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224 ショルトさんは忙しいーショルトside


「またナナミさんが店を広げるみたいですよ」


朝、出勤すると部下のリリアナが報告して来た。


「はぁ? 今度はどこの国に出店するんだ?」


「いえ、今度はこの街です」


「ここにもう1店舗出してどうするんだ?」


俺は呆れた声を出した。このガイアに出店するのなら王都に出店してほしい。王様からもいつ王都に出店するのかと催促されているのにまたこの街に出店すると聞いたらどんな嫌味を言われることか。


「なんでもあのエミリア様が女の人用の雑貨は別にした方が良いと言い出されたらしいです」


「まさかあのエミリア様までここに移住するとはな。だが確かに『マジックショップナナミ』は冒険者の人が買い物に行くから女の人は入りにくいかもしれないな」


「そうですね。私も入りにくいことがあったですね。こうガタイのでかい人が沢山店の中にいると遠慮したくなります」


「で、どこに出店するんだ?」


「昨日の話では隣の倉庫を改造するって言ってました。昨日はショルトさんがいなかったので今日また来られるって言ってました」


「ああ、あそこならまあ良いんじゃないか」


従業員の数からして隣ならなんとかなるだろう。それにエミリア様なら腕もたつし襲われることもない。あのエミリア様を襲うような強者はいない。勇者タケルとエルフのエミリアは有名人だ。この国だけではなくこの大陸で彼らを知らない人はいない。その二人が守っているナナミさんはごく普通の女の子に見えるが実はとんでもないトラブルメーカーでタケル様の苦労は大変なものだ。本当にタケル様がそばにいてくれた良かった。タケル様がナナミさんの前に現れなかったらどうなっていたことか。だがこれも女神様のお計らいなのだろう。俺たちはいつだって女神様の手のひらの上でコロコロと転がされているのだから。


そんなことがあってから数日後。


「大変です。竜が空を飛んでます!」


部下のリリアナの叫び声でみんな外に出た。竜が空を飛ぶなんて滅多にないことだ。戦争でも起こるのか。王都には竜騎士がいるが、このガイアの街の上を飛ぶことなどない。


「なんだ? 竜の横に飛んでるものがあるぞ」


確かに白いものが飛んでいる。あれは、あれは……もしかして。


「ティーグルじゃないか? ウイングドキャットのティーグルだ」


俺は思わず叫んでいた。あのグータラ猫が本当に空を飛ぶなんて思っていなかった。本当に飛ぶんだな。


「ということは隣はタケル様の竜だな。勇者タケルの竜は有名だからな」


「えっ? ってことはまさかあの隣のティーグルに乗っているのはナナミさん?」


「まさかそんなことはないだろう」


運動音痴っぽいナナミさんがティーグルに乗るだろうか。乗ってたらティーグルがよほど上手なんだろう。


「あーー! 手を振ってますよ。あれはやっぱりナナミさんです」


本当だ。ああ、あんなに身を乗り出して大丈夫なのだろうか。まあ落ちたとしても隣にタケル様がいるのだから大事になることはないだろうが。


「ティーグルって飛べたんですね。いつも寝てるところしか見たことなかったからあの羽は飾りかと思ってましたよ」


リリアナは何気に失礼なことを言っているが俺も同じようなことを思っていた。でも所詮は猫だからいつやる気がなくなって眠ってしまうか分からない。戦争に使われないのもそのためだ。


「あの竜が吟遊詩人の唄にも出てくる竜ですよね。タケル様の手足になって働くって本当だったんだ。はぁ~、乗ってみたい」


ここからだと小さく見えるけど竜は結構な大きさだ。あれに乗ってみたいとは絶対に思えない。リリアナはすごいなと感心した。

だがこれからはきっとこの二人の飛行がいつもみられるようになるのだろう。周知させとかないと騒ぎになってしまう。

ああ、王様にも報告しないと駄目だ。きっとまた拗ねるような気がするのは気のせいではないだろう。タケル様は滅多に竜に乗らないから見たことがある人は少ないのだ。


「はぁ~、また王都に出張か。ナナミさんが来てから出張ばっかりだよ」

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