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290 慰安旅行 1

クリリは無事にヴィジャイナ学院に合格した。

 唯一心配していた面接も大丈夫だったようだ。

 無事に合格したのはとっても嬉しいけど、それは別れを意味している。この国に異世界トリップしてからクリリにはとても助けてもらった。クリリのためには学院で勉強するのが良いことは理解しているけどやっぱり悲しいなぁ……。

 クリリの前では悲しい顔は見せないようにしていたけど、私の態度は不自然だったらしくみんなが心配していることに気付かなかった。


「ナナミ、今日から慰安旅行だ!」


 ある日、いつもは昼ごろにならないと来ないタケルが朝早くクリリと現れて声高に宣言した。


「慰安旅行?」

「そうだ。三人で旅行に行こう」

「でも店があるし…」

「ナナミさん、大丈夫ですよ。店は私たちに任せてください」


 コレットさんとエミリアとアルビーが胸をどんと叩いている。この三人なら大丈夫かも。


「でも三人も慰安旅行に行きたいでしょ?」

「私たちはまた違う機会でいいですよ。今回はクリリのためにも行ってきてください。学院に通いだしたらいつ行けるかわからないですよ」


 コレットさんに説得されてクリリとタケルと私の三人で慰安旅行に行く事になった。


「でもどこに行くの?」

「それは着いてのお楽しみだ。それより今回は船にも乗る予定だから持っていくものは大丈夫か?」


 大抵のものはなんとかなるけど服は必要だよね。慌てて二階へと駆け上がる。どうせならもっと早く言ってくれればいいのに……突然すぎるよ。

 なぜかティーグルも連れている。もしかしてティーグルに乗って移動するのかな。

 タケルの転移魔法であっという間に船着き場にいた。とても便利な魔法だからこの魔法で旅行先に行っても良かったらしいけど、今回はクリリが船に乗ってみたいというので船に乗ることになったらしい。

 日本にいるときも数回しか船に乗ったことはない。


「酔わないかなぁ」

「女神さまの加護があるから大丈夫だろう」


 なんと女神さまの加護って船酔いにもならないのか。なんて便利なんだろう。


「この船で旅をするの?」


 木で出来た船は大きいけど、豪華客船とか見ている私には不安しかない。タイタニックでさえ沈むのにこの船で旅をするなんて無謀だよ。

 青くなる私とは対照的にクリリはとても喜んでいる。


「すごーい。こんな大きい船で旅ができるなんて夢みたいだ!」


 確かに大きいけど風で動かすなんて原始的だよ。よっぽどタケルに転移魔法で行こうって言いたかった。でもクリリのキラキラした目を見ていると何もいえない。そんな私をタケルはニヤニヤした目で見ている。絶対にわかっていてやっているよね。(ぷんぷん)


「ナナミ、魔法で風を送るから難破することはない。いざとなればナナミにはティーグルがいるし、俺の転移魔法もあるから心配ないさ」


 そうだった。タケルの転移魔法はともかくティーグルがいた。空を飛べば何とかなるよね。ん? でも他の人は? 自分だけ助かるのはちょっと……。


「万が一って言っただろ。難破なんてさせないから大丈夫だ」


 タケルに断言されてやっと安心した。カホさんも船旅したって言ってたし大丈夫だよね。

 クリリは木で作られた細い板を危なくなく歩いて船に乗る。私は恐る恐る細い板に足を乗せたけど、少しでも間違えれば落ちてしまうと思うと足が動かない。


「仕方がないなぁ」


 タケルが息をついて私を抱え上げる。言っておくけどお姫様抱っこではない。こう荷物を抱えるみたいな抱き方だ。はっきりいって超怖い。


「動いたら落とすからな」


 タケルのこの言葉がなければ暴れていただろう。だって海の底が見えて超怖い抱き方なんだもん。

 ティーグルはのそのそと上手に後ろをついてきている。さすがに猫だから怖くはないみたい。落ちても飛べるだろうし…あれ? そうだよ。ティーグルに乗って船に移れば良かった。



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