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245 神殿と風邪薬


 商業ギルドに風邪薬を買ってもらったおかげか、薬を求めて来る客には「商業ギルドの方で売ってます」と言えば済むので混乱もなかった。早めに手を打っておいて正解だった。

 それにしても神殿は何をしているのかな。こういう時こそ神殿の出番ではないの? 治癒魔法の使い手が神殿にいるって前に聞いたことがあるのに...。

 私がブツブツと文句を言っていると、クリリが首を傾げる。


「ここの神殿には治癒魔法できる人いないよ」


「えっ? そうなの? てっきり神殿にはいるものだって思ってた」


「そうなの? 他所は知らないけど、ここの神殿の人は怪我した時、ポーションで治すって聞いたから治癒魔法を使える人はいないと思う」


 クリリに詳しく聞いてみると神殿に必要なポーションを買いに行ったことがあり、その中に怪我を治すポーションもあったそうだ。たくさん欲しがったけど、この街で売ってるぶんでは足りなくて大変だったそうだ。

 うーん、でも神殿にいて怪我とかするのかな。なんでそんなにポーションを買ったのか気になるよね。

 あの神殿って、でかいだけでホントに役に立たない。寄付だけは募るらしいから始末に負えないよ。

 とは言うものの私も寄付金は納めている。神殿は女神様と関わっているから、ユーリアナ女神様のことを思うと無下にも出来ない。


「ナナミさん、神殿の使いの者がみえてます」


「えっ?」


 噂をしていたせいかもしれない。なんか嫌な予感がする。クリリも同じことを思っているみたいで、


「タケルさんに手紙を書くよ」


と鞄からタケル専用の封筒と便箋を取り出して書き出した。

 私は神殿の使いの人をいつまでも待たせるわけにもいかないので、手紙を書くのはクリリに任せて店の方に行くことにした。


「お待たせしました。どのようなご用件ですか?」


「こちらでよく効く風邪薬をいただけると聞いたのですが」


 神殿の使いの人はニコニコと笑顔でそれだけを言う。この笑顔が目は笑ってないから実に怖い。

 これって無料で出せってことかな? やっぱりショルトさんに任せて正解だった。


「あいにく商業ギルドに売ったので在庫がありません」


「は? 普通全部売るような事はしないでしょう。隠し持っているのではないですか?」


 失礼だなぁ。まあ、本当は少しだけ持ってるけど...。私は風邪にならないから平気だけど、クリリや従業員がなったら困るから少しだけ確保している。でもこれは身内にしか使用するつもりはない。神殿は金持ちなんだから、いくらでも良い薬を手に入れることが出来るのだから無料同然で巻き上げないでほしいよ。


「商業ギルドショルトさんが全部お買い上げになったので、在庫はありません。入荷の予定もないので、商業ギルドの方に行ってください」


 商業ギルドにある風邪薬が売り切れたとは聞いてないから、本当に困っているのなら商業ギルドで買うと良い。

 使いの男は笑顔のまま帰ろうとはしなかった。


「貰えるまで帰って来るなと言われてますから帰りません」


「でもないものは出せませんよ。貴方がいると他のお客の迷惑ですから、お帰りください」


 神殿の使いというと神の使いのようなものだから、この男がいると中に入れないようだ。


「他のお客が気になるのなら、早く出してくれればいいんですよ」


 神殿の使いじゃなくて、本当は街のチンピラじゃないかと思うような脅し文句だった。こんな事言ってても笑顔だから本当に不気味だ。


「おい、神殿の使いがそんなこと言っていいのか?」


 やっとタケルの登場だった。遅いよっと文句を言おうとしたら、タケルの隣にはクリス様がいた。


「そうですね。まさか神殿の人が脅し文句で品物を奪うとは知りませんでした。この事は王都にあるこの国の本神殿に報告させていただきます」


 使いの者の笑顔が消えた。クリス様のことは知ってるようで、跪いて謝り出した。

 内容はどうかヨーグル様には言わないでくれとか言ってるから、ガイアにある神殿長も知らない事だったらしい。外にも数人の仲間が隠れていた。

 神殿の下っ端の者たちが風邪薬で金儲けを企んだようだ。もちろんこんな事をした者を野放しには出来ないのでタケルが捕らえた。


「クリス様、わざわざありがとうございます」


 私がお礼を言うとクリス様は笑顔で、


「こちらの方がありがとうです。ナナミさんのおかげで、風邪で死ぬ人がいませんでした。王都の方で薬の手配をしていたのですが、季節がら良薬がなかなか集まらなかったので助かりました」


と言ってくれた。この地の領主であるガーディナー公爵からもお礼のお手紙をいただいた。くじで手に入れた風邪薬だったけど、役に立って本当に良かった。


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