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75 クリリの絵


「何が売れてるんですか?」


お昼の休憩中です。最近はお昼も開けてるので交代で休憩に入ってます。今は私とコレットさんです。


「リバーシが順調に売れてます。王都ですごく流行ってるらしいから大会とかありそうですよ」


「リバーシの大会ですか? あったらこの店の代表としてクリリに出てもらいたいなぁ」


「タケルさんの方が強いんじゃないですか?」


コレットさんは始めはタケルのことをタケル様って呼んでたんだけど、同じ店で働くのに(タケルは時々だけど)様はやめてくれってタケルが嫌がったのでタケルさんって呼んでます。


「まあ、まだタケルの方が強いみたいだけどこういうのは小さい子が優勝する方が盛り上がるのよ。タケルじゃ面白くないよ。勇者が優勝したって当たり前みたいに言われるよ」


「え? 優勝まで考えてるんですか? 結構強い人いるらしいですよ」


「クリリ私に勝ったんだから強いよ。私は国で負け無しだったんだから」


コレットさんが苦笑いしてます。どうも私は強く見えないみたいだけど、本当に強いんですよ。タケルとクリリが異常に強いから負けただけなんだけどなぁ。


「大会って王都であるんでしょう? 私も見に行きたいから、お店休んでみんなでクリリの応援に行こうよ」


「いいですね。王都で買い物もしたいわ。やっぱり服とかは王都の方が安くて良いものが手に入るもの」


コレットさんが嬉しそうに手を叩いてます。


「そうなんですか? 私もこの前クリリに引っ越し祝いの服を買った時に自分のも数枚買ったけど、似たようなのしかなかったから王都に行ったらショッピングしたいわ。コレットさん詳しそうだから一緒に行ってくれる?」


「もちろんよ。靴も色々あるからびっくりするわよ。この辺は地味なものが多いもの」


靴は女神様からもらったのをずっと履いてる。二階の部屋は土足厳禁にしてるから、百均のスリッパで過ごしてます。そういうわけで靴に不自由はしてなかったけど、この際王都に行ったら色々揃える事にします。


「ナナミさん。表に看板屋が来てるよ」


クリリが私を呼びに来ました。


「今行くよ」


クリリに返事をして立ち上がりながらこの間ショルトさんが来た時のことを思い浮かべます。



ショルトさんは税金と看板について話があると言って来ました。店の奥の部屋にあるテーブルで話すことにしました。今は金貨5枚を月に商業ギルドに納めてます。金貨1枚は商業ギルドに4枚は領主であるガーディナー家へいくのですが、私みたいにすごく売れる所はそれとは別に国に税金を納めないといけないようです。年に白金貨10枚です。売り上げの何割とかじゃないんですねと言うと、計算が複雑だと困るそうです。この世界で計算は頭の中でするから大変らしいです。そういえばコレットさんもクリリも電卓に驚いてたね。え? 電卓売らないのかって? 計算の仕事する人は貴族だけでなく数字に強い人を一般からも受け付けているので、電卓があったら一般人は雇ってもらえなくなるかもしれないというのを聞いて保留にしました。弱肉強食の世界なのだから気にするのも変ですが、電卓を売るのはもっと情報を集めてからにしようと思ったのです。


看板はクリリについてでした。獣人の従業員がいる場合も看板に目印がいるみたいです。こういうのにお金かかるから、獣人の人は店に中々雇ってもらえないそうです。差別ってどこにでもあるんですね。


「犬の絵でお願いします」


差別だーって怒っても仕方ないのでショルトさんにお願いします。


「「犬?」」


タケルとショルトさんは首を傾げてます。


「ナナミ、クリリに聞かれてたら泣かれるぞ」


タケルが頭を抱えてます。

クリリは店番してます。ショルトさんが気を使っていないところで話してくれたようです。


「え? 犬じゃないの? でも耳からして犬に見えるよ」


「どう見ても狼だろ!」


狼さんだったようです。クリリに言わなくて良かったです。


「狼の絵でお願いします」


「ではこの間と一緒の看板屋に頼んでおきますね」


ショルトさんは笑いながら言いました。税金は後払いらしいのでまだまだ先の話ですが、知らなくてお金を使いすぎて払えなくなる人がいるので早めに教えてくれたようです。



看板屋さんは外で待ってました。どの辺にするかと聞かれたので今ある看板の横に頼みました。


『マジックショップナナミ』の文字の横に狼の絵が......って犬に見えるんだけど。目に鋭さがないよ。


「わー。カコイイ絵だね」


「本当に。凛々しい狼ですね」


クリリとコレットさんには狼に見えるようです。

まあ、クリリが納得してるんならいいですけどね。










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