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247 木製の自転車に乗ってみよう


プリーモさんが現れた時、失礼だけどまた風邪薬を買いにきたのかと思った。本当にどこから情報収集するのか、『マジックショップナナミ』が新しい商品を売りに出すと必ず確かめにくる。

でもプリーモさんは風邪薬については一切知らんふりだった。彼のことだから風邪薬の件を知らないという事はないはずなのに何も言わない。関わらないと決めているようだ。

それでは何をしにきたのか……なんと自転車を作ったので見て欲しいと言う。

この世界で自転車が作れるのかなと思っていただけにこんな短期間に試作品を作ったプリーモさんを尊敬の目で見てしまった。


「すごい! 本当に木製で自転車を作ってる」


私は日本のネットで木製の自転車を作っている人がいることを知っていたけど、実物をこの異世界で見ることになるとは思っていなかった。ギアやチェーン以外は全部木で作られている。タイヤは馬車と同じ木だけなので、これだと乗り手はお尻が痛くなると思う。

その事を指摘するとその部分はまだ研究中だと答えてくれた。なんでもスライムを使って研究しているようだ。この世界は(主にプリーモさん)スライムに頼りすぎな気がするよ。

でもこの試作品の自転車はタケルも気に入ったようで、何度も強度を確かめている。木製だと強度が心配なのはわかる。乗った途端にグシャって潰れるのは誰でも嫌だと思う。


「ハッハハハ! 大丈夫ですよ。この私が乗っても大丈夫でしたから。ただ私は乗る事は出来ても走らせる事は出来ないのでクリリさんに乗ってもらおうと持ってきたのです」


自転車を作っても乗り方を教える人がいないと売れないと思うよって忠告しようと思ったけどやめた。そんな事にプリーモさんが気付いていないはずがない。そこも何か良い案があるのだろう。


「クリリを引き抜くつもりかもしれないから気をつけたほうが良い」


プリーモさんがクリリを連れて外へ出て行くとタケルが心配そうな顔で言う。良い案ってクリリを捕獲する事なの? 私は慌てて外に出る。クリリをは木製の自転車を物珍しそうに触っていた。


「プリーモさん、これよく出来てるよ。俺のメルティとほとんど変わらないみたい」


メルティとはクリリの自転車の名前だ。クリリは名前までつけて自転車を可愛がっている。汚れてるところがあったら直ぐに拭いて綺麗にしているくらいだ。


「クリリくんにそう言ってもらえると嬉しいよ。あとは乗れるかどうかなんだ。乗ってみてくれるかい?」


クリリは運動神経も抜群だからグシャってなっても一緒に押しつぶされる事なくなったのだろう逃げれるだろう。私も自転車には乗れるけど試作品に乗るのは御免だ。


「うん。乗ってみるよ! 一番に乗れるなんてサイコーだよ」


最近は自転車で通勤しているので、自転車に乗るのも慣れたものだ。スイスイっと乗る。タイヤの無い自転車の乗り心地は悪そうで時々、「いたっ!」とクリリが叫んでいるけど試作品の自転車が壊れる事はなかった。結構頑丈に出来ているようだ。こんな石畳でガタガタした道を走らせても壊れないって事は大丈夫かな。


「おーーーぉ! クリリくんありがとう! この自転車は世界を変えますぞ!」


相変わらずプリーモさんは大袈裟だけどクリリも一緒になって喜んでいるからいいことにしよう。


「でもタイヤとかいうのやっぱりいると思うよ。お尻が痛くて座ってられないから」


「うむ。やはり研究を急がせたほうがよさそうだな。ところでクリリくん、学校に通うようになったら休みの日のバイト先は王都にあるうちの店で働かないかい?」


あーー!やっぱりクリリを引き抜く気だ。


「プリーモさん、ダメですよ。クリリはうちの従業員なんで引き抜きは困ります」


「でも王都の学院に通うんでしょう? ここで働くのは無理だと思いますよ」


「それについては私に考えがあるので、プリーモさんは気にしないでください。とにかくクリリはあげませんからね!」


私がきっぱりとお断りしたので、プリーモさんもそれ以上は何も言わなかった。

ふふふふふ。確かに普通に考えたら王都からここまで通うのは無理だけど、うちには普通じゃないのがいるから大丈夫。でもさすがに毎回タケルに送り迎えしてもらうのはクリリが遠慮しそうなんで、クリリにも頑張ってもらうことにした。

いつもしている魔法の練習に転移魔法も入れるようになったのだ。本当に転移魔法が習得できたら凄いことだってエミリアが言ってたけど、タケルが自信満々で教えてるからクリリが転移魔法が使えるようになるのも時間の問題だと私は思っている。でもそんな情報をプリーモさんには話せない。転移魔法が使えるようになったって知ったら、もっとクリリ獲得に乗り出しそうだからね。

プリーモさんってなんでかこっちの情報を手に入れるのが上手いから気をつけないといけないなって思う。一番怪しいのはティーグルなんだけどさすがにそれはないかな。今日も沢山のお肉をティーグルに持ってきてたけど、なんら怪しい動きはなかった。

うーん。プリーモさんはどうやって情報を仕入れているんだろう。



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