86 温泉
「うわー。本当に温泉があるよー。クリリ温泉だよ」
クリリは一緒に喜んでくれた。
「わー。湯気がたってるよ。不思議だなぁ〜」
ここまで来るのにへとへとだったけど、温泉見た途端に元気になったよ。
「あそこに動物が入ってるよ」
クリリが指差して言った。
見ると動物が湯に浸かってる。たぬきに似た動物だ。目を閉じて湯に浸かってる姿はとっても可愛い。
これを見れただけでもここまで歩いたかいがある。クリリのリクエストでの遠足だったけど来て良かった。
「あー腹減った。お弁当にしようぜ」
タケルの声です。確かに長時間歩いてたのでお腹が空いてる。クリリのお腹からは音が聞こえてきます。
百均で買ったレジャーシートを敷いて靴を脱いでから
座ります。皆は靴を脱ぐことに違和感があるみたい。
お弁当を1人ひとつ配ります。足りなかったらいけないので、ロールサンドイッチも中央に置く。ペットボトルの飲み物も一緒に並べます。
「わー。これが弁当。美味しそう」
「これが弁当ですか」
「いろいろなおかず入ってるのね。色も綺麗だわ」
クリリ、ノエル、コレットさんの第一声です。
だいぶ歩いたからきっと弁当も美味しく感じられるはず。タケルはおむすびに感動してるみたいです。さすがにお稲荷さんは作れなかったけど、百円コンビニで買ったのを入れてます。クリリの好物だからね。
「この入れ物も変わってますね」
ノエルさんが不思議そうに見てます。
「弁当箱ですよ。使い捨てのにしようかと思ったんだけど、また使うこともあるからこれにしたの。フォークも弁当用だから少し小さいでしょ? 私とタケルのは箸だけど、これも弁当用だからいつものより小さいのよ」
タケルはもう食べ終わったのかサンドイッチにも手を出してます。
「飲み物も好きなの飲んでくださいね。お弁当にはお茶がオススメだけど、好みがあるからどれを飲んでもいいですよ」
私もゆっくりいただくことにします。自分で作ってるから味気ないけどね。お母さんの弁当は美味しかったなぁ。
「そういえば、2号店はどうなんですか? 売れてるんですか?」
食べ終わったのかノエルさんが2号店の事を聴いてきます。
「どちらかというと1号店より売れてますよ。あそこは港町だからか、地元でない人も多くいるから売れ方が半端ないみたいです」
ユウヤさんが箱買いが多いと言ってます。船に乗る人は箱買いするんですね。
「ここの店畳むって事にならないですよね」
心配そうにコレットさんが聴いてきます。
「え? 畳みませんよ。私の目標はあの店を買えるくらい稼ぐ事ですからね。それに2号店とは言ってもあそこはユウヤさんの店ですから。私の店は1号店だけですよ。これからも一緒にがんばりましょう」
「「はい」」
コレットさんとクリリが嬉しそうに返事をしてくれた。
食べた後はみんなで足湯に浸かって過ごした。魔物はやっぱりでてこなかった。ほっとしたけど、ちょっぴり残念な気もした。




