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31 勇者さまが来店①



『カラン、カラン』


ドアが開いて数人入ってくる。


「寒くなったね~」


「もう冬が来るよ。やだなぁ」


どうやら外は寒いようです。


開店してから20日たちました。その間に2回休みがあったけど、ショルトさんが言ってた従業員はまだなので忙しい毎日です。

そうそうこの間の休みにまた魔石を買いに行きました。今度は部屋の温度を調節する魔石です。


本屋のベスさんが昨日買い物に来てくれた時、寒くなってきたから準備したほうがいいですよって勧めてくれたんです。そんな便利なものがあったとは....。いたるところに魔石を埋める穴はあるのですが、まだまだ使い方がわかってません。本買ったのに全然読めないし....。

ということで、この店も暖かくなりました。部屋の方にもつけたので冬が来ても大丈夫です。結構な値段でしたが寒いのは苦手なので必要経費ですね。



「カレーください」


カレーの方も順調に売れてきてます。孤児院で働いてる人から聞いたらしく、口コミで広がっているようです。残念ながらカレーのルウはまだあまり売れてないです。作り方はポップを貼ったりしてるのですが、お湯につけるだけの手軽さもあって、インスタントカレーとご飯ばかり売れてますね。




「カレーはこちらの棚になり...」


案内していた言葉が詰まりました。男の人がカレーを持って泣いてます。へ、変な人です。20代後半くらいの男性がポロポロと涙を流しているのです。ここはスルーしましょう。関わり合いにはなりたくありません。厄介ごとの匂いがプンプンします。

私は平和に暮らしたいです。冒険とかは求めてないですから。


「こちらになります。たくさん売れてますよ」


質問してきた人も、関わり合いたくないのでしょう。サッとカレーとご飯を取るとカウンターに来ました。


「ありがとうございました」


来る人来る人、訝しげな目で大泣きしている男を見ますが、誰も声をかけません。ずーっと泣いてます。もうそろそろ閉店の時間です。困りました。


最後の客が帰りさすがに声をかけようとした時、


「あの....これって日本の商品ですよね」


男が声をかけてきました。目が赤くなっていて怖いです。ん? 今日本って言った?


「あなたも召喚されて来たんですか? でも俺だって着の身着のままで鞄一つしか持ってこれなかったのに。これだけの商品どうやって....」


男は首を傾げてる。間違いありません。


黒髪に黒目です。それに召喚って言ってました。

うん。絶対そうです。この男は勇者様ですね。









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