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242 風邪薬を使おう


「え? 孤児院で風邪が流行ってるの?」


アルビーはまだ風邪にはなっていないみたいだけど、看病疲れが出ているみたいでウサギさんの耳が垂れている。これは由々しき問題だ。このままではアルビーまで病気になってしまう。


「風邪ひきさんにはマスクしてる?」


「はい。ナナミさんに言われてようになるべく隔離するようにしてるけど、集団で生活してるから次々に感染るみたいで……」


学校でもすぐに感染ってたから、一緒に暮らしている孤児院で感染るのは仕方のないことだろう。

でもこのまま放置していても大丈夫なのかな。インフルエンザとは違うから死ぬことはないと思うけど……。


「死んじゃったらどうしようって怖いです」


「え? 風邪で死んじゃうの?」


「悪くなるとご飯を食べれなくなってそのまま死んでしまうこともあるって……」


アルビーの言葉に驚いた。風邪で死ぬ人が出るなんていつの時代の話? ああ、そうだった。この世界と日本は違う。日本だって昔は風邪で死ぬ人がいた。お金がなければ治療を受けることが出来ないのはどこでも一緒だ。

きっと孤児院では医術の先生に診てもらうことが出来ないのだろう。薬はどうしてるのかな。


「アルビー、薬は飲んでるの?」


「うん、院長先生が買ってくれた薬を飲んでます。でもあまり効かないみたいで苦しそうなんです」


この世界の薬ってあまり効かないのかな。それとも安い風邪薬だったから効かないのか。

私はうーんと少しだけ考えて、鞄の中から風邪薬を出した。子供は大人より少ないから取り敢えず一箱で大丈夫かな。


「コレットさん、ちょっと孤児院に行って来ます。今日はクリリ休みだけど大丈夫ですか?」


「アルビーもいるから大丈夫よ」


コレットさんは風邪薬の効き目を知っているから早く行ってあげるといいよって言ってくれた。

タケルにはあまり広めない方が良いって言われたけど、死ぬ人が出るかもしれないって聞くと無視することはできない。



孤児院に着くといつもと違うのがすぐにわかった。なんとなく静かなのだ。それに空気が違う気がする。淀んだ空気で息をするのが辛い。

私はそおっと孤児院の中に入った。


「ナナミさん、どうしてここに?」


クリリの声が後ろから聞こえて来た。


「風邪ひきさんが多いって聞いたから薬を持って来たの。クリリは休みだから手伝いに来たの?」


「うん、職員の人も風邪で休んでいる人がいるみたいで猫の手も借りたいって言ってたから」


クリリって本当にいい子だね。でも一言私にも話してくれたら良かったのに。遠慮するところがクリリなんだけど、もう少し頼って欲しいなって思うよ。


「うわ! アルビーが言ってたより病人多いね。ああ! あんな小ちゃい子まで....、うーん、五歳から十歳までが一錠なんだ。あの子は何歳なの?」


「五歳だよ」


「じゃあ、一錠で大丈夫ね」


私は風邪薬の箱をクリリに渡した。


「ナナミさん、これって食事の後って書いてるけど、みんな食欲がないみたいなんだけど、食べないとダメですか?」


 クリリは薬の注意書きを読んでいる。


「食べれなくても少しは食べないと体力もなくなってしまうわ。おかゆのパックを持ってきてるからこれを温めて、少しでも食べてもらってから薬を飲ませましょう」


 職員の人が少ないと言ってたけど、本当に少なかった。私とクリリでみんなの食事を用意した。

 元気な人には親子丼を作って食べてもらった。

 たまご粥は好評だった。でもやっぱりあまり食べられないようだった。

 薬を飲んでもらってから、栄養ドリンクを一本は多いので少しだけ飲んでもらう。

 院長先生も風邪だと聞いたので、たまご粥と薬と栄養ドリンクをクリリに渡した。

これで治ってくれるといいけどね。それにしても掃除もできていないのか埃っぽい。私は掃除の魔法をかけて綺麗にすることにした。空気が悪いと治るものも治らないからね。


「クリリは大丈夫? ほら、親子丼食べて。ここから帰ったらうがいと手洗いを忘れないようにね。それと少しでもおかしいと思ったら、風邪薬を飲むのよ」


風邪薬は症状を軽くしてくれるだけだけど、ひきはじめに飲んだ方が良いって聞いたことがあるからクリリには一箱渡しておく。

それと職員の人に夕飯の後にもみんなに飲ませられるように風邪薬の予備と栄養ドリンクを渡す。


「気分が悪くなったら遠慮しないで飲んでくださいね。貴方達まで倒れたら大変ですから」


「「「ありがとうございます」」」


コレットさんとアルビーに任せている店も気になるので、あとはクリリに任せて帰ることにした。

店までの道を歩きながら、あまり人通りがないことに気付く。本当に風邪が流行っているようだ。そういえば今日は朝のお客さんも少なかった。

街全体が風邪をひいているような気がして、不安になりながら家へと急いだ。



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