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255 青い桜ーティーグルside


ティーグルが桜を見るのは初めてではなかった。まだ小さい頃母猫と一緒に見た覚えがある。

その時見た桜は青かった。ティーグルにとって桜は青いもので、このような色ではない。それとも夜だったので青く見えたのだろうか?

ティーグルは思わず猫の獣人であるベスに話しかけていた。


「青い桜? それってどこで見たの?」


ベスはティーグルの話を聞くと目を見開いて大きな声を出した。

ベスに聞かれて思い出そうとするけど小さかったから覚えていない。


「ニャー、ニャン」


「そっかぁ。覚えてないんだ。青い桜って幻の桜って言われてるんだよ。覚えていたらすっごいご褒美がもらえたのにね」


なんと、青い桜は珍しいものでどこにあるのかわかったらご褒美がもらえるのか。これは何としても探さねばならない。ティーグルは必死で思い出そうとしたがプリーモに買われる以前のことはあまり覚えていない。母猫とどこで別れてしまったのか、兄弟がいたのかも思い出せない。青い桜のこともこの桜を見て急に思い出したのだ。

でも母猫のことを思い出したのは嬉しい。生きているのか死んでいるのかわからないけどティーグルは母猫の隣で桜を見た思い出がある。ああそうだ。桜のそばに大きな水たまりがあった。


「大きな水たまり? 湖のことかな」


「ベス、何かあったの?」


ナナミがベスに話しかけている。ティーグルにとってナナミは飼い主だけどナナミは猫語がわからないので会話はいつも一方通行だ。


「ティーグルが青い桜を見たことがあるって言うから、どこで見たのか思い出してもらってたの」


「え? 青い桜? 緑の桜じゃなくて?」


緑の桜? ティーグルは緑の桜については知らないので黙っていた。


「青い桜は幻の桜なのよ。ひと枝でも王様に献上できたらすっごいご褒美がもらえるって聞いたことがあるわ」


ベスが興奮した様子で大きく手を回して説明している。


「すっごいご褒美ってなんだ?」


タケルがベスに尋ねる。確かにすっごいご褒美って曖昧だなとティーグルでも思う。ティーグルはこの間ナナミから貰った『マタタビ』が良いのにと考えていた。


「すっごいご褒美だとしか聞いてないわ」


「怪しいな。すっごいご褒美ってだけじゃ探す気にならない」


「えー! タケル! 青い桜だよ。見たいじゃない。王様からのご褒美なんてどうでもいいよ。それより青い桜が見たいの」


ナナミはタケルをバシバシと叩いた後にティーグルに向かって


「ティーグル、思い出したら王様からじゃなく私がご褒美あげるから頑張れ」


と言ってきた。これは『マタタビ』が貰えるかもしれないとティーグルは考える。


「そう言えば、さっき桜のそばに大きな水たまりがあったって言ってたよ」


「大きな水たまりって、海か湖だよね。どっちだろう」


「ニャーニャ、ニャ」


「海じゃないって言ってるよ」


「湖か。でも湖も結構あるからな。ティーグルの故郷がどの辺りかプリーモに聞いてみるか」


「プリーモさん、知ってるかなぁ?」


「あいつはなんでも知っている気がする。駄目元で聞いてみるさ」


ティーグルにとって青い桜は母猫との思い出でしかないけど、故郷を探す手がかりにもなるようだ。


「ティーグル、今年はもう青い桜は見れないかもしれないけど探すからね。来年には幻の桜を見にティーグルの故郷に絶対に行こうね」


桜の花は十日くらいしか咲かないから今年は無理だろうとナナミから聞かされて、ティーグルは少しだけガッカリした。でも楽しみはとっておくのもいいかなと思う。故郷に帰れることも嬉しいけどご褒美の『マタタビ』が来年の春の貰えるかもしれないことが嬉しくてゴロゴロと喉を鳴らすティーグルだった。

ティーグルは知らない。ナナミがティーグルのご褒美はゴルギーの肉が一番だよねと思っていることを……。


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