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4 商業ギルド1


受付のサリアさんに教えてもらった道を歩いていた。中世のヨーロッパを思わせる風景に目を奪われた私は何度か人とぶつかってしまった。中には獣人の方もいたけど、誰一人として怒ってくる人はいなかった。良かった。治安の良い街みたい。でも油断は禁物だよね。この鞄が全財産なんだから。思わずバッグを握る手に力が入る。しばらくすると商業ギルドの看板が見えてきた。


「ここが商業ギルド」


 大きい建物だった。足が震えてくる。


「優しい女神様よろしくお願いします」


 手を合わせて祈ってから建物に入る。すごい人だった。冒険者ギルドと違って朝から人が多いとは思っていなかったので驚いた。どこの窓口も列ができている。どうしよう、後からまた来ようかな。ウロウロしていると一つだけ誰も並んでいない窓口があった。

 50代くらいのおじさんが座っている。なんで誰も並ばないのかは気になるけど、話しかけることにした。


「すみませんここで市について聞いてもいいですか?」


「どうぞ、お座りください」


 話しかけるとおじさんは嬉しそうな顔をして椅子をすすめてくれた。



「私の名前はショルトと言います。お嬢さんが市で商売をするんですか?」


「はい。私の名前はナナミと言います」


「どのようなものを売るのか持ってきていますか?」


「はい。これです」


 早速鞄から塩と塩胡椒と砂糖と飴を一つずつカウンターの上に並べた。ショルトさんはカウンターに並べられた商品を見て驚いたように目を見張ってる。


「こ、これはなんですか?」


「えっと、調味料です。あっ、飴は調味料じゃないです。飴はお菓子です」


 ショルトさんは瓶の塩を手にとって


「これは本当に塩ですか?」


と当たり前のことを聞いてきた。


「そうですよ。こっちが塩胡椒です。これが砂糖で、これがマヨネーズでこれが飴です。開けて確かめてもいいですよ」


「塩胡椒というのは塩と胡椒を混ぜてるのかい?」


「はい。私の住んでいた国ではこの調味料が各家庭に一個必ず持っているものでした」


 ちょっと大げさに宣伝してみた。


「この入れ物も変わってる。ナナミの住んでる国は遠い異国なのだな。この辺りでは見かけないものだ」


「はい。とても遠い国です。両親と旅をしてきたのですが、途中で両親も亡くなり、今ではどこにあの国があったのかわかりません」


「この商品はまだたくさんあるのかい?」


「はい、たくさんあります。このほかにも、いろいろあります。恥ずかしい話ですが、この町に来るまでは両親が残してくれたお金でなんとかやりくりしていたのですがお金が残りわずかになったので、市でこの商品が売れないものかと思ってるんです」


 ショルトさんは私の顔をじっと眺めた後、


「確かにこのあたりでは見かけない浅い顔だな。髪も目も黒いし、勇者伝説を思わせる顔立ちだ」


と失礼なことを言った。日本人は鼻が低いんだからしょうがないよね。特別に私の顔が浅いわけじゃないよ。うん。


 ショルトさんは突然何も見えないところに手をやって指を動かしている。


「それってステータスですよね。ショルトさんも使えるんですか?」


「まあ、多少魔力があれば誰でも使えますよ。ナナミさんも使えるんですか」


 そっか。誰でも使えるんだ。隠さないといけないことかと思ってたよ。


「はい。使えます」


「それでたくさんの在庫を持ち歩けるんですね」


「そうなんです。これがなかったら、むりだったと思います。本当にたくさんあるんですよ。倉庫にしたら2、30軒分くらいありそうです」


 私が答えると周りがざわついた気がするけど気のせいだろう。ショルトさんの手の上に皿に乗った熱々のお肉が出てきた。


「塩胡椒を使わせてもらいますね」


「どうぞ」


 ショルトさんは塩胡椒を握り首を傾げているので開けてあげた。蓋を開けてどうぞっというとお肉にササーっとかけていく。どこからかフォークのようなものを出してきてかぶりつく。


「美味い。これは胡椒で間違いない。塩味もする」


 いつの間にか周りが静まっていた。周りの視線が痛い。とてもいい匂いをさせているショルトさんを見ているのだろうが、同じ位置にいるので私まで注目されているようだ。困ったな。あんまり目立ちたくないのに。ショルトさんて変わってるのかな。


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