239 『マジックショップ・エルフの雑貨屋さん』の開店初日 1
『マジックショップ・エルフの雑貨屋さん』の開店は時間より少し早く開けることにした。外に並んでいる人がいて、エミリアが待てなくなったのだ。エミリアは我慢を覚えたほうが良いと思う。
「いらしゃいませ~」
人数制限をして三人ずつ入ってもらう事にした。
「「「わー、~可愛い!」」」
全体的に可愛い感じになっている。『マジックショップナナミ』とは雰囲気が全く異なる。
これなら女の人でも入りやすいはずだ。
「櫛の種類がこんなにあるよ。どれにしようかしら」
「私は鏡を買いに来たんだけど、鏡は今度にして今日はこのカチューシャに決めたわ」
「わたしは化粧水にするよ。前に買った人が褒めてたから」
かしましいけど、女の子の買いものだからこんなものだよね。
エミリアは商品が売れてとても嬉しそう。夢が叶うって良いよね。
開店祝いのオマケは三通り用意している。年齢によって欲しいものが違ってくるから、選んでもらうことにした。一つは髪留め。二つ目は石鹸。三つ目はハンドクリーム。ハンドクリームは一種類だけだけど髪留めと石鹸は色々なものを用意している。早い者勝ちになるけどね。
三人が選んだのはお揃いの髪留め。色違いで選んでいた。
それからも途切れることなく売れて行った。さすがに昼食は交代で食べることにした。エミリアとアルビーが休憩する間はわたしとクリリが店番をする事にした。
「いらっしゃいませ〜」
「ナナミさん、開店おめでとう!」
「ありがとうございます。でもこの店はエミリアが主にやって行くんですよ」
現れたのはクリス様だった。クリス様は時々クリリに勉強を教えに来てくれているから、この店のことも知っていたのだろう。でもここは女の人のものばかりだから買うものはあまりないと思うんだけどね。
「今日はクラスメートを連れて来たんですよ。どうしてもここに来たいって言うからタケル様に頼んだんです」
王都からここまで来るには時間がかかり過ぎて、学校を休まなくてはいけなくなるから、タケルが転移魔法で連れて来たくれたらしい。クリス様のクラスメートの女の子たちはお金持ちが多そうだから、タケルは良い仕事をしたね。エミリアが喜ぶよ。
本来は三人ずつの入場にしてたけど六人連れて来ているようなので一緒に買ってもらう事にした。
「うわー、この化粧品すごいわ。口紅の色が素敵よ」
「私はこの鏡が欲しいわ。それに手袋も可愛い」
「えー、待ってよ。このノートとペンも買いたいし、あとこの瓶も何かに使えそう。ハンカチも欲しいし……」
手にいっぱいで持てなくなっているので、商品を入れるカゴを渡した。用意してて良かった。
「クリス様、ありがとうございます。こんなにたくさん連れて来てくれて助かります」
「いや、俺も頼まれただけで、連れて来たのもタケル様なんで…」
クリス様は遠慮深いから俺は何もしてないですとか言ってくれる。きっとクリリに勉強を教えに来た時にでもエミリアに頼まれたに違いないのにそんなことは一言も言わない。
「そうだ、たくさんのお客さんを連れて来たくれたクリス様にも開店祝いのオマケをどうぞ。彼女にでもあげてください」
「彼女なんていませんからいりませんよ」
顔を真っ赤にしてクリス様に断られてしまった。まさかこんなにカッコいいのに彼女がいないとは驚きだ。赤くなった顔を隠そうとした手が意外と荒れているのに気付いた。貴族なのに手が荒れえるなんて、魔法で治療とかしないのかな。
「手が荒れてるんですね」
「剣の稽古で荒れるんですよ。魔法で治すと、皮が厚くならないからこのまま自然に治すんです。タケル様の手もゴツゴツしてるでしょ」
そういえばタケルの手はゴツゴツしていた。と言うことはチート能力があっても結構苦労したんだなと思った。
私はクリス様にハンドクリームを渡した。これなら治癒魔法とは違うから大丈夫だよね。ゴツゴツした手になるのはいいけど肌荒れは良くないよ。
「俺も貢献したんだから、ハンドクリームをくれ」
タケルの手はもう手遅れだと思うけど、くれくれと煩いのでアロエのハンドクリームを渡した。
クリス様の連れて来てくれたお客様は沢山買ってくれた。どのくらい買ってくれたかと言うと朝の売り上げと同じくらい買ってくれたのだ。本当にクリスさまさまだね〜。