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266 積み重ねが大切?


 チクチク、チクチク。


「うわーぁ! やっぱり上手だね~」


 才能っていうのか、初めてなのにチクチクと刺してるだけでティーグルになってる。アルビーはやっぱり只者ではなかった。

 同じように刺してるのに何がいけないんだろう。

 アルビーの手元をしっかりと目に焼き付ける。

 クリリは店番をしている。私がアルビーだけを呼んだので気になっているのか時々、用もないのに覗きにくる。

 本当はアルビーにクリリを作ってもらおうかと思ったけど、一度やりだしたからには最後までやり遂げることにしたのだ。ちょっと下手でもクリリは喜んでくれるはず。


「これ楽しいです! きっとみんな夢中になりますね」


 ん? みんな? ああ、そっかぁ。これも売り物と思ったんだ。でもティーグルは売れないよ。

 それに結構難しいから売り物としてどうかなって思う。


「でもねアルビー。私が作れないってことは、買った人も作れないかもしれないでしょ」


「えー、でもこれすっごく簡単だし、誰でも作れるよ」

 

 かんたん? なんかグサッときた。知らないうちに人を傷付けるってあるんだよね~。


「ねえねえ、ナナミさん。何を作ってるの?」


 とうとう我慢できなくなったのかクリリがコレットさんに店を任せてやって来た。そしてアルビーの作っているティーグルを見た。


「うわぁ。可愛いね。これどうやって作るの?」


 やっぱり内緒で作るのは無理だったか。せっかくオオカミのクリリを作って驚かそうと思っていたのに。


「こうやって刺すだけなんだよ」


百均で買った洗い物のスポンジの上で羊毛フェルトにチクチクと針を刺しているアルビーをジッと見ているクリリ。


「なーんだ。簡単なんだね」


 なんかこの世界の人ってみんな器用だよね。不器用な子が生きづらい世界だよ。わたしがそう言うとクリリとアルビーは目を合わせた後に笑った。


「みんなが器用なわけないよ。孤児院にだって不器用な子いっぱいいるよ。でもそう言う子も努力して一通りは針仕事ができるようになるんだ」


「私もやることがゆっくりすぎるっていつも言われてる」


「でもアルビーはそのぶん丁寧に作っている出来が良いって言われてるでしょ。だからからいいんだよアルビーはそのままで」


 そう言うものなのか。努力と積み重ねが大切なんだね。私は日本にいた頃も裁縫なんて授業でしかしたことなかったし、編み物もちょっとかじったくらいだ。アルビーやクリリに負けるは仕方がないか。


「へー、アニマルキットね。材料は全部入ってるのかぁ。でもこのティーグルは特別に作ったの?」


「そうよ。ここに材料になる羊毛フェルトの色違いがあるからこれで作ったの。初心者はこのアニマルキットで練習してから、自分だけのものに挑戦したほうがいいみたい」


 私もいきなりクリリに挑戦したから失敗したんだよね。こっちで練習してからオオカミのクリリを作ることにするよ。

 クリリは何が楽しいのか動物ではなくプリーモさんをモデルに作り出した。どうしてプリーモさんなのか聞くと、丸々して作りやすいし変になっても罪悪感がないからだと言われた。確かに初めて作るときは失敗するものなんだから、罪悪感を感じないものに挑戦したほうがいいよね。クリリになるはずだった残骸を横目で見ながらため息をついた。これは絶対にクリリには見せられないよ。


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