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228 掃除道具を売ろう


 魔法の使えるこの世界では掃除も魔石であっという間に綺麗にできる。皿洗いだって魔石を使えばピカピカだ。

 とは言うものの魔石の値段はそれなりにする。沢山の皿洗いに魔石を使うのなら有効だけど家族のお皿くらいで使うのは勿体無い。部屋の掃除に魔石を使うのも宿屋やギルドのような大きな建物の掃除に使うくらいで一般の人は普通に自分たちの手で掃除をしている。

 私がそれを知ったのは孤児院の子供達が窓掃除をしているのを見たためだった。


「ねえ、クリリ。どうして魔石を使って掃除をしないの? 窓掃除は子供には難しいでしょう?」


 異世界には日本にはないとても便利な魔法があるのにわざわざ自分たちで掃除をしなくてもと思っての発言だった。でもこれは主食であるパンを事欠いている農民に「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と言ったとされるどこかの王妃のような台詞だったみたいでクリリに呆れた表情で見られた。


「魔石って高いんだよ。一般的に掃除で魔石を使ったりはしないよ」


え? そうなの? でも私が勘違いしたのも仕方ないと思う。だってこの世界は風呂がなくてみんなが魔法で風呂に入っていると聞いたから掃除も魔法でしているもんだって思っていたのだ。

だから掃除道具は『マジックショップナナミ』では売っていなかった。百均には沢山の掃除道具があるのになんて事だ。

タケルも一言言ってくれれば……ダメだ。タケルは食べ物以外はあまり興味のない人間だ。百均に掃除道具が売ってることすら知らないだろう。百均にはあんまり行ったことないって行ってたもんね。


「そうなんだ。一年もこの世界にいたのに気づかなかったなんてまだまだだね」


「ナナミさんって出不精だから仕方ないよ」


「よし、それなら窓掃除の道具を出すからみんなで窓掃除をしよう」


私は百均で掃除道具を沢山買った。


「水切りワイパー!」


水切りワイパーって拭いた後の仕上がりが全然違うんだから。

クリリに渡して使いかたを説明すると早速窓の掃除を始めた。

なんか楽しそうだ。クリリの尻尾が揺れている。


「これってすごいね。窓がピカピカだよ〜」


クリリの周りに他の子供達も来てはしゃぎだした。仕方ないので水切りワイパーを三本購入して配る事にした。

他にも掃除道具をを沢山の仕入れたので孤児院で試しに使ってもらう。

まず雑巾。たわし、スポンジ、ほうき、ブラシ。いっぱいある。あと重曹クリーナーは結構役に立ちそうだ。スプレータイプなので使い勝手も良さそう。ただ食べ物と間違えないように注意が必要だ。


「雑巾はタオルと一緒の生地だから汚れも取れるし水の吸収もいいのよ」


「ナナミさんって掃除したことあるの?」


クリリが驚いたような顔で私を見るけど掃除をするのは当たり前の事だ。この世界では魔法が使えるからあまりしないけど日本ではそういうわけにもいかない。


「私の住んでたところは魔法が使えないから掃除は自分たちでするしかなかったのよ。学校の掃除は生徒みんなでするからこの雑巾で床を拭いたり、窓を磨いたりしてたわ」


「ナナミさんっていつも魔法で綺麗にしているから掃除なんてした事ないって思ってたよ。ナナミさんのいた国って美味しいものがあって『デンタク』とか『オールド眼鏡』とか『腕時計』とか便利なものでいっぱいなのに魔法が使えないんだね」


「そうね。多分魔法が使えないから便利なものがいっぱい発明されたんだと思うわ。少しでも楽をしたいからね。竜もいないから空を飛べないけど飛行機っていう人を沢山乗せて空を飛べるものも発明されてるの。クリリにもいつか乗せてあげたいわ」


飛行機は説明してもクリリにはよく分からないようだった。魔法はとても便利だけど発明することを奪ってしまうものなのかもしれない。

今の私は生活魔法で掃除をしているから『マジックショップナナミ』はいつも綺麗でホコリひとつしない。他の部屋も基本的に朝起きたら魔法で綺麗にしている。

特にティーグルのいる部屋は毛が抜けたりするし、ご飯をつくる場所なので念入りに魔法をかけるようにしている。

生活魔法を授けてくれた優しい女神様に感謝だね。



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