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271 ナットウ 2

「やっぱりな。たまにいるんだよな。食わず嫌いが。納豆が全然食卓に出ないからそんな事だろうと思ってたよ」


 タケルがいつものように突然現れた。どこで聞いてたの?って言いたいよ。異世界じゃなかったら盗聴器を疑ってる。


「タケルっていつも突然現れるけど、なんでここで言ってる会話知ってるの? 盗聴器はここではないの知ってけど疑いたくなるよ」


「と、盗聴器なんてあるわけないだろ」

 

 なんかすごくタケルが動揺してるけど、盗聴器のような魔法があるのかもしれない。今度プリーモさんにでも聞いてみよう。


「ナナミさんはナットウ食べた事ないんだ。じゃあ美味しいかどうか知らないんだね」


 クリリに言われて確かにそうだなって思う。匂いだけで敬遠してるから美味しいかって聞かれても答えることは出来ない。


「食わず嫌いはよくないぞ」


 ほっといてほしい。何もこの世界に来てまで納豆について言われたくないよ。

 日本では納豆を食べる人が多い。少数派はけっこう辛い。学校給食や病院の食事にも普通に出るからね。なんと言われようと半強制的な給食でさえ食べなかったのに、今更食べるつもりはない。

 私が決意を新たにこぶしをニギニギしていると、タケルが息を大きくついた。


「仕方ないなぁ。ナナミは食べなくていいから、クリリに食べさせてやろうぜ」


 なんか納得いかないけど自分が食べなくていいのならいいか。仕方なく納豆を100円コンビニで買う。エミリアも興味津々なので三つ用意した。


「あっ、俺はご飯も頼む」


 はいはい。ご飯は作り置きがあるのでそれを出す。タケルは沢山食べるからどんぶりに入れる。

 クリリもエミリアも食べ方がわからないので、タケルを見てる。タケルは鼻声で歌ってる。よっぽど納豆が食べたかったみたい。

 納豆の容器の蓋をあけると、ぷーんと匂いが鼻に付く。うう、やっぱり臭い。 ティーグルもビクッとして起き上がった。鼻をクンクンさせている。


「うわー、本当に臭いね。なんか腐ったみたいな感じ」


 まあ、発酵させたものだからね。

 タケルは付属のたれをかけてこれでもかとかき混ぜる。大量の糸を引くようになるとアツアツのご飯にかけている。私にはせっかくのご飯が納豆に侵されているようにしか見えないけど、タケルの顔は誇らしげだ。


「えっ? ご飯にかけるの? もう全部食べちゃったよ」


 クリリがショックを受けた顔だ。別にご飯にかけなくてもいいんだけど、タケルの真似をしたいみたいなので、クリリとエミリアにもご飯を渡した。


「うーん、やっぱり納豆はいいなぁ。朝はこれに限る」


 私にはよくわからない感覚だ。でもタケルはすごく嬉しそうだ。初めてカレー食べた時と同じ顔だ。そんなに食べたかったのか。それならもっと早く言ってくれたらいいのに。自分は食べないし、この世界に広めるつもりはないけどタケルが食べるのまでは反対しないよ。

 

「すごく癖がある食べものだけど、美味しいね。でもこの匂いは強烈すぎ」


「はっはは。クリリはオオカミだから嗅覚が良すぎるんだ」


 クリリは鼻がいいから私たちよりも敏感なんだね。それはちょっとかわいそうな気もする。

 エミリアはガツガツ食べている。エミリアって苦手な食べ物ってないのかも。それにいくらでも食べれる胃袋を持ってるみたい。

 でも異世界でも納豆を食べれないのは私だけになってしまった。いや、まだ他の人には試してないから駄目な人が他にもいるよね。うん、絶対にいるはずだ。


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