248 どっちが強い?
「ドッジボール大会とリバーシ大会の全国大会?」
「そのうち商業ギルドの方から話があるだろうが、春になったら王都で行われる『花見祭』でこの二つの大会が行われることが正式に決まった」
プリーモさんの話では春に領地から代表をだしてもらい、王都で全国大会をすることが決定したらしい。このガイアの街のリバーシの代表はクリリになるだろうなと思っていると意外なことにクリス様が代表に選ばれたそうだ。クリリは一度優勝しているので特別枠で選ばれているらしい。
クリリはやっぱりすごいって思ったけど心配にもなった。最近のクリリはヴィジャイナ学院の試験の勉強ばかりでリバーシをしていない。リバーシばかりしている人たちと互角に戦えるのだろうか。
「クリリ、最近リバーシやってないけど大丈夫?」
「うーん、どうかなぁ。たまにタケルさんとしてるから大丈夫だと思うけど…」
「おいナナミ。クリス様はリバーシ強いのか?」
「ここでリバーシをしたことがないから強いのか弱いのかは知らないよ」
タケルに聞かれても私が知ってるわけがない。領主の息子だから選ばれたわけではないと思うけど、一応確認した方が良いかも。クリス様にはお世話になってるからできるだけのことはしてあげたい。
「一度クリリと対戦してみたらどうだ?」
タケルの言葉に頷きそうになったら、プリーモさんから反対された。
「せっかくですからそれは本番まで待ちましょう。クリス様の実力はタケル様と対戦して確かめたらどうです?」
トーナメントなんだからクリス様とクリリが対戦するかどうかわからないのに、プリーモさんは本番の楽しみが減るのは困ると反対したようだ。
「そうだな。俺も一度クリスとは本気で戦ってみたいと思ってたんだ。これは楽しみだ」
こうしてクリス様とタケルがリバーシで戦うことが決定した。私は一度タケルのギャフンとした姿が見たかったのでこっそりとクリス様を応援するつもりだ。
戦いの日はなぜかプリーモさんが現れていた。どうしても見たかったのでとか言ってるけど、本当にどこで情報を仕入れているのか本気で調べた方がいいのかもしれない。
私はお鍋で豆を煮ながらの観戦している。勝者はぜんざいを好きなだけ食べれることにしたので沢山作らないといけない。クリリは興味津々で盤上を見つめている。
「どれだけ強いか知らないけど、今日は負けないよ」
クリス様が挑戦的な目を向けてタケルに宣言する。
「俺だって負けない。食べ物を賭けて負けたことは一度もないからな」
え? タケルの言葉に失敗したと思った。勝者に何もないのは可哀想だと思ってぜんざい食べ放題にしたけど、これではタケルを勝たせるためにぜんざいを作っているみたいではないか。クリス様をこっそり応援するつもりだったのに足を引っ張る形になってしまった。
そんな形で始まったリバーシ対決は僅差でタケルが勝った。
「ぜんざいがなかったら勝てたかどうかわからない」
終わった後のタケルのセリフだ。タケルには負けてしまったがクリス様の強さは証明された。
でもぜんざいのせいで負けたクリス様はショックだったようでガックシと項垂れていた。
「これは余興です。本戦で勝てばいいんですよ」
私はクリス様にぜんざいを渡しながら慰める。結果的にタケルに手を貸すかたちになったので悪いことをしたなと反省していた。
「ありがとうございます。学院では負けなしだったので天狗になっていたようです。本戦までに鍛え直します」
貴族のクリス様の食べ方は上品だった。箸の使い方も覚えたようで私よりも上手になっている。
ふとタケルの方を見るとガツガツと一心不乱で食べている。同じ貴族でも大分違うなあと思う。
「ナナミ、お代わり」
「はいはい。わかったから、もっとゆっくり食べないとお餅を喉に詰まらせるよ。そんなんで死んだら恥ずかしいよ」
「うっ、わかった。次からはゆっくり食べる」