250 異世界から召喚? 2
結局欲しいものがありすぎて一つに絞る事ができなかった。
タケルに言わせると私はまだここにきて一年しか経っていないし、百均で買えるので切実さがないそうだ。
なるほどと思った。確かに米もアイスもお菓子もジュースも食べれて、お金の苦労もない。お風呂こそはじめはなかったけど今は毎日入ることができる。ちなみに最近は三日に一度は温泉に入っている。タケルの魔法で温泉のお湯をお風呂に転移させることができるようになったのだ。これにはエミリアも喜んで、温泉の日は必ずお風呂に入っている。
お気に入りはシャンプーや石鹸だった。魔法で身体も髪も一瞬で綺麗にすることができるけど、シャンプーした時のようないい匂いにはならない。エミリアは温泉に浸かり、肌がツルツルになって、シャンプーで髪が綺麗になるのが嬉しくてたまらないそうだ。
「じゃあ、今回はナナミはいらないのね」
「いらないとはいえ言ってないわ。もう少し考えたいだけだよ」
「あれから何日も経ってるでしょ。今回はパスね」
エミリアはサクサク決めていく。でも私はいらないと言ってるわけではない。一つに絞れないだけだ。
「待ってよ。それならスマホにするから。スマホを召喚して」
「スマホってタケルが持ってるあれでしょ? もう一つあるからいらないでしょ」
「あれはタケルのだから私のが欲しいの」
私が欲しいものが決定したところで実物をタケルに出してもらった。エミリアは真剣な目でスマホを眺めている。本当に異世界から召喚できるのか心配だ。
「これは何?」
エミリアが画面を見て尋ねている。
「それは妹が使っていたシャンプーとコンディショナーだ。買いに行かされた時に写真を撮ってたんだなぁ。結構いらない写真が削除しないでそのままになってるんだ。いまは削除するのが嫌でそのままにしてるんだけどな」
タケルの妹さんって結構高いシャンプー使ってたんだ。私なんて一本398円のだったのに。ちらっと見えたシャンプーは有名アイドルがCMしていた私が買えなかったシャンプーだった。
「これ、このシャンプーにしよう!」
エミリアはシャンプーの画像だけで、百均で売っているシャンプーとは違うとわかったらしくシャンプーを召喚すると言い出して。もちろん私は反対した。何しろ一年に一回しか召喚できないのに、シャンプーを召喚するなんて勿体なさすぎる。スマホの方が絶対に高価な品物だ。
「高価さより、実用性だろう。スマホと言っても中身が入ってなければカメラにしか使えないんだ。シャンプーの方が良いよ」
なぜかタケルまでエミリアの味方になった。
「まさか、タケルもこのシャンプーを使ってたの?」
「まあな。試しに使って見たら結構良かったんだ」
タケルの髪なんて短いのに石鹸で十分よ。それなのに私よりも良いシャンプーを使ってたなんて!
三人しかいないのでタケルがエミリアの味方になると分が悪い。結局押し切られる形で高級シャンプーと高級コンディショナーに決まった。
「召喚って一本しかできないの? 小さいんだから箱ごととかできないの?」
「どうかなぁ。箱ごとって思いながら召喚するけど難しいかもしれない。異世界からの召喚って思い入れで決まるみたいだから」
私たちの思いは関係ないかもしれないけど、タケルと私も召喚の時は一緒に願った。とにかく変なんものが召喚されないように、シャンプーとコンディショナーを思い浮かべて、『箱ごと、箱ごと』と必死だった。
「召喚できたわよ」
エミリアの言葉で目を開けるとテーブルの上に箱がドンっと置かれている。でも安心はできない。問題は中に何が入っているかだ。
変なものが入ってたら嫌なのでタケルが開けることになった。嫌そうな顔でタケルが段ボールを開けていく。
「おっ! シャンプーだ。今度は間違えてないぞ!」
エミリアは間違いなく日本からシャンプーを召喚できたようだ。タケルが確認したのなら安心なので私も箱の中身を見る。憧れのシャンプーが入っていた。今日からこのシャンプーで髪を洗えるのかと思うと、とても嬉しい。
「あれ? でもシャンプーだけだね。コンディショナーがないよ」
「あー。本当だ。やっぱり二つはダメなのね〜」
召喚できるのは一年に一つだけ。コンディショナーは違うものとみなされたらしい。でも一箱は大丈夫だったので来年は工夫をして頼むことにしよう。