どちらが好きかと問われると、どちらがどちらか、わからない。

 茶は薄い方が好きだけど。

 なんのための質問なのかも全くもって理解できない。


「俺多分、君より君のこと知ってると思うなぁ」

「なんだそれ」


 チリンチリン。


 客の知らせを告げる鈴の音に、店長は即座に反応して俺から目をそらして「いらっしゃいませ」と、客の方に向かっていく。


「君が好きなのはダージリンの方だよ」


 君は食べてからでいいからね、そう言い残して店長は接客に戻っていった。

 なんなんだ……そう思いながら食べ途中だった料理を見る。

 今日は野菜を微塵切りにしてたくさんのせたピザトーストにオニオンスープだった。それから、いつもいれてもらってる紅茶。

 どこが、どんな風に?

 食べながら考えるが、頭にはてなが浮かぶくらい、しっくりくる表現は見当たらなかった。


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