表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
277/314

276 王女×3 2


 なんで? なんで王女が三人になってるの?

 護衛の数は昨日の倍くらいはいそうだ。これでお忍びのつもりらしいから苦笑いにしかならない。

 でも今日は慌てない。二度目になると王女様の扱いもわかって来た。うん、専門家に任せよう。


「王女様方、買い物でしたらお隣ですよ。こちらには王女様方の買うようなものは置いてませんから」


 さっさとエミリアの方へ行ってもらおう。


「ええ、知っていてよ。でも今日はわたくしノートとかいうのを買いに来ましたの。バニラから見せていただいて気に入りましたの」


 バニラ王女とアニー王女はこの国の王女様らしい。クリリ今にも跪きそうだ。コレットさんも驚いているようだけど、落ち着いた対応をしてくれる。


「左様ですか。でしたらこちらにたくさんあるのでお選びください。ですが護衛は邪魔になるので外に出ていだだきます」


「そ、それできません。私たちは王女から目を離す事を禁じられてます」


 騎士の代表のものが答える、コレットさんも負けてはいない。


「こんな狭い場所にあなた達ゴツい男が何人もいては護衛にもならないでしょう。二人いれば十分です。それにこの店は勇者様が魔法で守っていますから、何も起こりません」


 強い。勇者の魔法を疑うのかって言われれば、出て行かざる得ない。二人だけ残して、他の護衛は外に出る。

 ちなみにタケルは王女が三人いるのを見て逃げた。一瞬で消えたから逃げたとしか思えない。


「ナナミさん、俺初めて王女様見たよ〜」


 アイリス王女は他国の姫なので気にならなかったみたいだけど、自国の姫を見た喜びで目がキラキラしている。うーん、確かにお人形さんみたいに可愛いから無理もない。アイリス王女みたいに気が強い感じもなく、好奇心で目を輝かせて、店を見ている姿は微笑ましい。


「本当に。可愛いわね。クリス様のお相手にって聞いたけど二人とも良さそうね」


「それは酷い。あんな風に猫をかぶってますが、いつもは口うるさいんですよ。嫁にする気はありませんよ」


 突然後ろから声がして振り向くとクリス様とタケルが立っていた。どうやらタケルはクリス様を呼びに行ってたらしい。逃げたんじゃなかったのね。


「クリス、どうしてここに?」


 バニラ王女が驚いたように声をあげた。目を丸くしている。


「お姉様、クリスが『マジックショップナナミ』に入り浸っているのは有名ですわ。いてもおかしくないわ」


「アニー王女、人聞きの悪い事を言わないように。入り浸ってなどいない。今日は君たちを迎えに来たんだ。王様に叱られたくはないだろう」


 叱られると言われて、途端にソワソワしだす二人。アイリス王女は気にならないのか、商品を選んでいる。ノートよりもボールペンやシャーペンが気になっているようで、試し書きに夢中になっている。


「でもクリス、わたくしたちはまだ目当てのものを買っていません。せめてビビクリームだけでも買いたいわ」


「そうよ。クリスはいつでも来れるからいいけど、わたくしたちは次はいつ来れるかわかりません」


 二人に涙目で詰め寄られ、クリス様も仕方がないなぁと折れた。


「わかった、わかった。それなら隣の店に行くとしよう。アイリス王女はタケルに任すよ」


 任されたタケルは苦々しい顔をしたが、何も言わない。

 クリス様は両側に王女二人を従えて、エミリアの店に向かった。なんか両手に花って感じ。


「クリス様を迎えに行ってくれたのね」


「ああ、俺たちじゃあ三人もいる王女の相手は荷が重すぎる。さっさと買い物をさせたら帰るだろうが、まっすぐ帰らなかったら困るからな」


 アイリス王女がいるから、危険なんだとタケルは言う。勝気で不正が許せない性格なので、自国でも城下に遊びに行っては問題を起こしているそうだ。悪い奴らをやっつけているみたいで、『水戸黄門』好きの私としては応援したくなるけど、怪我でもしたら一大事。この国ではおとなしくしていてほしいようだ。

 

「うーん、流石に全部買ったらお小遣いが足りないし、でも今買わないと次はいつ買えるかわからないし」


 王女様とは思えない発言だ。だってノートとボールペンを全種類揃えたってそんなに高くはならない。昨日買った豪華版のカチューシャの方がよっぽど高いのに。

 タケルにそう言うと、


「王女様の装飾品は予算があるから結構高くても買えるんだろ。だがノートやボールペンは純粋に自分のお小遣いで買うから足りないって事だろうな」


と言われた。


「勉強道具なら買ってもらえるんじゃないの?」


「勉強道具は用意されたものがあるだろうから、贅沢品って扱いになるんじゃないか」


 予算以外の贅沢品は自分のお小遣いから買うのか。王女様って言ってもなんでも手に入るわけではないのね。

 アニー王女とバニラ王女が戻って来てもまだ悩んでいた。結局、バニラ王女にお金を借りて全種類買っていた。王女様が借金.....。

タケルの転移魔法で帰って行った。遠巻きに見ていた人たちが、店に入って来て王女様が何を買ったか尋ねてくる。一度や二度ではないので、紙に書いて張ることにした。

しばらくは王女様が買いものに来た店として騒がれそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ