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302 慰安旅行 8

 タケルのスマホで沢山の写真を撮った。

 タケルとクリリの袴姿の写真は貴重だ。それに他と全く違う街並みは写真に残す価値がある。みんなへの土産になる。


「ふふふ、一枚いくらで売れるかしら…なんてね~」


 勇者の写真って結構売れそうだけどこれ以上、目立つ行為は辞めた方が良いよね。


「一枚いくらって、プリントができないのに無理だろ」

「ふふふ、そう思うよね。なんと百均でプリントができるのよ!」

「嘘だろ。Wi-Fiがないのにどうやって接続するんだ?」


 タケルの指摘に首を傾げる。言われてみればそうかもしれない。でもこの間レベルが上がった音がして、


『写真のプリントができるようになりました』


って、言ってたから間違いない。


「よくわからないけど、できるって言ってたから大丈夫。それにしてもカメラがないのにプリントだけできても仕方ないって思ってたけど、タケルのスマホがあって良かったよ」


 私のよくわからない説明に呆れた表情のタケルだったけど、


「まあ、プリントができるのは嬉しいな」


とプリントができることは喜んでいた。


「プリントって何?」


 クリリはスマホの中の写真を見たことはあるけど、紙に写されたものは見たことがない。

 きっと驚くだろう。

 まさか魂がとられるとか言わないよね~。

 試しにクリリとティーグルの写真をプリントすることした。


 『設定』をタッチしてスマホを近付けると『タケルのスマホ』という項目が出たのでタッチする。するとタケルのスマホの中の写真が全て映し出される。その中から選んで『プリント』をタッチすればいいようだ。とても簡単だ。

 私は今回写した分だけチェックしようとしたら、タケルが『全部』にチェックした。

 家族の写真が欲しかったのだろうか。その気持ちはわかるけど、千枚以上ある写真のプリントには時間がかかってしまった。


「ひゃ~すごい。これって何?」

「新幹線だ」

「え~、これは?」

「飛行機だな」


 タケルは乗り物オタクなのか、車や電車、飛行機の写真が沢山あった。それはクリリをとても喜ばせた。


「これは?」

「ああ、それは宿屋だ」

「え~、これが宿屋なの? すごく大きい建物なんだね」

「四十階建てだからな」

「そんなに高くして、空につかないの?」

「空の方がもっと高いから大丈夫だ」

「本当に?」

「山だって高いが、空はもっと高いだろ?」

「そっかぁ。そうだよね~」


 タケルの写真を見ているとホームシックになりそう。新幹線も電車も車も懐かしい。高層ビルもアスファルトも、あの頃は全く意識したことがなかったのに、今はとても愛おしく感じる。

 タケルも私と同じ気持ちなのか目を細めて一枚一枚、時間をかけて見つめている。


「スマホの中で見るのとは全く違う感じだな」

「懐かしいね」

「そうだな」


 タケルと私は感慨深く、クリリは好奇心いっぱいで写真を眺めていた。


「あ~、俺だ。俺が写ってる。でもなんか変な感じ」

 クリリとティーグルが写っている写真だ。袴を着たクリリは少し緊張しているようで、笑顔が固まっている。

 それに比べてティーグルはきりっとしていつもより数段かっこよく写っていた。


「わ~、可愛い。ティーグルも写真だとかっこいいよね。いつもぐーたら寝てるだけなのに」

「ニャオ!」


 ちなみに私も袴姿で写っている。大学の卒業式で着る予定だったけど、こっちの世界に来たために着ることができなかったので嬉しい。

 色は袴はえんじ色で上の着物は花柄のあわいピンクを選んだ。


「ナナミは普通の着物着れば良かったのに」

「いいの。一度袴を着たかったし、この靴だと袴の方が似合うしね」

「それは言えるな。着物姿に靴ってどうしても違和感あるからな」


 タケルは沢山の写真を大事そうに集めながら呟く。

そのままではまたバラバラになりそうなので百均で買ったアルバムを渡す。

一枚一枚確認しながら入れていくタケルが羨ましい。私もスマホがあればたくさんの写真があったのに。友達と行った旅行の写真とかクリリに見せたかったなぁ。雲の上の写真とか絶対に驚かせることができたのに残念だ。

「これからもたくさん写真が撮れるね。明日は船の写真を撮ろうよ」


 クリリの言葉にハッとする。そうだよね。これからたくさん写せばいいんだ。

 さしずめクリリの入学式の写真は絶対に撮らないとね!


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