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56 ユウヤとタケルside



「いきなり魔法で転移するなよ。びっくりするじゃないか」


ユウヤが怒って喚いている。


「お前がなかなか帰ろうとしないからだ」


タケルも言い返す。


「あの百均ってどうみてもチートだよな。何でナナミさんはチートじゃないって思ってるんだ?」


「女神さまの手紙にチートはあげられないって書いてあったそうだ。どうもナナミをここに連れてきた女神さまは新米女神のような気がする。宿屋も用意してくれてたり小遣いもくれてる。今までに会ってきた地球人に聞いた話と全く違う。皆、着の身着のままだったよ」


「そうだな。俺が聞いた話とも違うよ。だいたい皆その時にハマってるものを能力としてもらってる。それがチートになる奴もいるけど、努力次第かな。俺は刀貰ったけど、使い切れなかった」


「そんなことないさ。その腕がなかったら、旅をして暮らしをたてるのも無理だったろう。ただ生命のあるものを殺すのが嫌になっただけなんだから」


「甘いよな。肉だって食べてるのに、自分が殺すのはためらってる。日本にいる時は剣を振り回してるのが楽しかったんだけど」


ユウヤは居合の達人だった。彼の才能は高く評価されていた。


「なあ。勇者は召喚されたんだからまた違う話なんだろうけど、ここに女神さまによって連れてこられた俺たちってあっちで死んだから連れてこられたのかな」


「皆記憶が曖昧だから断言出来ないが、たぶん死にかけてる所を連れてこられたような気がする」


「じゃ、帰ったとしても死んでるってことか」


「なんとも言えないがな」


タケルとしても想像でしかないので断言はできなかった。


「2号店良かったのか? ナナミさんはあんまり店広げたくないようだったが......俺は助かるが」


「本当はこの店をユウヤに任せたかったんだ。ナナミはのんびり本読んで時々店番して暮らしたいみたいだからね。それで呼んだんだが、この間ウータイの市場で売ったのがまずかったのか、また店を開いてくれって言って来たから断ったんだが、商業ギルド同士で話し合いが行われたらしく2号店を開いてくれないかって話になったらしい。それでそれとなくナナミに言ってくれって頼まれてたんだ」


「タケルに頼むなんて、タケルの方がいいやすいのかな?」


「ナナミはああ見えて頑固なところがあるからな。今回の事もお前の家族と一緒に暮らしたいっていうのがなかったら頷かなかっただろう」


「でもこの商売結構恨まれたりしてないのか?塩と砂糖はそんなに安くしてないけど、カップ麺とか缶詰売ったら干し肉売ってるとことか困ってるだろう」


ユウヤが心配そうに聞く。


「まあ、多少は影響あったみたいだが、カップ麺にしろ缶詰にしろかさばるからな。みんながアイテム鞄持ってるわけじゃないからそんなには持って行けないさ。干し肉も売れてるんだよ。それに今まで殿様商売してたんだけど、危機感出たらしくて干し肉も改良されてきたんだ。ナナミのとこで調味料買って研究したらしく味がおいしくなってるって評判だよ」


タケルがおもしろそうに話す。


「それに、ユウヤなら泥棒とか来ても大丈夫だろ?嫁さんも魔法が使えるって聞いてるし。日本の商品も知ってるから教えなくてもすぐ商売ができる。おまけにナナミの百均の事を話せる位信頼できるのはユウヤだけだからな」


ユウヤはタケルの話を聞いて不覚にも涙が出てきた。この信頼を壊さないようにしないとと決意を新たにするのだった。











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