274 王女様来訪 3
「エミリア、王女様は帰ったんでしょ?」
夕飯をみんなで食べている時にエミリアに確認する。もしまだこの街にいて明日も来られたら大変だ。
「帰ったっていうか、王都に行くって言ってたわよ。元々王都に用があるみたい」
今日の夕飯であるカルボナーラを食べる手をとめてエミリアが呟く。この世界ではあまり麺の文化がないみたいで、食べるのに苦労している。クリリは慣れたもので箸を使って上手に食べている。
「王都に用って、王子様に会いに行くのかしら」
「どうして王子様? 王子とは年齢が合わないから王女に会いに行くのかもね。友達だって言ってたから」
王族って別世界の人だから、今までは気にしなかったけど王子様はまだ幼いらしい。
「へ〜ぇ。そうなんだ。ところでこの国の王族ってどうなってるの?」
「今頃聞くのがナナミさんらしいね。確か王女が二人と王子が一人だったよ。二人の王女はアイリス王女と変わらないくらいの年で、16歳と15歳だったはず。王子は7歳だよ」
それはそれは。王子が生まれるまでは大変だったんだろうなぁ。あっ、でも日本と違って男でないと継げないとかはないのかな?
「王女とクリス様が結婚ってこともあるのかしら」
エミリアがとんでもないことを言う。でも有り得ない事でもない。クリス様は偉ぶ
ったとこがないから忘れてたけど公爵様の継嗣だった。
「どうかな。クリスはそんな気はなさそうだけど、政略的にはありそうだな」
「その場合はクリス様のところに王女様が降嫁することになるの?」
「そうだ。王子が生まれなければ王女が継がなければならなかったから王配は確実にクリスが選ばれていただろう」
王配? って首を傾げていたら女王の配偶者のことだってクリリが教えてくれた。クリス様って本当にすごい人だったんだね。今度会った時は握手をしてもらおう。
「そうだ! 王女様にビビクリーム売ったから。なんか結構有名になってるみたいよビビクリーム」
そういえばそんなの売ったね。まさか王女様が使ってくれるとは思ってなかった。王女様だったらもっと高くて良いクリームが手に入りそうだけど、ビビクリームみたいなのはもしかしてまだないのかもしれない。
「ユーラシア国の王女様が知ってるくらいだから、買いに来る人増えるかもしれないよ」
そういえばプリーモホテルでもビビクリームがよく売れてるって言ってた。お土産で売れてるみたいで気にしてなかったけど、噂になってるから売れてたのかも。
「ナナミさんはビビクリーム使ってないの?」
「うん、酒の一滴って言う化粧水だけで大丈夫。まだまだ若いからね〜」
「うん、ナナミさんは俺と同い年でもおかしくないくらい若いよ」
クリリ、それは褒めてないから。もうちょっと褒め言葉考えて使ったほうがいいよ。
「でもエミリアも何にも使ってないよね」
「そうね私もまだ若いからね〜〜」
もう百年くらいは生きてるのに若いって....。いいけどね。
「明日は来ないよね。王都からだから無理だよね」
「来るのは無理じゃないと思うわよ。王族は神殿にある転移門を使えるから、それを使ったら来れるでしょ? 今回もそれを使って来たみたいだし」
転移門? そういえばそんなことを聞いたことあるけど、王族が使えるっていうのは知らなかった。国同士の了解がなければ使えないみたいだけど便利だよね。どこでもドアみたい。まあ、私はタケルの転移魔法があるか必要ないけどね。
「でも今日いっぱい買って帰ったから明日来ることはないから大丈夫よ、ナナミ」
エミリアがふくふく顔をしてるから、王女様はたくさん買ってくれたみたい。
「それなら大丈夫だね」
ホッとした。やっぱり王女様は扱いが難しいから関わりたくないもんね。王女様自ら買い物に来るって普通はないから、もう今日みたいなことはないよね。