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282 やきとり屋に行こう

今年の夏祭りの反省会はタケルの店で行うことにした。

 反省会という名の飲み会なんだけどね。(クリリはジュースで、ティーグルは家で留守番)

 《やきとり 縁》は日本にある焼き鳥屋そのままだった。よくここまで再現できたなと感心してしまった。

 入り口には暖簾まである。

 エールのジョッキだって生ビールと全く一緒だ。誰に作らせたんだろう。


「また無理言ってプリーモさんに作ってもらったの?」

「いや、これはうちの領地の職人に作ってもらった。ガラスを作るのが得意なのがいるからな。このやきとりのたれはヨウジさんと一緒に研究して、大変だったよ」


 タケルって食べることには妥協しないからヨウジさんも大変だったに違いない。


「でもこのエールは最高だね。この泡もいいけど冷たくて美味しいね」

「ナナミさん、このやきとりもサイコーに美味しいよ」

 

 コレットさんとクリリが超ご機嫌になっている。コッコウ鳥を焼いただけなのにここまで味に差が出るのかとコレットさんの旦那のノエルさんは首を傾げている。


「ところで、ここのご主人は黒髪だけど日本人なの?」

「違うよ、彼と従業員は三世なんだ。でも昔から日本の食べ物に憧れてて、旅をしているときに出会ったときにその話を聞いてたから、ここで働かないかって誘ったんだよ。彼らは日本の食べ物のことは話でしか知らないから、説明するのが大変だったけど料理人だから覚えるのは早いんだよな。ヨウジさんの所で修行させて、日本料理のイロハは習ってる」

「ヨウジさんのところで修行したのなら、たこ焼きやお好み焼きも作れるの?」


 私がカウンターの中にいる若いけどこの店の主人と思われる人に尋ねると


「はい。一通り習っているので作れます。ただ鉄板がないのでフライパンで作ることになりますが」


と笑って答えてくれた。この店は焼き鳥屋なのでやきとりがメインでほかの物は裏メニューにして常連さんだけが食べれることにするそうだ。

 私たちはせっかくなのでお好み焼きを作ってもらうことにした。

 居酒屋風に少しばかり、ヌルヌル芋(長芋の代わり)を多めに入れたお好み焼きはとっても美味しくて、エールがすすむ。

 一番好きなつくねも食べれたし、ねぎまのネギも白ネギと変わらない味で炭火で焼くとなんとも言えない味わいだった。


「今日は貸し切りにしたけど良かったの?」

「貸し切りにしないと並ばないといけないから順番が回って来ないよ。いつでも食べれるように作ったのにここまで繁盛するなんて誤算だよ」


 タケルはため息をついてエールをゴクゴクと飲んでいる。贅沢な悩みだよね~。

 ちなみにこの店は夜だけしか開いていない。昼間は下ごしらえで忙しいそうだ。


「そうそう、大豆から豆腐を作ったんだ。まだ店には出してないけど食べてみるか?」

「どうしてまだ出してないの?」

「なんか違うんだよな。百円コンビニで食べる豆腐のほうが美味しいから、悩んでるんだよ」


 タケルは私たちが亡くなった後もこの世界に日本の料理が残るように研究している。私たちと同じように日本から異世界トリップした人が食生活でショックを受けることのない世界を目指しているそうだ。まだまだ道は長いと思うけど、努力は認めよう。まさか豆腐まで作れるようになったとは……。

 ちなみに豆腐の味はタケルの言うように微妙だった。でも醤油をかけて食べればクリリやコレットさんには違いがわからないようだった。最近分かったことだけど、この世界の人って舌が私たちより鈍感なのか微妙な味の違いはわかないみたい。


「この豆腐でもいいんじゃない? 違いがわからないみたいだし」

「だめだ。そんなこと言ってるとこの味が定着するじゃないか」


 タケルの辞書に妥協って言葉は載ってないらしい。豆腐を作らされているらしい二人に「がんばれ」とエールを送った。




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