書籍二巻発売記念小話 お茶会
「ふー、やっぱりピーチティーが一番美味しい気がするわ」
今日はお茶会を開いている。と言っても本格的なものではない。
百均で売っているパックティーをみんなで試飲しているのだ。
一応コーヒーもお茶ではないけど並べている。
私はピーチティーが気に入った。日本に住んでいる時は、お茶といえばペットボトルのお茶を飲んでいたのでわざわざお湯を沸かして、それをカップに注いで飲むのは新鮮な気がする。
「それにしてもいろんな種類のお茶があるんですね。私はこのルイボスティーが気に入りました。落ち着く気がします」
クリス様はルイボスティーを選んだ。
「俺はこのアップルティーがいい。甘くていい匂いがするよ。この間食べたアップルパイと同じ匂いがする」
クリリはアップルティーを選んだ。
そりゃ同じりんごから作ってるからね。私もアップルティーは好きだけど、今回はやっぱりピーチティーかな。
「俺はほうじ茶だ。これが一番だ」
タケルが選んだのはほうじ茶だった。意外な気がした。それこそクリリと同じ甘い香りのするアップルティーだと思っていた。
お茶菓子の100円コンビニで買ったバームクーヘンにも手をつけずに、ほうじ茶を飲んでいる。もしかしてお腹でも痛いのだろうかと心配になってくる。
「タケル、どうかしたの? 食べ過ぎでお腹でも痛くなったの? 私の治癒魔法で治そうか?」
まだ病気を治したことはないけど、タケルなら少々のことは大丈夫だから治癒魔法を試してもいい。
「例えお腹を壊してても人体実験はごめんだ。胃がなくなったら困る」
いくら何でも胃がなくなるってことはないよ。......多分。
「ナナミさんが心配しているのに、そんな言い方ないでしょ。失礼ですよタケル」
「だったらクリスがナナミの治癒魔法を受けるのか?」
「いえ、私はどこも悪くないので.....」
二人とも酷い。本当に病気になった時も助けてあげないからね。
「でもタケルさんがバームクーヘンも食べずにお茶だけ飲んでるなんて、変だよね。ナナミさんが心配するのもわかるよ」
クリリも心配そうな顔でタケルを見ている。ちなみにクリリはバームクーヘンを一番最初に食べている。
「そうでしょ? いつもと違うよね」
「いや、俺だってしんみりする事くらいあるさ。ほうじ茶飲んだのは久しぶりだったからな。家で飲んでたのと同じ味だった」
それだけ言うとタケルはまたほうじ茶を飲む。クリリもクリス様も何も言わない。
そっかぁ、そう言うことか。私の場合は豆茶(ハブ茶)が家の味だ。毎日飲んでいたから、今も飲みたくなるけど豆茶は手に入らない。百均で売っていないのだ。だからタケルの気持ちが痛いほどよくわかる。これからは毎日ほうじ茶を淹れてあげよう。