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89 猫の貸本屋さんのベスside


「お姉ちゃん、僕孤児院に遊びに行ってくるね」


弟のタイガは最近孤児院がお気に入りだ。この間まで孤児院に遊びにいく子供はいなかった。というか孤児院の子供と遊ぶ子がいなかった。理由はない。なんとなく敬遠してただけ。それがナナミという少女のおかげで劇的に変わった。最近の流行は孤児院からというと大袈裟だが......ナナミの店と孤児院から生まれてきてるのは間違いない。


「今日は何して遊ぶの? 縄跳び?」


「ドッジボールだよ。縄跳びも面白いけどドッジボールは今度隣町の連中と試合することになったんだ。だから練習しようって昨日みんなが言ってた。絶対隣町には負けられないよ!」


タイガはそれだけ言うと走って行った。

お母さんも今日は孤児院に行ってる。なんでもホットケーキの作り方を習うって言ってた。この間はポテポテサラダの作り方を習ってきて作ってくれた。とても美味しくて野菜嫌いのタイガがたくさん食べてた。ホットケーキもきっと美味しいに違いない。


「ベス、店にいないからおばあさんに聞いたらここだって聞いたから入ってきたわよ」


幼馴染のモリーが庭に入ってきた。


「何してるの?」


「昨日マジックショップナナミで買ってきた種を植えてるの」


「へー。野菜の種も売ってるんだ。この絵の野菜ができるの? 食べ方とか聞いた?」


「野菜ができたら作り方教えてくれるって言ってた。ねえ、時計売ってたよ。それに鏡や櫛もあった。欲しいけど小遣いが足りないのよね」


私は昨日ナナミの店で見た鏡や時計を思い浮かべる。するとモリーがにっこり笑って鏡を出してきた。


「えー、モリー買ったの?」


「小遣い貯めてたから買っちゃった。リボンも買ったから今度してくるね。ベスも小遣い貯めてたでしょ。あれどうしたの?」


「おばあちゃんの誕生日に家族でオールド眼鏡買ってあげることになって、出したら残りが少なくなったのよね」


そう、おばあちゃんが大好きな本読めなくなってずーっと元気なかったの。オールド眼鏡の噂を聞いてこの値段なら買えるからってみんなでおばあちゃんにプレゼント。おばあちゃんは元気になって、最近はまた店番をするようになった。


「そっか。でもおばあさんまた店番するようになって良かったじゃん。ナナミさんのおかげだよ。ねえ、ホットケーキ食べた?」


「今日お母さんが習ってるからまだだよ。」


「すっごく美味しいよ。甘いものなんて滅多に食べれなかったのにね」


モリーはもうホットケーキ食べたみたい。いいなぁ。

マジックショップナナミのおかげで食生活も変化してる。今植えた野菜ができたらまた色々変わってくるのかもしれない。

ナナミさん王都に行かないといいけど。売れてくると王都に店を移す人は多い。王都の方が儲かるから。


「ナナミさんずっとこの街にいてほしいよね。孤児院にもいっぱい寄付してるみたい。それにね、この間王都にいる親戚に言われたんだけど、最近の流行はこの街から出てるって言われてるらしよ」


モリーが得意そうに笑ってる。


「ナナミさんと友達になれないかなぁ。今は知り合いあんまりいないでしょ。そうすると王都に行っちゃう可能性あるじゃない。友達いたら行かないと思うよ」


「そうだね。私も友達になりたい。おしゃれについても聞いてみたいし」


打算だけじゃなく、本当にナナミさんと友達になりたいと思ってる。でも理由がないとなかなかナナミさんには声はかけれないよ。勇者さんがいっつも側にいるんだもん。





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