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233 タケルのいない間に......


「えっ? 家を増築ですか?」


 ショルトさんが突然そんなことを言い出したのは大雪が降った次の日だった。この雪の中、わざわざこんな話をしに来るなんて何かあったかなぁ。

 今日は朝から暇だった。

 家の前の雪かきはクリリが火の魔法を使って溶かしてくれた。クリリはタケルの転移魔法で来た。さすがにこの大雪では自転車での通勤は難しい。


「そうです。まだ時間はありますがクリリさんのあとに入って来られる方が女性だと聞いたので、増築された方が良くないですか?」


 ショルトさんに指摘されて、女性だとタケルの家が不味い事に気付いた。大きい家も買ってはいるけど、私はティーグルに乗って通えるけどアルビーには無理だ。確かに増築した方が良いみたい。


「全然考えてませんでした。でもショルトさん、新しい従業員の話を誰から聞いたんですか? まだ知ってる人、少ないんですよ」


「タケル様ですよ。『うさぎ亭』で一緒に飲んでた時にその話になったんです。時間があると言っても家の増築は早く取り掛かった方がいいですからね」


 それで雪の中わざわざ訪ねてきてくれたのか。でもタケルってば何度言っても『うさぎ亭』に連れて行ってくれないのに、最近も飲みに行ってたとは......。許せん!


「ではどいう風に増築するか考えておいてください」


 ショルトさんは忙しいのか用件だけ済ますと帰って行った。ドアが開くと雪も入って来る。まだ降り続けているようだ。


「ねえクリリ。アルビーはどんな部屋がいいかなぁ」


「うーん。一人部屋ってだけで喜ぶと思うよ。でもあんまり広いと落ち着かないから、広さはほどほどが良いよ」


 クリリは初めてタケルと一緒に済むようになって初めて自分の部屋が持てた時、とっても嬉しかったけど同時にあまりにも広くて眠れなかったそうだ。

 そういえばクリリの部屋ってめっちゃ広かったよね。アルビーに部屋は八畳くらいでいいよね。いや、十二畳はあった方が便利かもしれない。


「あとクリリもタケルと一緒に『うさぎ亭』に行ってるの?」


「い、行ってないよ。夜は子供は行けないよ」


「あれ? でもクリリも吟遊詩人の唄を聞いたことあるんでしょ?」


 確か前に聞いた覚えがある。


「あれは昼間に聞いたんだよ。それも俺は中には入れないから外で聞いてたんだ」


 クリリは『うさぎ亭』では食事をしに行ったことすらないと言う。これは可哀想なことを聞いてしまった。よし、一肌脱ごうではないか。


「クリリ、一緒に『うさぎ亭』に行こう」


「だ、ダメだよ。夜は子供は入れないんだから」


 クリリが慌てたように首を振る。それはさっき聞いたから。


「うん。だからランチを食べに行こうよ。最近は親子丼もあるって聞いたし、裏メニューにはカツ丼もあるらしいのよ」


「それってナナミさんが作った方が美味しいんじゃないの? 元はナナミさんの国の料理なんでしょ」


「向こうはプロの料理人なのよ。きっと素晴らしく美味しく作ってるわよ」


 私の料理は所詮家庭料理の域を出ない。パン屋のゴングさんみたいにきっと一味違うプロの料理に変わっているはずだ。


「わかったよ〜。でもタケルさんがいない時の方が良いと思うよ。きっと邪魔されるよ」


 確かに何度頼んでも連れて行ってくれないのはわたしに行って欲しくないからに違いない。親子丼が『うさぎ亭』の方が上手いからって私が拗ねるとでも思っているのだろうか。


「あれ? そういえばクリリを連れてきて、そのままどこかに消えたけど何処に行ったの?」


「なんかルドリアルさんから手紙で呼び出されてフォーサイス領のお屋敷に戻ったみたい」


 ナイスタイミング! 今の内だ!


「ちょうどいいわ、今からいきましょう」


「私も行くわ」


 いつの間にかエミリアが側にいた。さっきまでは影も形もなかったのに.....。魔王退治一行は食べ物への執着心が凄すぎる。よっぽど酷い目にあったのだろう。


「えっ! エミリアも行くの? 吟遊詩人がいるよ」


 クリリびっくりした顔でエミリアを見る。


「私は気にしないからいいのよ。タケルはどうして気にするのかしらね。誇張された部分は確かにあるけど、大まかなところは事実なんだから聞き流せばいいのよ」


 こういう所はエミリアの方が歳をとってるだけあって懐が深い。

 さあ〜、タケルの留守に吟遊詩人の唄を聞くぞ〜!


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